トリッププランナーで何度かご紹介している、ポルトガル第二の都市、ポルト。『魔女の宅急便』の舞台の一つとも言われているフォトジェニックな港町である。
主な観光名所はこの記事で紹介したので、今回は少しだけマニアックな、とはいえ、建築好きにはよく知られた名所を紹介したい。建築界のアカデミー賞と言われているプリツカー賞を受賞した、ポルトガルを代表する巨匠、アルヴァロ・シザの代表作の一つと言われている美術館は、アートと建築、そして森林浴まで楽しめてしまう、わりとおすすめのスポットなのだ。
■写真でたっぷり紹介、シザの名作「セラルヴェス現代美術館」
歴史ある町並みが印象深い、ポルトの町の中心部からバスで揺られること約30分、世界遺産・ポルト歴史地区に並ぶ建物とはまるで違った建築を見せてくれるのが、シザによる「セラルヴェス現代美術館」だ。
エントランスを入るとまず目に飛び込んでくるのが、柔らかい曲線と直線を組み合わせたシンプルな白い建物。まるで現代アートを包むシンプルなボックスのよう。この控えめな外観の中に、モダンアートが溢れていると思うとわくわく。
内部もまた、シンプル&かっこいい。控えめなトップライトが上品で、展示されるアートを最大限に引き立てようと一歩後ろに下がっているよう。
この美術館があるのは、 18 ヘクタールもの広さを誇る元は貴族の夏の別荘だったという広大な庭園。シザはこの美術館と公園との調和を重視しており、建築のところどころに、まるで額縁のように、美しい公園を切り取る印象深い窓を配置している。
なんだか日本のお寺の額縁庭園のよう、とも思ったが、窓によって風景を切り取る手法は、病気がちであまり外出できなかった子供の頃のシザの経験が影響しているとか。
私が訪れた日はたまたま草間彌生の展覧会を開催中。「ここまで来て何も日本人のアートを見なくても…」などとちらりと思ったが、シザの建築と草間彌生のコラボなんてここでしか(たぶん)体験できないので、むしろ贅沢な経験に。
さて、この美術館にはちょっとしたシザ特集コーナーもあり、彼が手がけた、建築模型、設計図、デッサンなどが、数部屋にわたって展示されている。シザマニア(どれくらいいるかは不明)必見の場所といえよう。
白くてシンプルな建築ばかり手がけてきたのかと思いきや、模型にはわりと挑戦的なものも多く、彼の作品をもっと見てみたいな…とさらに興味が湧いた。
微笑ましかったのは、落書きだらけの建築デッサンもちらほら見られたこと。巨匠、仕事に集中してくださいよ…。
広大な庭園とポルトガル屈指のアールデコ建築も必見
さて、この美術館のお楽しみはここだけでは終わらない。先程も触れたように、この美術館は広大な公園の中にあり、緑の中にはちらほらとアート作品が展示されている。いわば小型版彫刻の森美術館みたいなもので、森林浴とアート鑑賞が同時に楽しめる癒やしのスポットなのだ。
なかでも白眉は、1925 年から 1944 年にかけて建てられたポルトガルを代表するアールデコなお屋敷、「カサ デ セラルベス」。もとはフランス人建築家シャルル・シクリスと、ポルトのサン・ベント駅などを手がけたポルトガル人建築家ホセ・マルケス・ダ・シルバが設計し、修復をシザが監督している。
この建物も現在では展示空間として利用されているが、願わくば普通にただ建築だけ鑑賞させてほしかった。建築当初はルネ・ラリックなどの巨匠による家具や調度品があったそうだが、今はそれらはちりじりになってしまい、楽しめるのはドアノブや窓枠、階段の手すりなどの凝った装飾のみ。
モダンアートには申し訳ないが、個人的にアールデコなお屋敷が大好物なので、もっとそれらをゆっくり見せてほしかったなぁ。
邸宅の前にはフランス式庭園が広がり、まるでデイビット・ホックニーの絵のような色彩。
とにかく広いので、アート鑑賞して庭園をブラブラしただけで半日くらいすぐ終わってしまう。シザの美術館だけ見てさっと帰るにはおしすぎる名所である。
歴史を感じるポルトの中心部とはまた違った、モダンな現代建築と20世紀初頭のアールデコ建築、美しいフランス式庭園を堪能できる「セラルヴェス現代美術館」。アート好きならぜひ観光ルートに加えてみては?
<セラルヴェス現代美術館> Museu de Arte Contemporanea de Serralves
Rua D. Joao de Castro, 210 4150-417 Porto 公式サイト
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。