オペラ。日本人には敷居が高いイタリア生まれの舞台芸術。観るときはお高いチケット料金払った上に、イブニングドレスとか着て行く必要があるんでしょ? 知らんけど……状態だった私だが、ついにミラノで鑑賞デビュー!
チケット入手法やオペラの予習に役立ったサイト、現地での失敗談などをレポートします。
しかも、初体験の舞台は、恐れ多いことに、オペラファンの聖地であり「オペラの殿堂」、ミラノのスカラ座なのである。
■ ミラノのスカラ座、意外にもチケットが取りやすかったのはあの演目!
世界五大歌劇場のひとつ、スカラ座は1778年開場。ヴェルディの「オテロ」、プッチーニの「蝶々夫人」など名作の数々が、ここで初めて演じられたというイタリアが誇る格式高い劇場である。
実はオペラに興味を持ったのには理由がある。最近できたデンマーク人の友人が、事あるごとに「今度オペラに行こうよ」と誘ってくるからである。
そのテンションは、映画にでもいこうよ、よりは重みがあるが、日本でいえば「宝塚に行こうよ」くらいのノリ。私が抱いていたイメージよりもずっと、彼らヨーロッパ人にとってはオペラは身近な芸術なんだなと肌で感じ、ヨーロッパ好きとしては、そろそろ少しはお近づきになってもいいのでは……と思ったからだった。
そんな折、ミラノに行くことになったので、出来心でスカラ座の公式サイトを覗いてみれば、なんと翌日の公演でもまだ空きがあるではないか!
世界最高峰の劇場だから、チケットなんて数ヶ月前にソールドアウトなんでしょ、と思っていたが意外と気軽に行けそうだ。
しかし、鑑賞可能な演目は「I VESPRI SICILIANI」。ググっても日本語の解説が全く出てこない、わりと(日本人にとっては)ニッチな演目のようだ。「蝶々夫人」すら知らない私にとってはわけのわからなさ最高峰、といったタイトルである。
加えて、その日の早朝の飛行機で睡眠不足のままミラノ入りする私にとって、全5幕3時間半のオペラは少々長過ぎる。試しに他の演目も探してみたが、残念ながらそちらには空きがなかった。
ということで、ただでさえ素養がないのに、日本語で情報収集するのが大変難しそうな演目の天井桟敷席(ガッレリア席)を仕方なくポチッ。料金は50ユーロ。予習は購入後おっかけやる算段である。
■ オペラ鑑賞の前に1日でやった付け焼き刃の予習いろいろ
チケットを購入してからまず私がやったのは以下の予習である。鑑賞までに1日しかないので入門書などを読む時間もなく、恥ずかしいくらいの付け焼き刃だが何かの参考になればと思い、メモしておく。
まず、そもそもオペラって何よ?という状態だったので、車田和寿さんのYoutubeチャンネルで「【オペラ解説】オペラって何?オペラの魅力と特徴、オペラに登場する基礎用語をプロが解説!」を鑑賞(わかりやすくておすすめ)。
その後、「I VESPRI SICILIANI」は日本語でいうと「シチリアの晩鐘」とわかったので、関連する歴史をWikipediaでチェック。イタリアの複雑な歴史の概要は知っていたが、こんなすごい大事件のこと、今まで知らなかったわ……。
ありがたいことにWikipediaにはヴェルディ作のこの歌劇のあらすじも載っておりこれがとっても役に立った。また、テノール歌手 高梨英次郎さんの「オペラざっくり解説:ヴェルディ「シチリアの晩鐘」は、このオペラが生まれた背景も含めた総合解説になっておりおすすめ。しかし、高尚な芸術だと身構えていたけど、やや展開が韓流ドラマっぽい……。
天井桟敷席の服装はカジュアルでいいということなので、さすがにジーンズなどは避けるにせよ、東京のOLの通勤着ぐらいの服装で決め、いよいよスカラ座へゴー!
■ オペラ鑑賞初心者、いろいろやらかす。
オンラインで購入したチケットがダウンロードされたiPhoneを握りしめ、着飾った紳士淑女たちで賑わうオペラ座の入り口へ。行列に並んだのち、係員にチケットを見せると、「あ、このチケットの入口はここじゃないです」と入店拒否(?)。
安いガッレリア席(天井桟敷席)は、そもそも入り口からして場所が違うのであった……!(ひとつめのやらかし)
教えてもらった入り口から自分の席までは階段を5階分くらい上がらねばならない。その階段も特にゴージャスではなく、普通のビルの階段みたいな味気ないもの。
息を切らし、ガッレリア席の階に到着するも、劇場が巨大すぎて、自分の席がそもそもどこらへんか見当もつかない。入り口にいたスタッフにチケットを見せて席まで案内してもらった。
そして、地味な階段空間をよじ登ってきた私の前に現れたのは……
豪華絢爛な劇場♡
滑り出しはややしくじったが、このゴージャス空間にはやはり心踊る。
やれやれと着席したものの、着込んできたロングコートやマフラーなどの置き場所に困る。周りを見回すとなぜかみんな軽装である。
あとでわかったのだが、座席の場所を教えてもらうのに必死で、荷物をクロークに預けられることに気づかず席まで来てしまったのであった(2つめのやらかし)。
でももう時間がないので、コート類を膝に抱えたままオペラ鑑賞スタート。
あらすじを頭に叩き込んでおいたので、だいたいの展開にはついていけたが、ところどころどうしてもわからないときは座席前の字幕をチェックした。
はじめてのオペラ鑑賞だが、恐れていたような「何がなんだかわからん!」とはならず、結構楽しめた。この演目しか観てないから知らないけれど、クラシカルな舞台を予想していたので、モノトーンでまとめた衣装など、かなりモダンな印象の演出が意外でもあった(Youtubeで一部紹介されている ので、気になる方はやや前衛ともいえる演出の一部をご覧ください)。
何より、これほど巨大な劇場のすみずみまで、これほどの明瞭さで、人間の声がマイク無しに届くことにシンプルに感動。
初心者なので休憩時間にラウンジでカクテル……などのやり方がよくわからず、みんながさっと消えた劇場の席にひとりぽつんと所在なく座っていたりもしたけれど(3つめのやらかし?)、初めてのオペラ鑑賞、無事終了。
そんなに気負わなくても、要するに歌と踊りと音楽の夕べなのだ。普通に考えれば楽しめて当たり前なのだ。
オペラが終わったあとは、桟敷席の人間もボックス席の人間もみな平等に外へ。その際に、入るときははじかれた華麗なロビーもチラ見。次はちょっと着飾って、コートをクロークに預けて、休憩時間にカクテルとか飲んだりする、オペラ鑑賞っぽいこともしてみたいわ…。
<ミラノスカラ座 Museo Teatrale alla Scala>
ミラノ随一の人気スポット、「ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア」すぐ隣。
公式サイト(英語版) https://www.teatroallascala.org/en/index.html
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。