アートとカルチャー に関する旅行の現地取材記事まとめ - トリッププランナー https://tripplanner.jp/topics/category/artistic 少し違う旅のアイデア Tue, 21 Oct 2025 11:38:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.9 https://tripplanner.jp/wp-content/uploads/2021/01/cropped-favicon-32x32.png アートとカルチャー に関する旅行の現地取材記事まとめ - トリッププランナー https://tripplanner.jp/topics/category/artistic 32 32 モメて訴訟沙汰になった、ガウディの名建築、バルセロナの「カサ・ミラ」 https://tripplanner.jp/topics/5441 Tue, 13 May 2025 02:45:01 +0000 https://tripplanner.jp/?p=5441 バルセロナの街中で気楽に立ち寄れるガウディ作品の一つが、ガウディが54歳の時に設計した「カサ・ミラ」である。バ…

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バルセロナの街中で気楽に立ち寄れるガウディ作品の一つが、ガウディが54歳の時に設計した「カサ・ミラ」である。バルセロナでも有数の高級ショッピング街であるグラシア通りに面しており、周囲にはホテルや歴史的な建造物が立ち並んでいることから、観光客にとって「何かのついで」に気軽に立ち寄れる名建築だ。

カサ・ミラ
星の飾りはクリスマスシーズン限定。

岩の塊のような見た目から、石切場とあだ名されることもあり、ほぼすべてが曲線で構成されていることも特徴だが、ガウディ作品にしてはトンガリすぎておらず、むしろシックとさえ呼びたくなる建築である。

印象的な鉄柵は、ガウディの重要な協力者であり、当時バルセロナを代表する鍛冶職人・金属彫刻家のジョセップ・マリア・ジュジョールが制作。

近くにカサ・バトリョというガウディ作品もあり、両方とも世界遺産なことから、この2つをはしごする観光客も多い。ほぼ同時期に作られたのに両者は驚くほど印象が違い、見比べるとガウディの多才さをより実感できるかもしれない。

カサ・ミラ見学で注意してほしいたった一つのこと

さて、この「カサ・ミラ」は、実はまだ現役で人が暮らしている集合住宅である。ゆえに、完全にミュージアム化している「カサ・バトリョ」と違って見学するときに注意してほしいこの住宅特有のルールがある。

それは、見学は1方向のみに進行しなければならず、後戻りができない、ということだ。進路に沿って係員が配置されており、次はこっちへ、などと誘導されるので、「あ、前の部屋もう一回見てみよう」みたいなことができないのである。私はそれを知らずに、最初の住宅エリアをかなり適当に見てしまい、後で戻れないと知ってかなり後悔した。

入口を入って誘導されるままに到着するのが住居エリア。
なんか普通…と思ってサッと見ただけですぐに次のエリアに移動してしまった。20世紀初頭のバルセロナの富裕層の生活が忠実に再現されているとか。

別の原稿で詳述するが、「カサ・バトリョ」がやたら個性的すぎる住宅なので、「カサ・ミラ」のアパートメント部分はとても普通に感じる。ガウディ建築と言われないと気づかないかもしれない。でも、本来、おだやかな日常とはこういう空間にこそ宿るものなのだ。よく見ると窓枠が波打っている程度のこだわりが、住むとなったらちょうど良いのだ。きっと。

もう少しゆっくり見物できれば、ガウディがこだわり抜いた繊細な装飾にもっと気づいたかもしれないが、いかんせん、先を急いでしまったが故に色々見落としてしまった。これから見学に行く人は、くれぐれも、十分見たぞ!と実感するまで先に進まないように。

ロマンティックなだけじゃない、美しいアーチを描く屋根裏部屋の機能性

さて、住居エリアを見学した後に誘導されるのが、屋根裏部屋である。

カサ・ミラの模型も展示されている。

住居エリアと打って変わり、まるでどこかの教会のようなおごそかな空間にハッとする。ここは今や「ガウディ館」と呼ばれ、ガウディに関する資料や、彼が手掛けた家具などが展示されているミュージアムゾーン。

何より印象的なのは煉瓦で作られた270余りにも登るというパラボラ型アーチ群。これは見た目が美しいだけでなく、夏の暑さを和らげる機能も持っているのだとか。ガウディは自身の作品でこうしたアーチを多用することで知られている。

わりとシックな外観、一見するとごく普通の住居のあとに、突然のおごそかすぎる屋根裏部屋。見学コースとしてはなかなかうまい演出と言えるかもしれない。

そして、この屋根裏部屋を出ると、いよいよ、この建築で最も人気でインスタグラム映えする屋上だ。

「戦士の屋上」とも呼ばれるユニークな造形と絶景の屋上

屋上に着いて、まず目を奪われるのは、鎧を被った古代ローマの戦士のような煙突や換気塔などの小塔群だ。波打つようにデザインされた起伏のある丘のような空間に、印象的な造形の塔が並ぶ様子はもはや彫刻の森。

給水塔は白大理石の石片や砕いたタイルでモザイク状になっている。
サグラダ・ファミリアを眺められるトンネルは人気の記念撮影スポット。

奇抜な形状に見えるが、煙突は排煙機能や、換気塔としての通気性をしっかりと確保しており、デザインと機能が見事に融合。こういうところがガウディの評価ポイントでもある。

屋上から見下ろす中庭。コンピュータのない時代にどうやってこんなぐにゃぐにゃ建築を設計できたのか?

この屋上は、ガウディによるデザインが楽しいだけでなく、バルセロナの街を360度見渡せる眺望もすばらしい。観光客たちも本当に楽しそうにゆったりとした時間を過ごしており、彼らを眺めているだけでも幸せな気分になれる。

この屋上は、住宅は単なる生活の場であるだけでなく、アートでもある、というガウディの主張なのだろうか。こうした「遊び」から遠く離れ、機能一辺倒になってしまった昨今のマンションなどを思い浮かべ、やや寂しい気持ちにもなる。

 

見学最後に見た中庭もかなりいい!

屋上からの帰りは階段で。ここもすべて曲線で構成されていて、ガウディの偏執が炸裂。

さて、屋上でたっぷり遊んだ後は、うねうねとうねる壁を持つ階段を降りて地上へ。入場する時に見ても良かったのだが、まだ見てなかった中庭へと足を運んでみる。

中庭に降り立ち、空を見上げる。

この中庭がまた素晴らしい。屋上の斬新すぎる戦士たちを眺めた後の、正統派アール・ヌーヴォーな空間の美しさよ。

蜘蛛の巣を思わせる有機的なドアや、

印象派の絵画を思わせる幻想的な天井画や、

色褪せた壁画や優雅な手すりなど、どこに目を向けてもロマンティック。

外観や住居部分のデザインは控えめに、屋上は思い切り楽しく、中庭は幻想的に…と、さまざまな表情をもつ名作住宅。本当によく考えられているなぁ。

……などと感心してが、後で資料を読んでびっくり。実はこの住居、もともとガウディは「聖母マリアの台座」にする計画だったという。あの岩山を思わせる、有機的だが華美ではない落ち着いた外観は、「台座」だったからなのか! その上に巨大なマリア像が作られていたら、どれほど派手な外観になっていたことか……。

しかし、この住宅に過剰な宗教的要素をもたせることに依頼主が激怒、裁判沙汰になり、結果、ガウディは完成前にプロジェクトを降りてしまった。だからここも、ある意味でサグラダ・ファミリア同様、ガウディ建築として「未完」といえるのかもしれない。

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バルセロナを見守る神殿、ガウディの「グエル公園」で感じたこと https://tripplanner.jp/topics/5404 Sun, 27 Apr 2025 00:55:21 +0000 https://tripplanner.jp/?p=5404 バルセロナのガウディ作品のうち、サグラダ・ファミリアと人気を二分するのが世界遺産「グエル公園」である。バルセロ…

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バルセロナのガウディ作品のうち、サグラダ・ファミリアと人気を二分するのが世界遺産「グエル公園」である。バルセロナの街を見下ろす高台にある15ヘクタールもの(東京ドームの約3.2倍)公園の中には、「世界一長いベンチ」と呼ばれるモザイクベンチが囲む広場や、おとぎ話の砂糖菓子のような建物、ガウディが実際に暮らした家など、見どころも多い。

グエル公園
サグラダ・ファミリアと並ぶ人気のガウディ作品なので、チケットの事前予約は必須。

実はこの公園、もともと約60戸が入る広大な分譲住宅地を目指していた。ガウディのパトロンだったグエルが出資し、1900年に着工したものの、その奇想天外すぎるデザインゆえか、なんと売れたのは2戸のみ。うち1軒はガウディが自ら購入して暮らしたモデルハウスというありさまで、端的に言えばビジネスとしては大失敗したプロジェクトだったのだ。

そんな「負の遺産」になりかねなかった分譲地は、その後公園としてバルセロナ市民に開放され、今では世界中から観光客が押し寄せる人気スポットになっている。

公園内のあちこちにある陸橋。建設当時は自然洞窟発掘の時代で、洞窟造形がこの公園の主要テーマだとも。

『ガウディ よみがえる天才』(鳥居徳敏著、ちくまプリマー新書)によれば、この分譲地を結果的に公園にせざるを得なかったことを記者に問われたグエルは、投資した何百万ペセタという大金について「しかし、他により良い使い方でもあるのかな」と返したとか。かっこいいですな、これぞあるべきパトロンの姿!

モザイクのベンチが縁を彩る「ギリシャ」劇場。
波打つベンチに座って記念撮影するのがお決まり。

この公園で最も驚く構造は、波打つベンチが印象的なギリシャ劇場と呼ばれる広場が、何本ものドーリス式列柱に支えられ宙に浮いていることだ。

グエル公園のドラゴンの噴水
ギリシャ広場で溜まった水は濾過されてドーリス式の柱を通り、「ドラゴンの噴水」から吹き出す構造。このドラゴンはギリシャ神話の聖地の守護者ビュートーンだそう。神社でいうと狛犬的なものだろうか。

広場の下は異世界。この空間では分譲住宅に住む人々のための市場が開かれる構想があったという。

ガウディは、古代ギリシャのデルフォイ神殿を再現し、これによりグエル公園を神域としたバルセロナを「世界の中心」に祭り上げることを目指していたと、前掲書の中で著書の鳥居さんは言う。

そうか、無邪気に「かわいい〜」などとはしゃいでいたが、ここはガウディの故郷カタルーニャへの愛が凝縮された神殿だったのか。そう思うと、ガウディが暮らしたあのつつましい家も、「神職の住まい」だと思えば合点がいく。

サグラダ・ファミリアの紹介記事でも触れたが、個人的にバルセロナ、ガウディ建築巡りで最も胸打たれたのが、グエル公園内にあるガウディが暮らした家だった。

グエル公園に残る、いまは博物館になっているガウディの自邸。ガウディが20年間暮らした家だが、建設を担当したのは、彼の弟子。
高台からバルセロナの中心部を見下ろす家
ガウディが手がけた家具なども展示されている。

建築会の巨匠の家としては非常にこぢんまりとしており、華美な要素はほとんどない。再現されているガウディの寝室などは、まるで修道士が暮らしていたかのような素っ気なさ。

晩年はサグラダ・ファミリア以外の仕事を断り、この質素な家から、仕事場であるサグラダ・ファミリアへ通勤、あとはミサなどに出席するだけ、という「聖人」ぶりだったというガウディ。

そんなエピソードを知ると、グエル公園という”神殿”から見下ろすサグラダ・ファミリアが神のような存在に見えてくる。

グエル公園から見下ろすサグラダ・ファミリア。彼は何を思い、日々この景色を眺めていたのだろうか。
曲線的な形状と色鮮やかなモザイクタイルで装飾されたかわいい「守衛小屋」と「管理事務所」。しばしばお菓子に喩えられる。

ガウディの空想力を楽しむテーマパークのように思っていたが、彼の宗教心やカタルーニャへの深い愛などを知ると、この公園はバルセロナを称える神殿のようにも、サグラダ・ファミリアを拝む遥拝所のようにも感じてくるのだった。

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祈りの万華鏡、サグラダ・ファミリアでガウディの壮絶な魂に思いをよせる https://tripplanner.jp/topics/5378 Fri, 25 Apr 2025 03:13:30 +0000 https://tripplanner.jp/?p=5378 サグラダ・ファミリアは、予備知識なく訪れても、美しさと荘厳さに誰もが圧倒されるわかりやすい名建築だ。濃密な彫刻…

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サグラダ・ファミリアは、予備知識なく訪れても、美しさと荘厳さに誰もが圧倒されるわかりやすい名建築だ。濃密な彫刻、ステンドグラスから漏れる色とりどりの光、有機的な石の佇まい……その視覚的なパワーを前にすれば、うんざりするような行列と荷物チェックを経てすでにくたくたになっている身体にも力がみなぎってくる。

実は私も大した知識もなくここを訪れた。心のメモ帳の「死ぬまでに見たい名建築」の上位に常にあった有名作品だから来てみた、ぐらいのものである。

ただ、ちょっとだけ建築の背景にあるストーリーを知ると、聖堂を見る眼差しも変わってきたりする。ということで、今回はこの名建築の感動ポイントを、ガウディの伝記等から得た情報を絡めながら個人的な感想メインでお届けしてみたい。

まず後から「へえ」と思ったのは、ガウディの代表作のように言われているサグラダ・ファミリアだが、実は一部しか世界遺産に登録されていないという事実だった。サグラダ・ファミリアと言えば、「光の森」と形容される樹木をモチーフにした柱が林立する聖堂内部が有名だが、実はこのエリアは世界遺産対象外。

サグラダ・ファミリア
森のように細い柱が林立し、多彩なステンドグラスから差し込む光が幻想的な空間を作り出す聖堂内部。ここは世界遺産じゃない部分。

実はこの聖堂内部はガウディが亡くなってから作られた部分。世界遺産の「アントニ・ガウディの作品群」に登録されているのはガウディが確かに関わったことがわかっている「最初に建設された地下聖堂」と「生誕のファサード(正面と塔)」のみなのだ。

ガウディの魂が宿る「生誕のファサード」

ガウディが生前に唯一完成させたファサード「生誕のファサード」は、3つの門(希望の門、慈愛の門、信仰の門)を中心に、キリストの誕生に関わる場面が細やかに描写されている。

生誕のファサード
彫刻の一部を日本人彫刻家である外尾悦郎さんが手がけたことが日本人として誇らしい。

まさに彫刻で埋め尽くされている、といっていいファサードは、ひとつひとつ読み解いていったら半日かかりそうな濃密さ。このファサードに関する史実を知ると、その美しさはさらに胸に迫ってくる。

ガウディの有名なエピソードとして、命の危険に及ぶほどの壮絶な「断食」がある。「生誕のファサード」の着工から1年後の1894年、すでに建築家として著名で、仕事も順調だったガウディが、「復活祭の前の四旬説に過去の罪を贖うために断食する」という教理に従って一切の食事を絶った。

それは周囲が「死ぬつもりか?」と思ってしまうほど壮絶なもので、家族や弟子がいくら説得しても何も食べず、ガウディはみるみるやせ細っていく。万策尽きた家族らは知り合いの神父に助けを求め、神父はガウディに「あなたはこの聖堂を完成させるという現世での使命を受けている」と語りかける。それにより、ガウディは自分の生きる意味、天命を悟ったのだった。

晩年のガウディは聖人と呼ばれ、朝夕必ず教会のミサに通う以外は聖堂の建設だけに命を捧げた。そんな彼のキリスト教の知識と祈りが凝縮したファサードは、まさに石でできた信仰のタペストリー。色鮮やかな聖堂内部だけでなく、立ち止まって彼の生涯に思いを馳せたいエリアだ。

見る場所によって表情が変わる聖堂は最も見学が楽しい「光の森」

さて、生誕のファサードを入ると、そこはまさに色の洪水。最もインスタグラマブルといえる空間に、観光客たちのシャッターを押す手が止まらない。

面白いのは見る場所によってがらりと表情がかわること。ファサード入ってすぐのあたりは、赤や青のステンドグラスの光に彩られ、祝祭感たっぷり。一方を見れば赤く、一方を見れば青い、そんな色の変化も楽しめる。

天井を見上げてみれば、そこは色数を押さえられ、際立つのは樹木をかたどった柱の美しさだ。

いまだ建設中の栄光のファサードは、聖堂内部から見ると幾何学模様のステンドグラスが現代的でスタイリッシュな印象。完成すれば正式な大聖堂の入場口となる予定だ。

ギリシャ神殿を思わせるエリアも。

モダンで異質な印象の「受難のファサード」

さて、見学の最後は、1954年に着工した比較的新しい「受難のファサード」へ。カタルーニャ出身の彫刻家ジュゼップ・マリア・スビラックスによる直線を多用した現代風なデザインは、生誕のファサードや有機的な”光の森”の聖堂を抜けてくると、若干違和感を感じてしまうのが正直なところ。

ここで描かれているのは、キリストの苦悩と悲しみ。最後の晩餐からキリストの十字架磔刑までの場面などが描かれている。

十字架を背負うキリストの彫刻。ダース・ベーダーみたいな人がいる…?

受難のファサードは「サグラダ・ファミリアは、ガウディの死後、ほとんど資料が残ってない中、手探りで建築が進められている聖堂」なんだよな、と改めて感じる箇所。聖堂内部の森のようなデザインなどはガウディの遺志を継いでいるというが、資料が残らない部分については後世に委ねられ、わりと自由に解釈されていたりもする。懐の広い建築なのだった。

ガウディは何を償わなければならなかったのか、想像を掻き立てた聖人の住まい

ざっと見学してつくづく感じたのは、とにかく規模が大きく、人も労力も、そしてお金もふんだんに使われた聖堂だな、ということ。

その大きさはまさに「バルセロナの灯台」と言いたくなる規模だし、彫刻やステンドグラス、柱の意匠など妥協のない美しさは、建築というより巨大なアート作品という印象。

この「華美」とさえ言いたくなるような華やかで荘厳な聖堂が、豊かとは言えない人々の献金を主な財源とするのを前提に着工されたという史実にも本当に驚く。

そもそもこの聖堂の正式名称は「サグラダ・ファミリア贖罪聖堂」。贖罪とは、「何らかの犠牲を通して罪を償う」という意味で、この理念をガウディは大切にし、自らも多大な犠牲を払った。それは、無報酬で聖堂の建築に携わること、晩年は聖堂以外の仕事を一切断ったこと、贅沢を禁じ、浮浪者と間違われるほどの質素な身なりをし、菜食主義を貫くなどだ。

建設資金が尽きた際には(当たり前だ)、すでに巨匠として著名であったにもかかわらず、自ら家々を周り募金を集めた。一体何がそこまで彼を突き動かしたのか、狂気のようなものさえ感じるエピソードである。

個人的に、バルセロナで一番胸に残ったガウディ体験は、グエル公園内にある「ガウディの家」を目にしたときのこと。

これが、あの華やかなアール・ヌーヴォー建築で人々を魅了した巨匠建築家の寝室? まるでクエーカー教徒の農夫の家のようではないか。

晩年のガウディが「聖人」と呼ばれていたという史実は知っていたが、ビジュアルでその倹約ぶりを突きつけられると、心の奥がぎゅっと締め付けられる。「聖堂を建てること以外に何もしたくない」と語り、この家と教会をひたすら往復していた、質素な身なりの老人の姿が目に浮かぶようだ。

一体、彼が何をしたっていうんだ。何を償う必要があるんだ、と小さな怒りさえ覚える。そうして、あの観光客たちを熱狂させる大聖堂が、飲み込まれたら二度と出てこれなくなる、美しい迷宮のようにも思えてくるのだ。

サグラダ・ファミリア

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<参考資料>

ガウディ よみがえる天才6」鳥居徳敏(ちくまプリマー新書)
入門 ガウディのすごい建築」鳥居徳敏監修(洋泉社)

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ベルニーニとカラヴァッジョを見るなら唯一無二!ローマの至宝・ボルゲーゼ美術館へ【ヨーロッパ有名美術館めぐり】 https://tripplanner.jp/topics/5241 Tue, 31 Dec 2024 06:03:21 +0000 https://tripplanner.jp/?p=5241 ローマで最も有名な美術館といえば、間違いなくバチカン美術館だが、最もローマらしい美術館と聞かれれば、ここ、ボル…

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ローマで最も有名な美術館といえば、間違いなくバチカン美術館だが、最もローマらしい美術館と聞かれれば、ここ、ボルゲーゼ美術館と答えたい。ローマをバロックの都に変えた巨匠・ベルニーニと、ローマで黄金期を迎えた初期バロックを代表する画家・カラヴァッジョの作品のコレクションでは世界屈指だからだ。

まずは「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」とまで言われる、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680年)の作品から見ていこう。

ベルニーニの超絶技巧が堪能できる圧倒的なコレクション

この美術館で、一番感動した作品は?と聞かれたら、まず挙げたいのがこちら。

アポロとダフネ(ベルニーニ)

アポロとダフネ
アポロとダフネ(1622-25)

アポロの執拗な追跡から逃れようと、ダフネが月桂樹に変身する瞬間を捉えたベルニーニ初期の傑作。まるでメタモルフォーゼに立ち会っているかのような圧倒的な臨場感。

ダフネの指先にいままさに作られる葉、風に揺れる髪、若い二人のつややかな肌……その繊細で超絶な技工には、変な言い方だが少女漫画的、宝塚的な華やかさを感じてしまう。

これらをみな大理石で表現したなんて…(絶句)。

足元からもぐんぐん根が!
アポロとダフネ
あまり見かけないアングルからみてもすごい。部屋の真ん中に設置されているから好きな角度で好きなだけ鑑賞できるのがいい。

この美術館の贅沢なところは、この部屋が「アポロとダフネ」だけに用意されていること。天井を見上げれば、「アポロとダフネ」の絵画があるなど、作品世界に没入できるようになっているのだ。

プロセルピナの略奪(ベルニーニ)

プロセルピナの略奪
プロセルピナの略奪(1621-22)

こちらもこの美術館屈指の有名作品で、冥界の神プルートがプロセルピナを誘拐する様子を描いている。プロセルピナの太ももに残るプルートの指の跡のリアルさよ…。

プロセルピナの略奪

この彫刻がある部屋は美術館の中でもひときわ広く豪華。もともとこの作品は、壁に取り付けられていたが、のちに部屋の中央に移され、今では観客が様々な角度から鑑賞できるようになっている。絢爛で装飾過多ともいえる濃密な空間にあっても、彫刻の力強さが全然負けていないのがすごい。

ダビデ像(ベルニーニ)

ベルニーニのダビデ ベルニーニのダビデダビデといえばミケランジェロが有名だが、実はベルニーニも彫っている。でもミケランジェロのそれと比べるといささか線が細いダビデである(というかミケランジェロ作品の男子は、彼の嗜好かもしれないが骨太でマッチョすぎませんかね…)。石を投げようと準備する際に、眉をひそめて集中しているちょっと神経質で繊細なダビデ。明らかにミケランジェロ作品に比べて「動的」で、さすがバロック。

シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の胸像(ベルニーニ)

ちなみにこちらがベルニーニ、ならびにカラヴァッジョのパトロンとして知られるシエナ出身の名門貴族、ボルゲーゼ家のシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿。母方の叔父がパウルス5世として教皇になった後に、わずか28歳で枢機卿になり、絶大な権力を持つとともに、美術コレクターとしても有名に。ベルニーニを早期に発見して支援したほか、カラヴァッジョ作品の豊富なコレクションで知られる。

世界で最もカラヴァッジョの作品が残るローマで、最も多くの作品を所蔵するボルゲーゼ美術館を築いた立役者。恰幅が良く、見るからに豊かそうだが、何かを言いたげな表情が気になる。

さて、お次はカラヴァッジョの有名作品を見ていこう。

「果物籠を持つ少年」「病めるバッカス」などカラヴァッジョ初期の作品も充実

果物籠を持つ少年(カラヴァッジョ)

1593-94年頃

いつも見ている山田五郎さんの「大人の教養講座」でもフィーチャーされていた妙に艶めかしい少年を描いた初期作品「果物籠を持つ少年」。まだカラヴァッジョがほとんど無名だった頃の貴重な作品である。

病めるバッカス(カラヴァッジョ)

1593-94年頃

バッカスの肌の青白さと熟れすぎた果物が、退廃的な腐敗感を醸し出す、こちらもカラヴァッジョの初期の作品。自分が病気になったときの自画像とも言われており、顔色の悪さが妙にリアルだ。「果物籠を持つ少年」も「病めるバッカス」も、元はカラヴァッジョの初期の雇い主であったジュゼッペ・チェザーリのコレクションだったが、後にシピオーネ枢機卿が1607年頃に取得。

こう書くと、カラヴァッジョが有名画家になってから後出しでシピオーネが作品を横取りしたかのように見えてしまうが、

聖アンナの老女ぶりがリアルすぎると当初の依頼主に受取拒否された「聖アンナと聖母子」を買いとってあげたのも彼である(詳しい理由は山田五郎さんの動画をチェック)。シピオーネ枢機卿だって立派なパトロンだったのだ。

 

書斎の聖ヒエロニムス(カラヴァッジョ)

書斎の聖ヒエロニムス
1605-1606年ごろ

カラヴァッジョのローマ時代最後期の作品。こののち、殺人を犯した彼はローマにいられなくなり、死ぬまで続く長い逃亡生活へと入る。なんか暗示的……。

ゴリアテの首を持つダビデ(カラヴァッジョ)

1609~1610年ごろ。

力強い明暗対比がカラヴァッジョらしい、ゴリアテの斬首された首を持つダビデの絵。生首のモデルがカラヴァッジョ自身であることでも有名で、暴行やら殺人やらと、やたら素行が悪かった自分を貶めることで、シピオーネ枢機卿の許しを乞うために描かれたとも。

カラヴァッジョ最後の作品としても知られ、1610年、ついに彼は、まるでこの自画像が予言だったかのように命を落としたのだった。

もとはといえばシピオーネ枢機卿のコレクションのために建てられた邸宅だったボルゲーゼ美術館。フレスコ画、漆喰、モザイクで装飾された邸宅自体がいわば美術品でもあり、それを取り囲むボルゲーゼ公園もひたすら広大である。フィレンツェにおけるメディチ家を彷彿とさせる存在感を放つボルゲーゼ家の栄華と輝かしい美の遺産に触れられる史跡でもある。

観光客でごった返すトレビの泉付近とは違ってリラックスした雰囲気も癒やされるので、ぜひ足を運んでほしいアートスポットだ。

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超絶技巧に驚いた、過密で濃密なヨーロッパ名建築3選。 https://tripplanner.jp/topics/5215 Tue, 24 Dec 2024 13:48:13 +0000 https://tripplanner.jp/?p=5215 私の場合、旅の目的の多くを占めるのが建築ウォッチングだ。絵や彫刻などと違って、絶対に日本に来ることはないアート…

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私の場合、旅の目的の多くを占めるのが建築ウォッチングだ。絵や彫刻などと違って、絶対に日本に来ることはないアートだし、写真で楽しむにも限界があるからだ。大自然と違って天気に左右されず、いつもそこにいてくれるのも心強い

ということで、2024年もヨーロッパ各地で名建築を見たけれど、個人的に印象に残っているヨーロッパ建築ベスト3濃密編を紹介したい。シンプルでスタイリッシュな現代建築がお好きな人にはおすすめしないけど、余白恐怖症か何か…? と思わず心配になるくらいの濃密空間がお好きな方はぜひ。

第3位  ローマ丨サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会

バロックを代表する建築家であり彫刻家ベルニーニの最高傑作とも言われる「聖テレジアの法悦」で知られるイタリア、ローマにある教会。

聖テレジアの法悦この彫刻のすごさについては、山田五郎さんのYouTubeを観ることを強くおすすめ。

彫刻の魅力については「ローマで行くべき、美術館超えのアートが無料で堪能できる有名教会3選」で語っているので、今回は建築、インテリア編。

この教会を設計したのは、サン・ピエトロ大聖堂のファサードなどで知られ、ベルニーニの師でもあった初期バロック建築の巨匠カルロ・マデルノ(1556年 – 1629年)。ベルニーニの「聖テレジアの法悦」ばかりが注目されている教会だが、実は唯一、カルロ・マデルノが完成まで一通り指揮した作品でもある。彼の仕事の多くは建築の一部だったり改修案件だったため、まるごとプロデュースした教会は建築史上とても貴重なのだ。

金メッキされた柱、複雑な模様を描く大理石の壁面だけでも十分豪華なのに、それらに負けじと彫刻や絵が過剰に空間を埋め尽くす濃密空間。

たとえば天井を見上げれば、壮大なフレスコ画「異教徒に勝利する聖母マリア」。

「聖テレジアの法悦」がある、ベルニーニが内装、彫刻、壁画などすべてを手掛けたコルナロ礼拝堂の天井には、だまし絵のような雲のまわりを天使が舞踊る。

その他、どこを見上げてもこの有り様だ(褒めてます)。

もうお腹いっぱいだし帰ろう…と向かった出口でさえこれ。

余白に親でも殺されましたかーーー!?

まぁ、これぐらいの過剰さはヨーロッパのバロック教会あるあるなのだが、やはりこの教会のすごさは、これだけの濃密空間の中にあって埋もれない、「聖テレジアの法悦」の圧倒的存在感だと思う。金の細い棒の塊に、天然の光をあてることで実現したスポットライトが照らし出す美しくもエロティックな彫刻。

その視覚効果のすごさを体験しに、ぜひ足を運んでほしい場所。ローマには珍しく全然混んでないし、しかも見学無料ですよ。

サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会(地図)

第2位  マドリード丨サン・アントニオ・デ・ロス・アルマネス教会

「マドリードのシスティーナ礼拝堂」などとも呼ばれる、教会の内部すべてがフレスコ画で埋め尽くされた教会。正直、日本での地名度はいまいちだが、スペイン政府による「国立歴史芸術記念物(National Historic-Artistic Monument)」にも指定されている名所。まぁ、スペインの国宝みたいなものなのだ。

サン・アントニオ・デ・ロス・アルマネス教会

外観は、「え?ここ?」と戸惑うほど地味だが、中に入ると突然世界が変わる。

サン・アントニオ・デ・ロス・アルマネス教会

貧しい人々の守護聖人である聖アントニオに捧げられた教会。
天井画「パドヴァの聖アントニオの幻視」

壁から天井まで覆う一面のフレスコ画! いろんな教会を見てきたけど、こんな内装を見たのは初めてで、入った瞬間「うわぁ…」と思わず声が出た。この凄さを写真で伝えるのは難しい。空間すべてが幻想というかだまし絵というか、まさに没入型アートなのだ。

この教会が建てられたのは、1624年から1633年にかけて。ただし、内部のフレスコ画がすべて完成したのは、その建設から約70年も経った1705年ごろ。手がけたのは、スペインのバロック美術を代表する、王室付き画家でもあったフランシスコ・リシや、フランシスコ・カレーニョ・デ・ミランダなど当時一流のメンバーだ。

まさにトリックアート

正直言って、激混みで立ち止まるのも困難だったシスティーナ礼拝堂よりもずっと感動。彫刻や金メッキなどがないぶんもしかしたらコストはかかってないかもしれないけど、まるごとフレスコ画というアイデアで見事に異次元の美しさを達成。

スペイン・ハプスブルク家最後の国王となった、「カルロス二世」の肖像画もあってしんみり。繰り返された近親結婚の呪いを背負ったかのように誕生し、病弱で重い障害があった王が死去したのは1700年のこと。これによりスペイン・ハプスブルク家は終焉し、スペイン継承戦争が始まるのだ。

サン・アントニオ・デ・ロス・アルマネス教会 (地図)

第1位  グラナダ丨アルハンブラ宮殿のナスル宮殿

今年観てもっとも感動した建築の1位はぶっちぎりでアルハンブラ宮殿。「有名すぎるし混んでるよなぁ」となんとなく避けてきたけど本当に行って良かった! もう異次元の濃密さ、美しさだ。

3位と2位のバロック教会は、ともすれば「息苦しい」とさえ感じてしまう濃密さだが、こちらの宮殿は主に幾何学模様で埋め尽くされているので、濃密だけどスッキリしている。いまの私たちの感覚にも近いスタイリッシュなインテリア。

とはいえ、近くで見ると細部まで手が込んでいて絶句。こんなん、一体何人の職人が何年かけて作ったのか。

面白いのは、鍾乳石飾りと呼ばれる技法。

イスラム建築特有の装飾技術で、鍾乳洞のような立体的な形状を持っており、宮殿内の上を見上げるとよく出会う飾りだ。

見学中は、気がつけば口開いてた、くらいの放心状態。

スペインに最後まで残ったイスラム王朝であるナスル朝の遺跡を、征服した側のカトリックの王が、なぜここまで完璧に残したのだろう…と不思議に思ってたけど、こんなもん、誰だって壊す勇気ないよね…。

アルハンブラ宮殿についてはその建築的見どころ、歴史などはあまた情報があるので、ここではその美しい写真をシェアするに止めよう。もう絶対に実物を見てね!

アルハンブラ宮殿(公式サイト)

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トリッププランナーで何度かご紹介している、ポルトガル第二の都市、ポルト。『魔女の宅急便』の舞台の一つとも言われているフォトジェニックな港町である。

主な観光名所はこの記事で紹介したので、今回は少しだけマニアックな、とはいえ、建築好きにはよく知られた名所を紹介したい。建築界のアカデミー賞と言われているプリツカー賞を受賞した、ポルトガルを代表する巨匠、アルヴァロ・シザの代表作の一つと言われている美術館は、アートと建築、そして森林浴まで楽しめてしまう、わりとおすすめのスポットなのだ。

■写真でたっぷり紹介、シザの名作「セラルヴェス現代美術館」

歴史ある町並みが印象深い、ポルトの町の中心部からバスで揺られること約30分、世界遺産・ポルト歴史地区に並ぶ建物とはまるで違った建築を見せてくれるのが、シザによる「セラルヴェス現代美術館」だ。

セラルヴェス現代美術館

エントランスを入るとまず目に飛び込んでくるのが、柔らかい曲線と直線を組み合わせたシンプルな白い建物。まるで現代アートを包むシンプルなボックスのよう。この控えめな外観の中に、モダンアートが溢れていると思うとわくわく。

内部もまた、シンプル&かっこいい。控えめなトップライトが上品で、展示されるアートを最大限に引き立てようと一歩後ろに下がっているよう。

この美術館があるのは、 18 ヘクタールもの広さを誇る元は貴族の夏の別荘だったという広大な庭園。シザはこの美術館と公園との調和を重視しており、建築のところどころに、まるで額縁のように、美しい公園を切り取る印象深い窓を配置している。

なんだか日本のお寺の額縁庭園のよう、とも思ったが、窓によって風景を切り取る手法は、病気がちであまり外出できなかった子供の頃のシザの経験が影響しているとか。

カフェテリアも公園ビュー。

私が訪れた日はたまたま草間彌生の展覧会を開催中。「ここまで来て何も日本人のアートを見なくても…」などとちらりと思ったが、シザの建築と草間彌生のコラボなんてここでしか(たぶん)体験できないので、むしろ贅沢な経験に。

さて、この美術館にはちょっとしたシザ特集コーナーもあり、彼が手がけた、建築模型、設計図、デッサンなどが、数部屋にわたって展示されている。シザマニア(どれくらいいるかは不明)必見の場所といえよう。

白くてシンプルな建築ばかり手がけてきたのかと思いきや、模型にはわりと挑戦的なものも多く、彼の作品をもっと見てみたいな…とさらに興味が湧いた。

微笑ましかったのは、落書きだらけの建築デッサンもちらほら見られたこと。巨匠、仕事に集中してくださいよ…。

広大な庭園とポルトガル屈指のアールデコ建築も必見

さて、この美術館のお楽しみはここだけでは終わらない。先程も触れたように、この美術館は広大な公園の中にあり、緑の中にはちらほらとアート作品が展示されている。いわば小型版彫刻の森美術館みたいなもので、森林浴とアート鑑賞が同時に楽しめる癒やしのスポットなのだ。

なかでも白眉は、1925 年から 1944 年にかけて建てられたポルトガルを代表するアールデコなお屋敷、「カサ デ セラルベス」。もとはフランス人建築家シャルル・シクリスと、ポルトのサン・ベント駅などを手がけたポルトガル人建築家ホセ・マルケス・ダ・シルバが設計し、修復をシザが監督している。

この建物も現在では展示空間として利用されているが、願わくば普通にただ建築だけ鑑賞させてほしかった。建築当初はルネ・ラリックなどの巨匠による家具や調度品があったそうだが、今はそれらはちりじりになってしまい、楽しめるのはドアノブや窓枠、階段の手すりなどの凝った装飾のみ。

モダンアートには申し訳ないが、個人的にアールデコなお屋敷が大好物なので、もっとそれらをゆっくり見せてほしかったなぁ。

エロかっこいいバスルーム

邸宅の前にはフランス式庭園が広がり、まるでデイビット・ホックニーの絵のような色彩。

セラルヴェス現代美術館

とにかく広いので、アート鑑賞して庭園をブラブラしただけで半日くらいすぐ終わってしまう。シザの美術館だけ見てさっと帰るにはおしすぎる名所である。

歴史を感じるポルトの中心部とはまた違った、モダンな現代建築と20世紀初頭のアールデコ建築、美しいフランス式庭園を堪能できる「セラルヴェス現代美術館」。アート好きならぜひ観光ルートに加えてみては?

ポルトの建築はこれだけじゃないのです。

<セラルヴェス現代美術館> Museu de Arte Contemporanea de Serralves

Rua D. Joao de Castro, 210 4150-417 Porto 公式サイト

 

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ローマで行くべき、美術館超えのアートが無料で堪能できる有名教会3選 https://tripplanner.jp/topics/4872 Tue, 06 Aug 2024 10:36:10 +0000 https://tripplanner.jp/?p=4872 世界が恋する永遠の都、ローマ。人気すぎて有名観光地の混み方は尋常ではなく、バチカン博物館やボルゲーゼ美術館など…

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世界が恋する永遠の都、ローマ。人気すぎて有名観光地の混み方は尋常ではなく、バチカン博物館やボルゲーゼ美術館などの有名どころは当日券を手に入れるのは無理ゲーで、一ヶ月ぐらい前からオンライン予約しておかないと…という有り様だ。

大混雑のトレビの泉
トレビの泉の周り。通勤ラッシュ思い出すわぁ…。

しかもバチカン美術館に至っては必死で取ったチケットを持っていたとしても入場時間の1時間前から並んでいる人多数で、入場したあとも流れるプールの如く、人の波に乗って見学せざるを得ない場所も……。

そんな苦行を経て私が悟ったのは、「ローマでアート鑑賞なら、美術館よりも教会に行ったほうが満足度が高い」ということだ。

チケット争奪戦に参戦する必要もなく、炎天下(あるいは極寒の中)長い行列に連なる苦しみもなく、しかも、建築、彫刻、絵画が三位一体となった総合芸術を堪能できる。教会は外へは運べないので、展覧会などで日本に来る可能性もゼロ。現地でしか楽しめない没入型アートを楽しむなら名教会に限るのである。しかも、鑑賞できる作品は、カラヴァッジョやミケランジェロ、ラファエロなど、教科書でみた!系の有名芸術家によるものがゴロゴロ。こういうところにローマの底力を感じますな。

ということで、まずは私が行って「これは…!」と感動した教会を3つご紹介。もちろんこれ以外にも素晴らしい教会はまだたくさんあるのだが、体力の限界が来て回りきれず、とりあえず、今のところ見た中でベスト3ということでご容赦を。とはいえ、どれも美術史に燦然と輝く名作かつ有名スポットなので、足を運んで損はしないはず!

これ無料で見れてOK…? カラヴァッジョの出世作「聖マタイの召命」ほか三部作丨サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会

さて、まずはローマが誇る芸術家で、その光と影のコントラストによるドラマティックな演出で多くのフォロワーを生んだカラヴァッジョから。ローマの中心地、ナヴォーナ広場の近くにあるサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会には、カラヴァッジョの名が瞬く間にローマ中に知れ渡ることになった出世作「聖マタイの召命」、「聖マタイと天使」、「聖マタイの殉教」の三部作があり、必見のアートスポットになっている。

サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会。

外観は地味だが中に入るとそれはそれはきらびやかな空間が。

サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会

サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会
ロマンティックでゴージャスなフリル〜♡ もともとローマ在住のフランス人のために作られた教会だそうで、なんとなくこのガーリーでキラキラな内装にも納得が。

その三部作は、教会の一角にあるコンタレッリ礼拝堂に3枚セットで掲げられている。いつもこの絵の周りだけは人だかりがしているので見つけるのも簡単。

カラヴァッジョによる三部作が掲げられたコンタレッリ礼拝堂。

この中でも特に有名なのが左側にかかっている「聖マタイの召命」。これは、まだ徴税人だったマタイにキリストが声をかけるシーン。画面左下でお金を数えている青年がマタイだと言われている。

「聖マタイの召命」

この絵と建築のコラボの素晴らしい点は、絵の中でもキリストがいる方向から光が差しているのだが、実際の空間でも、教会の窓から光が絵を照らしていること。絵の中の光を本物の光がアシストし、奇跡的な神秘空間を醸成しているのだ。

コンタレッリ礼拝堂
絵の中の光に加えて窓の光も差してより神秘的に。

そして、「聖マタイの召命」と向き合うのが、「聖マタイの殉教」。

聖マタイの殉教

倒れる聖人マタイの上に斬りかかる若者、逃げ惑う群集…こちらも絵に呼応するように本物の光が左から差す。この一角で、マタイのドラマティックな人生を、まるで舞台を鑑賞するような感覚で鑑賞できる劇場型絵画。

これまでいろんな美術館でカラヴァッジョの絵を見てきたが、規模の大きさと作品のクオリティと建築との呼応も含めると、個人的にこの作品がマイ・ベスト。こんなもん無料で見せてくれちゃって大丈夫ですか…?と申し訳なくなるほどの傑作。

これを機に、多くの教会などの宗教施設からカラヴァッジョへの依頼が殺到することになったという、輝かしいデビュー作。ぜひ空間ごと鑑賞してほしい。

サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会(地図)

ベルニーニの最高傑作「聖テレジアの法悦」の舞台装置に驚愕丨サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会

さて、お次は現在のローマの景観をほぼデザインしたといっていいバロックを代表する建築家であり彫刻家ベルニーニによる没入型アートを。「ローマにおける盛期バロック美術の最高傑作の一つ」とWikipediaに書かれるほど誰もが認める名作で、バロックの本の表紙になったりすることもしばしばの超有名作品、「聖テレジアの法悦」を見に行こう。

テルミニ駅から徒歩15分程度の場所に立つサンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会には、ベルニーニが内装、彫刻、壁画などすべてを手掛けたコルナロ礼拝堂があり、そこで鑑賞できるのがこちらの作品。

法悦=エクスタシーを表現する聖テレジアの表情が秀逸。というか、山田五郎さんによれば「エロい」という人も多い(詳しくはYoutubeにて)。

これは何を表現しているかというと、聖女テレジアが体験した「天使に矢で何度も心臓を刺された」ときの神秘体験。彼女の手記によれば、それは非常な痛みを伴うと同時にこの上ない心地よさもももたらせたそうで、その恍惚の瞬間を切り取ったのが「聖テレジアの法悦」なのだ。

サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会コルナロ礼拝堂
サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会内部。左手にちらりと見えているのが「聖テレジアの法悦」があるコルナロ礼拝堂

彫刻家であるだけでなく建築家でもあったベルニーニの面目躍如、とにかく細部まで計算されつくされた空間設計がすごい。

聖テレジアの法悦

天使と聖テレサを照らす光を表す金メッキを施した漆喰の細い棒は、隠し窓から差し込む自然光に美しく照らされ、薄暗い教会の中でそこだけが神秘的に輝く。まさに奇跡の一瞬を表現するのにぴったりの演出だ。

さらにおもしろいのは、その神秘体験を、劇場の桟敷席からこの礼拝堂の依頼主であるコロナロ枢機卿の一族が眺めているという構図。これにより、私達もまた、この奇跡を彼らと一緒に目撃しているかのような錯覚に陥る。

雲の上に乗り浮遊している聖テレサと天使の上を見上げれば、どこからか彫刻でどこからが絵なのか判別できない天井世界が現れる。

まさに建築・彫刻・絵画が一体となった総合芸術。これだけは現地で見ないと本当にだめ!な圧倒的没入型アートなのだ。

「同じ大理石から、薄くて柔らかい布、肌、そして雲の質感を表現している。ものすごい超絶技巧」と山田五郎さんがYoutubeで語っていたが、実際に目にするとその細かさに本当に驚く。分野は違うが、日本の伝統工芸の蒔絵などに匹敵する手工芸的な緻密さ。空間設計との合わせ技で神々しさをました彫刻を眺めていると、ついこちらまで恍惚としてしまう。

「聖テレジアの法悦」の正面には同じような設計のドメニコ・グイディによる「聖ヨセフの夢」が。
サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会。テルミニ駅から徒歩10分程度。

ちなみに私がこの作品を見に訪れた朝9時ごろは、夏のハイシーズンだったにもかかわらず、「観客」は私だけだった。ローマの混雑にぐったりしたら、ここで圧倒的な美の空間に浸ってパワーチャージしてみては?

サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会(地図)

「バロックの真珠」と賞賛されるボロミーニによる名作丨サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂

さて、最後はやや建築よりの名作を。ベルニーニの助手を務めたこともあり、後にライバルとなった建築家フランチェスコ・ボロミーニの出世作、サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂を覗いてみよう。ローマを代表するバロック建築のひとつで、「バロックの真珠」と称えられている名建築である。

どうですか、このファサードの独特さ。上の2つの教会と比べても曲線と凹凸が圧倒的に多すぎる。1638年から1641年ごろ建てられたというが、450年後に流行るアール・ヌーヴォーもびっくりのグニャグニャ感だ。

装飾過多ともいえるファサードとはうってかわり、中へ入ると、幾何学模様の装飾がモダンな天井がお出迎え。

サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂

色とりどりの大理石や金メッキ、豪華な天井画がお約束みたいなローマのバロック教会において、白一色かつ幾何学模様に彩られたこの教会のデザインは異色。天井からこぼれる光がシンプルですっきりとした空間を照らし、静謐な祈りの空間をかたち作っている。

宮下規久朗さんの著書『バロック美術』の言葉を借りれば、「明るいドームの天井は十字架と八角形、六角形を交互に繰り返す幾何学的なストゥッコ装飾によって無限の上昇感を与えられている。この卵形の天井は非常に明るく、この空間に立って見上げると神の無限の恩寵すら感じさせる」のだ。

エレガントな装飾も素敵。
こちらにも「恍惚の人」が。これはフィレンツェの女性画家アマリア・デ・アンジェリスによる『聖ミカエルの幻視』。1847年のものなので、後から追加されたっぽい。

サン・ピエトロ大聖堂の建築などにも携わり、イタリアのバロックを代表する建築家となったボロミーニだが、その性格は気難しく神経症的で、最後は自ら命を絶ったという。だが、彼が残した独特なスタイルの建築が、その後のバロック建築に与えた影響は大きい。「ベルニーニの都、ローマ」だけど、次は彼の建築をゆっくり訪ね歩いてみようかな、と思わせてくれる美しい教会だった。

サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂(地図)

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すでにレポートしたアール・ヌーヴォーなお屋敷マジョレル邸から歩いて約10分のところにある、アール・ヌーヴォーに特化した世界でも稀な美術館「ナンシー派美術館」

ナンシー派とはエミール・ガレが中心となり結成された、この地を拠点に活動する芸術家たちが作ったグループのこと。そのナンシー派のコレクターだったウジェーヌ・コルバンの邸宅跡を利用し、家具やガラスなど多くの工芸作品を展示しているのがこの美術館だ。

こぢんまりとしたお屋敷だが、一歩中に入ると、濃密なアール・ヌーヴォー空間が広がっている。

一部屋まるごとアール・ヌーヴォーにしたったぞ!なダイニングルームはこの美術館の白眉のひとつ。

ぐにゃぐにゃ、曲線、装飾過多…これぞアール・ヌーヴォー!な空間にどっぷり浸れ、特に日本人にはエミール・ガレの作品が多いのも嬉しいポイントだろう。

面白いのは、ショールーム的にいろんなアール・ヌーヴォーな小部屋があること。将来インテリアに取り入れたい人には家具の配置や小物のあしらいなど参考になりそうなポイントがいっぱい。

エミール・ガレが手掛けたベッドも展示。
ジャック・グリュベールが手掛けたライブラリー。

ふつうの美術館だと、陶器やガラス製品などが単品でぽんぽんと展示されているケースが多いが、この美術館では、邸宅の室内空間がまるごと当時の雰囲気に再現され、家具やアート、工芸品とともにコーディネイトされているのが本当に素敵。まるでベル・エポックのフランスにタイムスリップしたよう。

奥に掲げられている絵はヴィクトール・プルーヴェによるナンシー派の仲間の家族を描いた絵。マジョレルの家具やドームやガレの照明もずらり。

とはいえ、もちろん、日本でも人気のエミール・ガレの作品などはひとつずつじっくり鑑賞できるようにガラスケースの中に」陳列されている。

エミール・ガレの作品。

わかりやすく美しいガラス製品も多いが、中にはおどろおどろしいものや、日本リスペクトすぎてちょっとおもしろくなってしまっている作品も。

エミール・ガレ作のうちわ

彼がどれほどジャポニスムに影響を受け、日本の美に惹かれていたがわかり、日本人として誇らしい気持ちにも。

ジャック・グリュベールによるステンドグラス、1904年のもの。
アール・ヌーヴォーなピアノまで。

すっきりシンプルな北欧家具に目が慣らされてしまっている私にとってはひとつひとつの家具が、美しいだけでなく興味深い。こんなん、大量生産絶対ムリよね…という現代ではとても手に入らなそうな貴重な展示品の数々。日本人にもとても人気のあるミュージアムなんだとか。

なお、この美術館の庭は、誰にでも無料で開放されており、近所の人たちの憩いの場にもなっている。

私が行った7月には簡易なバーもオープンしていて快適度もアップ。

軽食やソフトドリンク等を購入可能。
とりあえずビール。生き返るわー!

観光客で賑わうユネスコ世界遺産・スタニスラス広場があるナンシーの旧市街に比べ、このあたりは歩いている人もまばらなほどの静かな住宅街。近くには大きな公園もあるので、ここでゆっくり休憩したあとは、ぶらぶらと散策してみるのも楽しい。そこかしこで「小さなアール・ヌーヴォー」を見つけることもできますよ。

Musée de l’Ecole de Nancy Google Map 

公式サイト ※マジョレル邸とセット券を買うのが圧倒的にお得です。

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お屋敷好きならナンシーで絶対外せないのが、ナンシー派の家具デザイナー、ルイ・マジョレルの自宅兼アトリエ、マジョレル邸だ。

1902年築。まるごとアール・ヌーヴォーな邸宅は、ナンシーではこのマジョレル邸が初だったという。2020年に修復を終えたばかりなので、家の中も外観もまだとてもきれい。

建築、インテリア、内装、家具までナンシー派の芸術家たちが手掛けたという、いわば大規模なコラボ作品とも言えるお屋敷まるごとミュージアム。

入口入ってすぐに現れるのは優雅ならせん階段。奥に見えるステンドグラスはジャック・グリュベールによるもの。シャンデリアはマジョレルがグリュベールとドームの協力を得てデザインしたもの。

家の中央にあるのは喫煙室を兼ねたダイニングルーム。部屋の中央にある個性的なデザインの暖炉は、アレクサンドル・ビゴがデザイン。

このテーブルと椅子のセットもマジョレルがデザイン。サロンの暖炉の上のガラスは、ルイ・マジョレルの息子で画家のジャック・マジョレルが後に加えたものでオリジナルではないとか。
サンルームも素敵。
マジョレルデザインの寝室のベッドもとても個性的。

「これは機械ではとても作れないよなぁ…」としみじみ思う繊細な手仕事で埋め尽くされたナンシーでしか見られない貴重な建築遺産。

デリケートな空間を傷つけないよう、見学時には用意された靴カバーを装着する必要あり。高いヒールなどで行くと嫌がられると思うのでぜひぺたんこ靴で。

近くにはエミール・ガレなどの豊富なコレクションで知られるナンシー派美術館もあり、このマジョレル邸とのお得なチケットもスタンバイ。絶対両方見るのを強くおすすめします。

Villa Majorelle Google Map

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美しいアール・ヌーヴォー建築に彩られた世界遺産の街、フランス東部のナンシー。実は土日に訪れると、特にアート&建築ファンにはいいこと尽くしなのをご存知だろうか?

今回はたまたま土日に行っていろいろ得した私が、土日にナンシーを訪れるべき理由を紹介しよう。

1.土日はバスが無料

なんとナンシーは土日ならバスが無料。小さい町なので旧市街など人気エリアは徒歩で回れるが、次に紹介するジャン・プルーヴェ邸などは結構駅から離れているのでバス利用が必須。

アール・ヌーヴォー好きなら必見のナンシー派美術館も、駅から結構歩くしぜひバスで。

バス無料についての詳細はこちら(英語)。

2.ジャン・プルーヴェ自邸は土曜日のみ見学可能

ナンシー派の工芸家を父に持ち、この地で家具の製造を行うなど、ナンシーとゆかりの深いジャン・プルーヴェ。 2022年には「東京都現代美術館」で『ジャン・プルーヴェ展』が行われるなど、日本でも人気のデザイナーであり建築家である。

1954年に彼が建てた丘の上の自邸は、いまなお建築ファンに人気のスポット。1年のうち6月から9月までの土曜日のみ公開されている。家の中は現オーナーの私物などがあり建設当初の面影は薄いのが残念だが、丸窓の金属パネルなど、プルーヴェらしいデザインが残る外観などは貴重。

プルーヴェ自邸

詳細は公式サイトにて(英語)

ナンシー美術館のプルーヴェコーナー
ナンシー美術館には地元が誇るプルーヴェコーナーが。

なお、プルーヴェファンなら、世界遺産のスタニスラス広場に面するナンシー美術館に行くのもお忘れなく。美術館の一角には、プルーヴェコーナーがあり、彼が手掛けた家具などが展示されている。もちろんこの記事で紹介したドームのガラスコレクションなど他にも見るべき展示もいっぱいだ。
ナンシー美術館(公式)

3.日曜日は隣町にあるポンピドゥ・センター・メスへ

日曜日となると、レストランや店などが開いておらず、退屈しがちなフランスの町だが、それはナンシーも同じ。それなら日曜日でもオープンしている美術館を目指して、隣町のメス(Metz)まで電車に乗っておでかけしてみよう。駅前にどーんとそびえるポンピドゥ・センター・メスは、パリのポンピドゥ・センターの分館で、その建築は我らが坂茂が手掛けている。

メスはナンシーから電車でわずか40分程度しか離れていないのに、モダン建築に彩られた現代的な景観がナンシーとは対極。建築もさることながら、モダンアートの展示も素晴らしいので、ナンシーまで来たならぜひ一緒に巡ってほしいアートスポットだ。

ポンピドゥー・センター・メス(英語)

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