ポートワインや世界遺産の歴史ある町並みで有名なポルトガル第二の都市ポルト。このシックな街を拠点に羨ましいほど自由な働き方をしているITエンジニア、長澤光希さんにおすすめの観光ルートを教わりました。そのライフスタイルも含めて色々考えさせられるポルトガルの旅、まずは美しすぎる風景編です!
はじめてのポルトガルなのに、あえて首都リスボンではなくポルトを選んだのにはいくつか理由がある。
一人旅なのでなるべく徒歩で回れるサイズの都市にしたかったこと、年末年始のハイシーズンに探した格安航空券の値段がリスボンとポルトでは10万円くらい差があったこと(どちらもイスタンブール乗り換え)、オンライン英会話のポルトガル人の先生が「リスボンは大きすぎてちょっと騒がしいし、ポルトのほうが落ち着いていて治安もいいしおすすめ」とプッシュしてくれたこと、そして、この世界遺産の街で働く日本人ITエンジニアに会ってみたかったこと。
タスク管理アプリ「todoist」を提供するDoist社で日本人唯一のエンジニアとして働く長澤光希(ながさわひろき)さん。2017年にiOSエンジニアとして同社に採用され、以来、リモートワークが基本という、「これぞ働き方革命!」といったスタイルでポルトを拠点に仕事をしている。
「結婚するまでは週に2回くらいはオフィスで働いて、あとはカフェなどでリモートワークをしていましたが、結婚してからは家で働く日が増えました。今は会社に行くのは週に1回くらいですかね。なぜかというと週に1回までは昼食代を会社が出してくれるチームランチがあるんです(笑)。お寿司とか結構いい店にも行けたりするのでそれが楽しみで出勤しているようなもの。」
この他、年に一回のチームメンバーだけの開発合宿、年に一回の世界中にいる全社員が集まる社員旅行も会社の負担で楽しめるほか、ジム代なども補助されるという。だから「最近はジムにいって、併設のカフェで仕事をすることも多いですね」と笑う。
おかしいな、ポルトの街を案内してもらうはずが働き方に関する質問が止まらない。そんな奇跡みたいなライフスタイルを実現できる会社が世界にはあるのか……!
「創業者もまだ30代前半の若さで、今はバルセロナに住んでいるけど、将来的には奥さんの故郷のチリに引っ越す予定だとか。自ら率先して休暇をバンバンとるし休み中は連絡手段をシャットアウトするので下の人間も気を使わずに思い切り真似できて助かっています。
エンジニアをはじめ社内のメンバー全員は、次のサイクルでやることを提案でき、1ヶ月のサイクルごとにプロダクトチームとともに優先度を決めて開発を進めるスタイルで上下関係もありません。誰も勤怠管理なんかしていないけれど、 信頼関係で成り立っているので、基本的に今のやり方で会社は回っていますよ。」
日本でもリモートワークの導入が進んでいるが、監視ツール付きだったり日誌を書かされたりと、ここまで自由には働かせてもらえないように思う。
「ポルトは物価が安いし、治安もすごくいいし、人が優しいので住みやすいですね。少しルーズな面もあるけど慣れてしまうと時間がゆっくり感じられるし、のんびりしている人たちを眺めているとこちらものんびりできていい。差別も全然なく、若い人なら大抵は英語が通じるので日常生活にも特に不便はありません。」
■ ポルトに来たならまずは行くべき鉄板名所はここ!
さて、働き方を羨ましがるのもこのへんにして、さっそくポルトの街を地元民の視点で案内してもらおう。
「ポルトはとても小さい街なので基本的に徒歩で主だった名所は回れます。今日は世界遺産になっている『歴史地区』からスタートして、眺めが素晴らしい橋を渡り、ドウロ川沿いを歩いてみたいと思います」
壁面のアズレージョが美しく、インスタスポットにもなっているカルモ教会を横目に街歩きをスタートすると、何やら行列が。
こちらはポルトで英語教師として働いていたJ・Kローリングが、ハリー・ポッターの世界観のヒントにしたと言われているレロ書店。イギリスのガーディアン紙による〈世界の素晴らしい書店〉では第3位、ロンリープラネットの〈世界で最も素晴らしい本屋ランキング〉でも第3位にランクインしており、「世界で最も美しい書店」としてポルト屈指の観光名所になっている。
内部はこんな感じ。目の眩むような豪華さだが、とにかく人が多いので、写真撮影を目的に訪れるとタイミングが難しいかもしれない。純粋に空間を楽しみに行くのがいい場所のように思う。
そんな書店の前を数分歩くと現れるのが、ポルトいち高い塔を誇る「クレリゴス教会」。
「ポルトガルはカトリック教徒が圧倒的に多いというだけあって本当に教会が多いですね」
「データ的にはそうみたいですけれど、僕の周囲に関していえばそれほど人々は信心深くない印象です。教会なんて全然行かないよ、という人も結構いますね」
なるほど、意外と日本人に近い感覚かもしれない。
「それよりもみんなが熱心なのはサッカー。スポーツといえばサッカーしかないという感じで、大人の男性はほぼ全員サッカーができます。僕も週末に誘われて試合に参加したりもしていますが、のんびりしているポルトガル人なのにサッカーだけは本気で、熱くなって喧嘩になることも(笑)」
クレリゴス教会は有料で高い塔に登ることができ、ポルト1の高さから絶景を楽しむのもポルト観光の鉄板アクティビティの一つ。
さて、この塔からすぐの場所にあるのが、こちらも旅行誌Travel+Leisureによる「世界でもっとも美しい駅」のひとつに選出されたこともあるサン・ベント駅。余談だが、すぐ近くには「世界一美しいマクドナルド」なんてのもある。このアピール力の高さに、さすがポートワインで鳴らした商人の街、と思わなくもない。
圧巻なのは2万枚とも言われる駅内部を覆うアズレージョ。
ポルトガルを代表するアズレージョ画家、ジョルジュ・コラコによって描かれているのはポルトガルの歴史。これは確かに美しい駅だ……!
駅を利用する人よりも写真撮影に来ている観光客のほうが多い、ポルト屈指の名所の一つ。ぜひ記念撮影をしてみましょう。
サン・ベント駅からポートワインのセラーの並ぶガイア地区へ向けて歩き出すにあたり、途中ぜひ立ち寄って欲しい絶景名所がポルト大聖堂。
ドウロ川を見下ろす丘の上にあり、絶景が楽しめるほか、美しいアズレージョに彩られた回廊などもある建築名所でもある。
ポルト大聖堂からドウロ川を望む。
さあ、ここからはクラシカルな世界遺産の街から、美しい川の眺めがリゾート気分を盛り上げてくれるドウロ川沿岸へとスイッチを切り替え。地下鉄でも行けるけれど、あえて市民が大好きなドン・ルイス一世橋を歩いて渡るのがポイントだ。
こちらがみんな大好きドン・ルイス一世橋。旅行前の調査中にインスタを漁ってもやたらこの橋で記念撮影する人が多く、こんな近代的な橋がなぜ大人気……?と思っていたが、実はこの橋、ある意味「エッフェル塔」の親戚みたいなものという、かなりレアな建築名所だったのだ。
設計したのがギュスターヴ・エッフェルの弟子で、作られたのは1886年と130年以上も前! 言われてみればエッフェル塔とちょっと雰囲気が似ている気も。
橋の上からの眺めが最高ということで、よく晴れた日はごらんの賑わい。長澤さんも地元民ながら高さを堪能。
橋を渡れば、ポートワインの集積地「ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア」に到着。約60軒ものセラーが集まる、ワイン好きにはたまらないポルト屈指の名所で、セラー見学やテイスティングができるスポットもいっぱい。
ちなみに後日、ぶらぶら一人でここへきて、ワインセラーでワインをテインスティングして、美味しいフードコートで名物の子豚の丸焼きのサンドイッチを食べて川べりでボーッと過ごしてみたけれど最高だった。リゾート地に来たように何もしない休日を過ごしたい向きにもおすすめのエリアである。
ここから対岸の「ポルト歴史地区」の眺めは率直に言って絶景。昼間もいいけれど、感動を深めたいならぜひ夕暮れどきを狙って訪れてみて。
こんな絶景に出会えます!
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