世界屈指の有名建築、ガウディのサグラダ・ファミリアを一目見に、いつかはバルセロナに行きたい!と思っているあなた。
もちろんサグラダ・ファミリアは文句なしに素晴らしいけれど、そこからわずか徒歩15分程度で行ける、もう一つの世界遺産をご存知だろうか。渋谷のスクランブル交差点かよ、と言いたくなるほど混んでいるサグラダ・ファミリアから移動すると、天国みたいに感じる、ガラガラの超穴場。それが、今回紹介する世界遺産、サン・パウ病院(Hospital de Sant Pau)である。

ガウディ建築と同じく、スペイン版アールヌーヴォーの「モデルニスモ」を代表する名建築は、「本当にここが病院だったの…?」と唖然としてしまう壮麗さ。ゆえに「世界一美しい病院」とも呼ばれることも多い。
今回はバルセロナ名建築めぐりレポート第一弾、サン・パウ病院を写真たっぷりでご紹介!
入場はラクラクだが、見学は大変な世界最大のモダニズム建築群
さて、さっそく病院の中へと足を踏み入れてみよう。サグラダ・ファミリアと違って、2週間ぐらい前にチケットを予約しておかないと見学できない!みたいな悲劇も起こらず、当日サクッと入場券が買えるので、ふと時間があいたら気楽に足を運べるのも嬉しい。
ただ、気軽なのはチケットの入手方法ぐらいで、見学となるとかなり大変である。というのもこの病院(跡)である「サン・パウ・モデルニスム区域」は、世界最大のモダニズム建築群。12もの建築が並び、その大きさはサグラダ・ファミリアの約12倍ともいわれている。

とにかく広大なので、見学にはせめて2時間程度は確保すべきだろう。私はこの時間配分を間違え、次の予定を入れてしまったので最後は駆け足に…。もっとゆっくり堪能したかったー!
では、早速、この病院がどれくらいゴージャスなのか、ばんばん写真で紹介していこう。







華麗で、濃密で、病院離れした建築が次から次へと現れる、目に入ってくる情報量がとにかく多く、めまいがしそうなサンパウ病院。2009年まで病院として現役で使われていたなんて信じられない…!
ガウディの師? 建築家・ドメネク・イ・モンタネールの代表作
さて、そもそもなぜこんなに豪華な病院が作られることになったのか。それは、設計した建築家ドメネク・イ・モンタネールの信念のため。
モンタネールはガウディの同時代人であり、かつガウディよりずっと早く名声を得たバルセロナを代表する建築家。なんと若干25歳で建築学校の教授に抜擢され、2歳年下のガウディを教えたこともある、いわば師のひとりでもあるのだ。今となってはガウディより知名度は劣るが、生前はガウディよりもずっと有名だったとか。
彼は、「芸術には人を癒やす力がある」と信じており、豊かな色彩のモザイクやステンドグラス、彫刻などの装飾、大きな窓から注ぐ自然光、心安らぐ庭園が、患者の回復への意欲を高めると考えていた。

特筆すべきは、地下トンネルでパビリオン同士を接続するシステムを採用したこと。これにより雨天の場合の移動を簡易にする効率性と地上部の景観維持を両立。美しいだけでなく機能面でも考え抜かれていたのだ。


もちろん大きな代償も払った。その一つが莫大な建築費だ。モザイクや彫刻、ステンドグラスなどに多額の費用がかかったため(当たり前だ)、当初の予算を大幅に超過、加えて建設期間も長期化した。1902年に着工した工事は、完成までに約30年かかり、モンタネール自身が1923年に死去したため、最後は彼の息子が引き継ぐ羽目に。
ガウディといい、カタルーニャの建築家は壮大すぎるヴィジョンを抱きがちなのだろうか……。
サンパウ病院の中で、最もゴージャスな管理事務分館
さて、広大な敷地を歩き回り、いくつもの建物を見て、疲れ果てた頃に現れるのが、見学コース最後の建物、「管理事務分館」である。もうライフはゼロよ…な状態のところでドーン!とすごいのをよこしてくる残酷さよ。しかし、いくら疲れ果てていようとも、この建物だけはスキップ禁止。まるで祭りの最後の打ち上げ花火のような、ハイライトともいえる空間だからだ。

ロビーに足を踏み入れると、鮮やかなピンクの天井がお出迎え。中央のヴォールトの四隅に描かれたシンボルは、バルセロナの紋章、カタルーニャの紋章、聖十字架と聖パウロなど。

圧倒されるのが、かつては病院の集会場だったという「ドメネク・イ・モンタネール・ホール」。天井の高さはなんと18メートル。木、モザイク、錬鉄、ステンドグラス、大理石など多種多様な素材で彩られ、ため息が出るほどの豪華さ。

そして廊下も見逃せない。美しいステンドグラスをあしらった窓からはサグラダ・ファミリアが見える。
「花の建築家」と呼ばれることもあったモンタネールならでは。天井や壁などには乙女ゴコロをくすぐる花モチーフもいっぱい。
講堂と呼ばれる部屋のユニークな天井の意匠は、スペインらしくムデハル様式にインスパイアされたもの。
とにかく前後左右、上下と首を忙しく回していないといけない、見どころが多すぎる建築。いやぁこんなん、そりゃ、予算もオーバーしますわね…。

サグラダ・ファミリアから直線距離で約1km、徒歩15分ほどで到着するサン・パウ病院。これだけの美しさなのに、いまいち知名度が低く見過ごされがちなのが本当にもったいない。ガウディと並び、バルセロナのアールヌーヴォーを代表する建築家、モンタネールの代表作、ぜひサグラダ・ファミリアとはしごすることを強くおすすめ!
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。