まさか、イタリアの山岳地帯ドロミテのトレッキングよりも、ベネチア街歩きのほうが辛いなんて想像もしなかった……。
運河が張り巡らされた唯一無二の風景が人気の水の都、ヴェネチア。東京ディズニーシーみたいなところでしょ?ぐらいの知識で行くと痛い目に合うので、実際に街歩きで足が死んだ私が、ベネチア観光のリアルをお届けします。
知ってる?タクシー禁止で歩くしか無い島ルール
私は今回が初めてのベネチア。予備知識は、「運河が張り巡らされた風景が旅情を誘う水の都」ぐらいであった。
しかし、実際に行って少し歩いて痛感したのだった。この街の水上交通オンリーのルールはガチ!
ベネチアの玄関口、国鉄サンタ・ルチア駅を降りると、まず目に飛び込んでくるのはこちらの大運河。
「ええ、駅前からいきなり水辺!?♡」と誰もが心踊るが、このときめきは、街歩きをはじめて30分もすると困惑に変わる。
駅から海側に大運河を渡り、少し歩けばすぐ小運河だ。あなたは浮かれてTHEベネチアな風景を写真におさめ、小さな橋を渡って向こう岸に渡る。
少し歩けばまた小運河だ。「どこもかしこもフォトジェニックだわぁ」などと思いながらうきうきと橋を渡り、次のブロックへ。
ええっと……
待って……!
想像以上に運河が張り巡らされているんですけど!!!
もちろんベネチアが水の都だということは知っていたけど、ここまでとは想像以上。感覚的には、東京で言えば、普通の小道が全部運河みたいなイメージである。その度に太鼓橋的なものを渡らなければならないので、大体1時間も歩くと足が死ぬ。
私はベネチアの前に標高2000m超えのドロミテの山でトレッキングを楽しんできたのだが、あちらは頂上までケーブルカーで行けたし、登山道はばっちり整備されていたので、正直言って、ベネチア街歩きより数倍楽であった。
「バリアフリー、何それおいしいの?」と完全に割り切っているかのような水の都。21世紀になってもなお、この不便極まりない環境を頑なに変えないなんて……その意固地さ(なのか?)に驚愕するとともに、もし運河を埋めて道路でも作ろうものなら、これほどの世界的観光地にはならなかっただろうとも思う。
重いスーツケースを抱えて旅する人は、雰囲気はいまいちでも絶対、サンタ・ルチア駅周辺の宿を押さえることを強くすすめたい。
ベネチアで歩きたくない人のための3つの交通手段
ベネチアは国鉄の駅より南側は車の乗り入れ禁止なので、疲れ果ててもタクシーを拾うことができない。
直線距離で100mの場所へ行こうとしても水に阻まれ、迂回して橋を渡らねばならぬため、その5倍は歩かないとたどり着けない、といった過酷さを覚悟していくべき場所なのだ。
とはいえ、歩く以外の方法もなくはないので、ここでは代表的な3つの水上交通手段を紹介したい。
1.ヴァポレット(vaporetto)
ベネチアの唯一の公共交通機関と言える水上バス。サンタ・ルチア駅からサンマルコ広場まで直接行きたい場合や、近隣の島巡りなどでは便利そうだが、75分間有効の切符が9.5ユーロ(今の為替だと1,500円くらい)と結構なお値段だし、小さな島の中をちょっと移動したいだけなら使う理由はあんまりなさそう(停留所から結局歩かなきゃいけないので辛さがあまり変わらないケースも多い)。24時間や48時間パスもあるので何度も使う人はそれを買ったほうがオトク。
2.ゴンドラ
ベネチアといえばゴンドラクルーズでしょ!と思いがちだが、これは乗ることそのものがアトラクションの船。島内を歩いているとあちこちに乗り場があるが、30分80ユーロ〜100ユーロぐらいと完全にハネムーン価格。移動手段としては論外!
3. トラゲット(Traghetto)
これはいわゆる渡し船。数は多くないが、「Tragetto」の看板を掲げた乗り場が島内にいくつかある。こちらは一見するとゴンドラとほぼ同じ船なのになんと片道2ユーロ程度。私はサン・マルコ広場から現代アートの美術館ブンタ・デッラ・ドガーナに移動する手段として利用した。
ちなみに乗船時間はほぼ3分程度だった。歩いたら片道45分はかかりそうなんで超おすすめ。ワンコインで「ベネチアでゴンドラに乗った」思い出もゲットできるぞ!
2024年春から日帰り客を対象に島内への入場料(5ユーロ程度)を徴収することが決まったベネチア。
オーバーツーリズム対策ということだが、個人的には老人や足の弱い人は避けるようにアナウンスするのも観光客抑制に効果があるのでは? と思ったのだった。
行く人はくれぐれも歩きやすい靴で!
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。