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人の手によって続く場所。「池ケ原湿原」&飛騨みやがわ「種蔵地区」【飛騨市めぐり旅】

人の手によって続く場所。「池ケ原湿原」&飛騨みやがわ「種蔵地区」【飛騨市めぐり旅】

岐阜県文化圏は、大きく飛騨地方と美濃地方に分かれています。飛騨地方で有名な場所と言えば、飛騨高山に下呂温泉、白川郷あたりではないでしょうか。これらが「ドA級観光地」とするなら、「普通のA級観光地」に値する飛騨の有名な場所は、飛騨古川。映画『君の名は。』のモデル地とされています。

飛騨古川を有するのは、平成の市町村合併で生まれた「飛騨市」です。旧古川町、河合村、宮川村、神岡町の4つの町村からうまれました。今回は、そのうち、旧古川町、河合村、宮川村を巡るツアーに参加。山間の豊かな文化に触れてきた。訪れたスポットを順次紹介します。

今回ご紹介するのは、旧宮川村エリアにある池ケ原湿原と種蔵集落。自然も集落も、人の手によって、未来へ続いていることを感じさせてくれる場所でした。

車いすやベビーカーでも散策できる「池ヶ原湿原」

県立自然公園内に位置する池ヶ原湿原は、春のミズバショウが有名なスポット。駐車場からすぐの場所にあり、カジュアルに自然に親しむことができます。

今回、池ヶ原湿原自然保護センターの所長、岩佐勝美先生によると、もともとは葦が広がってしまっていたところを、長年手をかけて今の美しい状態にまで復活させたのだとか。

そのなかで遊歩道も整備し、車いすやベビーカーでも散策可能な遊歩道も整備。多くの人が訪れることができるようにしたそうです。

春はミズバショウが広がる湿地ですが、夏は濃淡さまざまな緑の世界が広がります。写真の中心には整備された遊歩道。日差しは強くとも、湿地なので地面からの照り返しは強くありません。緑に囲まれて歩く時間は、とても贅沢に感じられました!

ちらほらと花の姿も。ひっそりと咲く野花菖蒲やカキツバタがを探して歩くのは、なかなか新鮮な体験。「これは何?」「あれは何?」とどんな質問をしても、先生が次々と教えてくれます。先生の知識の深さにも感動です!

湿地には、人間だけでなく動物も訪れます。ところどころ置かれているカンカンは、クマよけのアイテム。通るたびに叩くといいそうで、エンタメ気分で叩いて歩いてしまいました。

ただ、湿地の中にはところどころ、なにやら盛大に掘り返されたような跡。これはなにかというと……。

イノシシがミズバショウの根っこを食べるために、掘り返した跡なのだそう! どうやらイノシシにとって、ミズバショウの根っこは美味な食材。あちこち遠慮なく掘り返えされており、痛ましい状態に。沼の土まであらわになった様子に、動物の被害の大きさを感じさせました。

また、獣害だけでなく、近年の積雪量の低下など気候変動の影響もあり、日々湿地を守るために様々な試行錯誤をされているのだそう。自然=放置かと思っていましたが、この美しい景色は、人々の手によって維持されているのですね。

ぐるりと湿原を歩いたあとには、先生から講義の時間。子どもたちが作ったこの沼にいた地元に伝わる話を使ったカレンダーを見せてくれたり、動物のツノや牙を見せてくれたりと、先生のリュックには小道具いっぱい! 楽しいお話を聞かせてもらえました。

ちなみに、秋の湿原もまた美しい景色が広がると言います。駐車場からすぐとカジュアルに訪れることができる場所だからこそ、ぜひ、四季の変化を眺めに訪れてみてくださいね。

【施設情報】
池ヶ原湿原
岐阜県飛騨市宮川町洞

誰でも村民になれる!? 棚田と板倉が残る種蔵地区へ

人の手が守り、受け継いでいる場所が他にもあります。それが種蔵地区です。石積みの棚田のなかに、民家のほか、伝統的な建築物である板でつくられた蔵=板倉が建っており、のんびりとした田舎の原風景が広がります。でも、ここの魅力は風景だけじゃないんです!

例えば、プレスツアーで食事のために訪れたTANEKURAHOUSE。数年前まで実際に人が住んでいた民家で。雪深い地域の民家に触れることができます。

玄関を入ると、赤×黒がかわいいお馬さんが描かれた絵馬が! 飛騨エリアで何度かみかけたこのデザイン。中には走っているお馬さんの絵の場合もあるのだそう。いつか、このお札を求めて飛騨の神社巡り旅行がしたいくらい、かわいい!

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室内には大きなお札を貼る板?が。かつて、囲炉裏があった部屋に飾られていたのではないかということで、板地は黒くすすけており、かつて張られていたお札の痕跡がくっきり。剥がし残されたお札のイラストも気になるところ。かわいい!(2回目)

人がいなくなった家は手入れをしないと朽ちていきますが、今回のランチのようにイベントなどで活用することで、人が暮らしていた痕跡がそのままに、未来へと繋がっていくのですね。

さらに建物から外へでると、棚田と板倉の風景が広がります。BGMは木々のさざめきや水のせせらぎ、そして鳥や虫の声。そして、時折集落内に響きわたる「星のオルゴール」が、不思議な気分にさせてくれます。

遠目にみると、どの蔵も同じに見えますが、近づくとディテールがそれぞれ異なります。

心ときめいたのが、お金持ちさん所有だったという板倉。入り口には、縁起物である巾着袋のデザインが施された鍵穴がありました。巾着なのに、かわいい女の子にもみえます。つまりは、かわいいんです!

しかも、この鍵穴は2つあり、片方はフェイクになっているのだとか。木をくわえている部分がホンモノの鍵穴なのだそうです。こんなオシャレな鍵を施すなんて、種蔵の人はおしゃれですよね。かわいい!

もうひとつの見どころは、農林水産省が選定する「つなぐ棚田遺産」や環境省が選定する「全国かおり風景100選」にも選ばれている棚田です。この石積みは、石工さんではなく、種蔵の人たちが昭和初期に自らの手で作り上げたもの。地域の歴史の一部なのですね。

この日は炎天下でしたが、日差しに負けないくらいアツい先生の解説をきいて、この地域を育んできた人たちの気持ちや歴史に、少し思いを馳せることができました。ありがとうございました!

ちなみに、この種蔵では景観保全活動に参加したい人なら誰でも村民になれる「飛騨市ふるさと種蔵村」という活動が行われています。オリジナル住民票が交付されるほか、様々な活動に参加することで、特産品などがいただけるのだそう。興味ある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

自然も文化も、手が入ることで残り続ける

飛騨市に残る豊富な自然や日本の原風景。それらは、人の手を掛けることで美しい状態に保たれていました。きっとこれからも、この地域を愛する人たちの手によって守られていくはず。そんな明るい未来を感じるスポットの、また今回とは違う景色を求めて、春や秋にも訪れてみたいですね。

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