レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「最後の晩餐」で有名なサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会や、ルネサンス絵画の宝庫「ブレラ絵画館」などで有名なアートの都、ミラノ。
そんな超有名アートスポットでの行列や人混みに疲れたら、ぜひ足を運んでほしいのが「ボスキ・ディ・ステファノ財団美術館」(Casa Museo Boschi Di Stefano)である。
ここは、ミラノの地下鉄M1号線のリマ駅(Lima)からすぐのアパートメントの一室を利用した小さな美術館。
ガイドブックにほとんど載らない知る人ぞ知るアートスポットで、私も実は泊まっていたホテルの付近で「museum」と検索して偶然見つけたクチ。
エンジニアのアントニオ・ボスキ氏(1896年 – 1988年)と彫刻を学んだマリエダ・ディ・ステファノ(1901年 – 1968年)夫妻が収集した2000点以上の20世紀のアートのうち、約300点を展示しており、入場は無料。夫妻が暮らしていた家を利用し、邸宅ミュージアムとして一般に開放している。
個人宅を利用したミュージアムの良い点は、オーナーがその絵をどんな空間に飾っていたのか、どんなセンスの持ち主だったのかに触れられる空間で鑑賞できること。
もともとあった場所から美術館などに「移築」された作品よりも、空間と作品がフィットしている感じがいい。襖絵は、襖の状態で畳や障子のある和室で見たい、という感覚とでも言えばいいのだろうか。
とはいえ、11の展示室の壁はアートで埋め尽くされており、さすがに当時の夫妻もこんなふうに飾っていたとは思えないが、彼らがこだわりぬいたインテリアとともにアート鑑賞できる贅沢さは、邸宅美術館ならではだ。
アートよりも家具や照明に興味が行きがちな私のような人間向けなのか、アートの解説はゼロなのに、家具や調度品の解説があちらこちらに配されている。裏の顔はインテリアミュージアムなのかもしれない。
たとえばこちらの抽象画が描かれたユニークなテーブルは、トリノ出身の建築家・デザイナーのジーノ・レヴィ・モンタルチーニ(Gino Levi-Montalcini )がデザインした1950年製。
緑色の吹きガラスのシャンデリアは、ベネチアのSALVIATI工房のもの。繊細な彫刻が施されたウォールナットのチェアは、建築家のピエロ・ポルタルッピ(Piero Portaluppi)がデザイン(1930年製)。
こちらのシャンデリアは、彫刻家、デザイナー、ガラス製造業の企業家でもあったナポレオーネ・マルティヌッツィ(Napoleone Martinuzzi )によるもの。
ユニークな浮き彫りを施したサイドボードは、画家、彫刻家、イラストレーター、デザイナーとして活躍したイタリアのモダニズムアーティスト、マリオ・シローニ(Mario Sironi)がデザイン。1936年製。
まさにイタリアのモダンリビングの宝庫! 国際家具見本市「ミラノサローネ」で有名なインテリアの都ならではのミュージアムなのだ。
展示室はそれぞれコンセプトがあり、風景画が集められていたり、
現代的な抽象画で埋め尽くされていたり。
その作品にマッチするように家具もセレクトされている印象。こういうミュージアムはなかなかない。
この美術館がある建物は、部屋の中にあった家具も手掛けていた、建築家のポルタルッピが設計。
1920年代のミラノの中流階級や上流階級の暮らしを今に伝える、アール・ヌーヴォースタイルの装飾が美しいアパートメント、ぜひ階段などの細部も鑑賞を。
Casa Museo Boschi Di Stefano
公式サイト:https://www.casamuseoboschidistefano.it/
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。