イギリスやフランス、北欧などに比べると、ぐっと物価が安いと言われているポルトガル。とはいえデフレ日本から旅した身としては、物価については正直日本と同じくらいかなーという印象。
特に着席していただくようなレストランは日本に比べると高めである。加えて、あまりレストランに一人で行く文化がないようで、一人旅のごはんをちゃんとした店で食べると寂しい気持ちになることも多い。
そんな私のような旅人にとって救世主とも言えるのが、立ち食いグルメ。今回は地元大学生に教わった、とっておきのポルトの安旨グルメをお届けしたい。
■ きっかけはポルトのフリーウォーキングツアー
年末だったせいか、ポルト歴史散歩というテーマの無料のウォーキングツアーの英語コースに参加したのは私と一組の夫婦(ポルトガル人の夫とスロバキア人の妻)の3人という小人数。ガイドをしてくれたのはポルト育ちの大学生女子である。
ツアーのスタートは午後4:00。およそ2時間で終わるので、夕飯前の軽い運動にもぴったりである。
ウォーキングツアーのテーマの歴史について、歩きながらざっくりと話を聞く。
「ポルトガルは第二次世界大戦中は中立国で戦禍を免れたとされているけれど、実は映画さながらのスパイ大国だったのよ。各国のスパイがこの国の中でさかんに諜報活動をしていたの。あと、歴史的にイギリスと仲が良く同盟国だったから、頼まれて兵も送っていて、それで6000人くらいの人が亡くなったのよ。こういう歴史は意外と知られていないかも」
一緒にツアーに参加していた夫妻の夫のほうは歴史ファンらしく、熱心に聞いている。そして私に向かって「そういえば、最近日本の歴史の本も読んだよ。東条英機っていうのは日本の独裁者だったの?」と聞かれて答えに詰まる。
「日本は歴史的に強力な独裁者が生まれにくくて、欧米諸国のリーダー並みの権限も彼は持っていなかったからいわゆる独裁者ではないと思う。個人よりも組織が優先され、最終的に責任の所在がわからなくなりがちなのが日本の体質であって…」みたいなこと、英語でうまく言えるはずがない。
■ ビール1本60円の揚げ物パラダイスから絶品豚肉のサンドイッチまで最強一人飯スポットがずらり
そんなことを話しているうちに日が暮れる。となると、ガイドの女子の話もだんだんと歴史より食べ物に傾いてくる。そりゃそうだろう。お腹が空く年頃である。
「そういえば、この近くにとーってもビールが安くておすすめのお店があるの!」と案内してくれたのが、観光客に大人気のレロ書店からも歩いてすぐの「Espaço 77」(地図)である。
「ここはなんと言ってもビールが安くて、小さいボトルなら50円くらいなのよ!」と言うと、歴史ファンの夫が、よし、それなら僕がみんなにごちそうしよう!と提案、まだツアーの途中だったが、しばしビール休憩することに。日本のウォーキングツアーだとまず無さそうな展開だが、こういうところも海外旅行の楽しさである。
どこの国も学生の推薦する店は安くて美味しいものである。この店はビールの小瓶が0.5ユーロ(約60円!)なのも素晴らしいけれど、カウンターに、ずらりとビール泥棒たちが並んでいるの点もしびれる。
ポルトガル名物の干し鱈のコロッケ、バスティシュ・デ・バカリャウやその他揚げ物がずらり。頼めばトースターでカリッと温めてくれたりして最高である。このメニューなら、ビール会社から褒められるくらいSUPER BOCKを売りまくるのも、そりゃ当然だろう。
ビールを飲んでしまってはずみがついたのか、さらにポルトの安旨グルメについて熱く語りだす女子大生。
「絶対に一度は試してもらいたいのがConga(地図)のビファーナね。とにかくポルトで一番の有名店よ」と案内してくれたのが、街の中心部の市庁舎すぐ近くにあるこちらの小さなお店。
「ビファーナはポルトガルの名物なの。すごおーーく薄く切った豚肉をスープで煮込んでとろとろにしてパンに挟むのよ。」とガイドさん。Congaは、サンドイッチを作る様子をガラス越しに眺められるようになっているので、てきぱきとサンドイッチが作られる様子を4人でしばし見学(?)。
この日は眺めただけだったのだが、後日もちろん食べに行った。
こちらがそのビファーナ。スパイシーなスープで煮込んだ豚肉は口に入れるとふわっと消えてなくなる、まるで飲み物のような柔らかさ。特注だというパンは、たっぷりのスープを吸いこんでもふんわり感を失わず、豚肉との相性もばっちり。正直信じられない旨さである。
訪れたのが旅の最終日の前日であることが悔やまれるばかり。もっと早く知っていたら毎日通ったのに!
このお店は、着席するレストランエリアと立ち食いエリアが別れていて、一人ご飯ならもちろんカウンターが気軽。SUPER BOCKを飲みながらビファーナを頬張っていると、カウンター越しにスタッフが美味しい? と声をかけてくれたりするのも楽しい。
ちなみにこのCongaの前には、これまたポルトガル名物の「ピリピリチキン」(グリルした鶏肉にたっぷりの唐辛子ソースをかけたスパイシーな一皿)のお店もあり、こちらもカウンターで一人飯が可能だそう。
「あと、おやつを一人でカウンターで食べたいなら、クレリゴス教会近くのマンテガリア(地図)もおすすめよ。ポルトガル名物のエッグタルト(パステル・デ・ナタ)の立ち食い専門店で、ポルトでは一番有名なお店なの。」
もちろん後日行った。マカオで食べたエッグタルトに比べるととてもあっさりしていて、朝ごはんにも良さそう。
最後に、私が個人的に見つけた一人ごはんにおすすめの立ち食いスポットもご紹介。
泊まっていた宿セリーナのすぐ近くにあった「Lareira」(地図)は、内装もかわいくメニューもおしゃれな小さな食堂。Espaço 77やCongaはちょっと男らしすぎて……という人にもおすすめだ。
店内には着席スペースもあるけれど、カウンター席もあり、さくっと立ち食いで食事を済ませ颯爽と去っていく人も多いお店。ポルトガル名物のタコ料理も一皿3.6ユーロ(430円程度)だし、グラスワインも1.6ユーロ(190程度)とお手頃。何より一皿の量が少なめなのが嬉しい。
ポルトガルの料理はとてつもなく量が多いので、こういうタパススタイルのお店は日本人の胃袋サイズにもうってつけかなと思う。
ポルトでは着席するようなちゃんとしたレストランにも行ったけれど、帰国してから思い出すのはこれらの安くて気軽なグルメばかり。このリストがあれば、女一人旅のごはんにも絶対困らない! と胸を張っておすすめできるお店リストが作れました。また行きたいな。
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