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ベルニーニとカラヴァッジョを見るなら唯一無二!ローマの至宝・ボルゲーゼ美術館へ【ヨーロッパ有名美術館めぐり】

ベルニーニとカラヴァッジョを見るなら唯一無二!ローマの至宝・ボルゲーゼ美術館へ【ヨーロッパ有名美術館めぐり】

ローマで最も有名な美術館といえば、間違いなくバチカン美術館だが、最もローマらしい美術館と聞かれれば、ここ、ボルゲーゼ美術館と答えたい。ローマをバロックの都に変えた巨匠・ベルニーニと、ローマで黄金期を迎えた初期バロックを代表する画家・カラヴァッジョの作品のコレクションでは世界屈指だからだ。

まずは「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」とまで言われる、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680年)の作品から見ていこう。

ベルニーニの超絶技巧が堪能できる圧倒的なコレクション

この美術館で、一番感動した作品は?と聞かれたら、まず挙げたいのがこちら。

アポロとダフネ(ベルニーニ)

アポロとダフネ
アポロとダフネ(1622-25)

アポロの執拗な追跡から逃れようと、ダフネが月桂樹に変身する瞬間を捉えたベルニーニ初期の傑作。まるでメタモルフォーゼに立ち会っているかのような圧倒的な臨場感。

ダフネの指先にいままさに作られる葉、風に揺れる髪、若い二人のつややかな肌……その繊細で超絶な技工には、変な言い方だが少女漫画的、宝塚的な華やかさを感じてしまう。

これらをみな大理石で表現したなんて…(絶句)。

足元からもぐんぐん根が!
アポロとダフネ
あまり見かけないアングルからみてもすごい。部屋の真ん中に設置されているから好きな角度で好きなだけ鑑賞できるのがいい。

この美術館の贅沢なところは、この部屋が「アポロとダフネ」だけに用意されていること。天井を見上げれば、「アポロとダフネ」の絵画があるなど、作品世界に没入できるようになっているのだ。

プロセルピナの略奪(ベルニーニ)

プロセルピナの略奪
プロセルピナの略奪(1621-22)

こちらもこの美術館屈指の有名作品で、冥界の神プルートがプロセルピナを誘拐する様子を描いている。プロセルピナの太ももに残るプルートの指の跡のリアルさよ…。

プロセルピナの略奪

この彫刻がある部屋は美術館の中でもひときわ広く豪華。もともとこの作品は、壁に取り付けられていたが、のちに部屋の中央に移され、今では観客が様々な角度から鑑賞できるようになっている。絢爛で装飾過多ともいえる濃密な空間にあっても、彫刻の力強さが全然負けていないのがすごい。

ダビデ像(ベルニーニ)

ベルニーニのダビデ ベルニーニのダビデダビデといえばミケランジェロが有名だが、実はベルニーニも彫っている。でもミケランジェロのそれと比べるといささか線が細いダビデである(というかミケランジェロ作品の男子は、彼の嗜好かもしれないが骨太でマッチョすぎませんかね…)。石を投げようと準備する際に、眉をひそめて集中しているちょっと神経質で繊細なダビデ。明らかにミケランジェロ作品に比べて「動的」で、さすがバロック。

シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の胸像(ベルニーニ)

ちなみにこちらがベルニーニ、ならびにカラヴァッジョのパトロンとして知られるシエナ出身の名門貴族、ボルゲーゼ家のシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿。母方の叔父がパウルス5世として教皇になった後に、わずか28歳で枢機卿になり、絶大な権力を持つとともに、美術コレクターとしても有名に。ベルニーニを早期に発見して支援したほか、カラヴァッジョ作品の豊富なコレクションで知られる。

世界で最もカラヴァッジョの作品が残るローマで、最も多くの作品を所蔵するボルゲーゼ美術館を築いた立役者。恰幅が良く、見るからに豊かそうだが、何かを言いたげな表情が気になる。

さて、お次はカラヴァッジョの有名作品を見ていこう。

「果物籠を持つ少年」「病めるバッカス」などカラヴァッジョ初期の作品も充実

果物籠を持つ少年(カラヴァッジョ)

1593-94年頃

いつも見ている山田五郎さんの「大人の教養講座」でもフィーチャーされていた妙に艶めかしい少年を描いた初期作品「果物籠を持つ少年」。まだカラヴァッジョがほとんど無名だった頃の貴重な作品である。

病めるバッカス(カラヴァッジョ)

1593-94年頃

バッカスの肌の青白さと熟れすぎた果物が、退廃的な腐敗感を醸し出す、こちらもカラヴァッジョの初期の作品。自分が病気になったときの自画像とも言われており、顔色の悪さが妙にリアルだ。「果物籠を持つ少年」も「病めるバッカス」も、元はカラヴァッジョの初期の雇い主であったジュゼッペ・チェザーリのコレクションだったが、後にシピオーネ枢機卿が1607年頃に取得。

こう書くと、カラヴァッジョが有名画家になってから後出しでシピオーネが作品を横取りしたかのように見えてしまうが、

聖アンナの老女ぶりがリアルすぎると当初の依頼主に受取拒否された「聖アンナと聖母子」を買いとってあげたのも彼である(詳しい理由は山田五郎さんの動画をチェック)。シピオーネ枢機卿だって立派なパトロンだったのだ。

 

書斎の聖ヒエロニムス(カラヴァッジョ)

書斎の聖ヒエロニムス
1605-1606年ごろ

カラヴァッジョのローマ時代最後期の作品。こののち、殺人を犯した彼はローマにいられなくなり、死ぬまで続く長い逃亡生活へと入る。なんか暗示的……。

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ゴリアテの首を持つダビデ(カラヴァッジョ)

1609~1610年ごろ。

力強い明暗対比がカラヴァッジョらしい、ゴリアテの斬首された首を持つダビデの絵。生首のモデルがカラヴァッジョ自身であることでも有名で、暴行やら殺人やらと、やたら素行が悪かった自分を貶めることで、シピオーネ枢機卿の許しを乞うために描かれたとも。

カラヴァッジョ最後の作品としても知られ、1610年、ついに彼は、まるでこの自画像が予言だったかのように命を落としたのだった。

もとはといえばシピオーネ枢機卿のコレクションのために建てられた邸宅だったボルゲーゼ美術館。フレスコ画、漆喰、モザイクで装飾された邸宅自体がいわば美術品でもあり、それを取り囲むボルゲーゼ公園もひたすら広大である。フィレンツェにおけるメディチ家を彷彿とさせる存在感を放つボルゲーゼ家の栄華と輝かしい美の遺産に触れられる史跡でもある。

観光客でごった返すトレビの泉付近とは違ってリラックスした雰囲気も癒やされるので、ぜひ足を運んでほしいアートスポットだ。

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