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死ぬまでに見たい名建築、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」に行ってきた。

死ぬまでに見たい名建築、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」に行ってきた。

ロンシャン礼拝堂

最近の旅のマイブームとして、一つしか見るものがない場所へ行く、というのがある。
ほら、パリとかフィレンツェとか名所旧跡が多すぎる観光地って、あっちだこっちだ!ってつい忙しくなっちゃうでしょう? それがもう、トシのせいか、疲れてきちゃったんですよね…。

というわけで、今回は正真正銘のワンテーマ(しかない)なスポット、フランスのロンシャンに行って参りました!

■ロンシャンといえばのコルビジェの世界遺産

建築好きの人なら、ロンシャンと聞けば、すぐこの不思議な形の建築が思い浮かぶはず。

ロンシャン礼拝堂
1955年竣工。2016年、ユネスコの世界文化遺産に登録された。

これはフランスの建築家、ル・コルビュジェ(1887-1965)が設計したロンシャン礼拝堂。フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエとともに「近代建築の三大巨匠」の一人に数えられる彼の晩年の傑作だ。

コルビュジェといえば、アール・ヌーヴォーやらアール・デコやら、やたら装飾的だった建築が主流だった時代に、直線的で機能的な、むしろ今の我々が慣れ親しんだスタイルの建築を確立させた、モダニズム建築の父、というイメージが強い。

たとえばこの、ユニテ・ダビタシオンなんかが典型だ。

ユニテ・ダビタシオン
マルセイユにある日本の団地の元祖?とも噂される、ユニテ・ダビタシオン。

それが、どうした? コルビュジェ…?
かっちりきっかり、機械のような直線が好きじゃなかったのか?

……と建築雑誌でひと目見たときから心つかまれ、以来、死ぬまでには絶対に見に行こう、と決めていた場所、それがこのロンシャン礼拝堂なのだ。

■  ロンシャン礼拝堂きっかけにプランした、フランス・スイス名建築巡礼の旅。

で、このロンシャン礼拝堂だが、地図で見るとこんな場所にある。

緑一色の地図から、このあたりが完璧な田園地帯であることがわかる。かんたんにいうとド田舎なのである。

一番近い大きめの都市をGoogle Mapで探してみれば、なんとスイスのバーゼルになってしまうではないか。そう、ここはフランスとはいえ、ほとんどスイスといったエリアなのだ。

バーゼルは建築好きの聖地と言われる「ヴィトラ・キャンパス」の拠点となる街だし、ついでに一緒に回るのも悪くないかもしれない。フランスのド田舎つながりで、ロンシャン礼拝堂と同じクチュリエ神父が依頼した「ラ・トゥーレット修道院」まで思い切って足を伸ばしてしまおうか……。

などと考えた私が作った旅程はこちら。

<1日目> リヨンに入り、「ラ・トゥーレット修道院」宿泊。※なんとここは泊まれる世界遺産。詳細はこちら。
<2日目> 「ラ・トゥーレット修道院」から列車で約5時間ちょっとかけて「ロンシャン礼拝堂」へ。見学後、列車で約2時間のバーゼル泊。
<3日目> バーゼルからバスでヴィトラ・キャンパスへ。バーゼル泊。訪問レポートはこちら
<4日目> バーゼルからチューリッヒに移動して飛行機で出国

えーと…、これは建築学科の学生の就学旅行ですか?

という3泊4日の旅プラン。詰め込みすぎや!
忙しい旅に疲れたって冒頭で言ってなかったっけ?

話をロンシャン礼拝堂に戻そう。

この礼拝堂への最寄り駅はRomchamp。ここがまた、急行が止まらない無人駅で、しかも電車の本数もごくごく少なく、事前に相当な準備をしないと時間のロスが激しく、下手をすればたどり着かない…という声がネットで多数の、行き方の難易度の高い駅なのだ。

でも、心配ご無用!

フランスの国鉄SNCFが作ったスマホアプリがあれば、自分が乗る駅と降りる駅で検索すれば、一番乗り継ぎがいい便を一発検索。日本でよくある乗り換え案内アプリとほぼ同じ使い勝手で英語OK。良いルートが見つかったら同じ画面で切符をかんたんに買えてクレジットカード決済、発券もスマホで完結する。

フランス語がわからないのに窓口で切符を買わなければならなかった頃はえらい大変だった鉄道の旅が、こんなに簡単になるとは……ありがとうテクノロジー!

sncfアプリ
フランス鉄道の旅をするならマストでダウンロードすべきアプリ、SNCF Connect.

このアプリがあれば、自分が今どのあたりを走っているのかもわかるし、乗るべきプラットフォームの番号も、乗り継ぎ時間も教えてくれ、列車に遅れが出れば最新の時間で表示してくれる。日本の新幹線の予約サイト等の使いにくさを知っている身からすると、神レベルの使い勝手。IT後進国の日本、もっと頑張れ……。

というわけで、わりと難なくロンシャン駅に到着。しかし、実はここからが予想外に難易度が高かったのだ。

■ロンシャン駅に着く前に絶対にしておくべきこと

覚悟していたが、駅は緑生い茂る小山の上にあり、周囲には何もない。私が行ったのは2022年の7月下旬。もうバリバリに暑い時期である。

ロンシャン駅

この日、駅を降りたのは私一人。建築ファンの聖地だからもっと巡礼者がいるかと思ったのに…心細すぎる。

駅の前の風景はこんな感じでただの自然。「Chapelle Notre Dame du Haut」の看板があるのは、おそらくこの駅で降りる人の大半がここを目指しているからなのだろう。通称ロンシャンの礼拝堂の正式名称は「ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂」なのだ。

ロンシャン礼拝堂に向けて駅から少し歩くとこんな風景に変わるので、一瞬、「おお、街だ!」と喜ぶものの、残念ながら店らしい店はほぼゼロ。小さなスーパーぐらいはあるだろう、とタカをくくっていたがものの見事に何もない。そして私は、このクソ暑いのに水を持参していなかったのだ。

やっと一軒の薬局を見つけ、水を求めて入店してみたら、すでに先客のカップルがいて私と同じく水を所望していた。店主の答えはノーである。……マジか……。

駅からロンシャンの礼拝堂までは徒歩約30分ほど。もちろんタクシーもバスも見当たらないので歩くしかない。

見て、この乾ききった山道。

灼熱の中、熱中症の恐怖と戦いながら山道をひたすら歩く。これはなかなかドキドキした。もしここで倒れても、こんな辺鄙な山道では誰も見つけてくれなそうである。
これからロンシャン礼拝堂に行く人は、絶対に軽いスナックと水はどこかの街で買っておくことを強くおすすめする。

■ ロンシャン礼拝堂、まずは彫刻的な外観を堪能……のはずが!

山道をひたすら歩き続け、ついに目の前に近代的な建物が!

そう、ここはロンシャン礼拝堂の正門であり案内所。や、やっと着いたぞ〜助かった……。

ちなみにこの建物はレンゾ・ピアノ設計。

ここで入場料を払えば、いよいよあのコルビュジェ晩年の傑作を目にすることができるのだ。ちなみに水も売っている(到着後すぐ買ってがぶ飲みした)。

しかし。胸を踊らせ、礼拝堂のある丘へ向かって歩き出した私の視界に飛び込んできたのは……。

えええーーーー工事中!(号泣)

みなさん、どこかに行くときは必ず公式サイトをすみずみまでチェックするようにしましょう。2024年まで修復工事中のアナウンス、完全に見落としていた……。

気を取り直して、工事していない部分の外観をとりあえず見学。

ロンシャン礼拝堂この角度からの礼拝堂も悪くない

モダニズムがにじみ出る階段エリア。
ロンシャン礼拝堂
見る角度によって驚くほど表情を変える巨匠の名作。
ロンシャン礼拝堂
個人的には裏側から見たこの外観がツボ。ゾウの鼻みたいな形の雨樋の面白さよ。手前にあるオブジェみたいなものは雨水をためる水槽だそう。

■ いよいよ内部を見学。多数の窓が並ぶ有名な「光の壁」へ。

外観をあらゆる角度から鑑賞し、満喫したあとは、いよいよ礼拝堂の中へ。

いっそ「かわいらしい」とさえ言ってしまいたくなる、マッシュルームみたいな外観からは想像できないほど、おごそかで神秘的な空間が現れる。

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色とりどりの光に満ちた空間を生み出しているのは、壁一面に穿たれた様々な大きさの窓。カラフルなステンドグラスが埋め込まれており、祈りの空間を美しく照らしている。

受付でもらったリーフレットによれば、壁には、第二次世界大戦で破壊された旧礼拝堂の石が使用されているとか。

この礼拝堂は、ローマ時代の1世紀頃にすでに聖域があったと言われるスピリチュアルな場所に建つ。1092年にはすでに教会があったとされ、その後荒れ果てるも1843年に再建。しかし、第二次大戦中の1944年、ドイツ占領からのフランス開放時に破壊されてしまったのだ。

そんな歴史もこの礼拝堂は各所で継承している。

たとえば、写真右のマリア像は、18世紀の旧礼拝堂にあったものだ。

また、内部にある3つの小礼拝堂の一つの壁は赤く塗られ、キリストの磔刑と1944年に亡くなった兵士の両方を表しているとか。

外の明るさによって、表情を変える内部空間。

ベンチや祭壇、十字架や燭台など、ほぼすべてをルコルビュジェがデザインした幻想的な祈りの空間。四角い箱のような建築を数多く手掛けてきた彼が、60代も終わりになって、絵を描くように、彫刻を彫るように作ったアートのような作品。私にはそう思えてならなかった。

■ 建築ファンにはたまらない、礼拝堂以外の見どころ

さて、コルビュジェによる礼拝堂を出て、広大な敷地を歩いてみよう。ちらほらと有名建築家やデザイナーの作品があるのでお見逃しなく。

ジャン・プルーヴェの鐘楼

たとえばこちらの鐘楼は、2022年夏に日本の東京都現代美術館で行われた展覧会も記憶に新しいジャン・プルーヴェによるもの。ここでも1944年の爆撃を生き延びた鐘が使われている。

平和のピラミッド
1944年のフランス解放時の戦闘で犠牲になった人たちを弔うために建てられた「平和のピラミッド」。ル・コルビュジェの助手のアンドレ・メゾニエがデザイン。

丘を下ったところには、コルビュジェ設計の「巡礼者の家」もある。

もとは礼拝堂の建設労働者の住まいで、竣工後は巡礼者などが滞在する場所だった。

建物の前にはベンチがあり、そこから見下ろすロンシャンの風景もまた素晴らしい。

礼拝堂再建の依頼を受けて、この地を訪れたコルビュジェはその風景に感動したのだとか。

さらに丘を下ると、レンゾ・ピアノ設計の「聖クララ修道院と礼拝堂」(2011年)がある。日本だと関空や銀座のメゾン・エルメスを設計したことで知られ、世界ではポンピドゥー・センターなど超有名作品を多数手掛ける現代イタリアを代表する建築家だ。

ロンシャン礼拝堂の案内書
丘に半分埋まっているから、コルビュジェによる礼拝堂からは見えないのだとか。
壁の大きな十字架は1417年にスペインの説教者からもたらされたもの。

一部工事中なのが残念ではあったが、十分に楽しめたロンシャン礼拝堂。晩年になり、自らが打ち立てた「近代建築の五原則」とは全く異なるものを作った彼の、複雑な心の内側に分け入ったような気持ちになれた訪問だった。

<ロンシャン礼拝堂:正式名称 ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂>
Chapelle Notre-Dame du Haut
13 Rue de la Chapelle, 70250 Ronchamp

公式サイト(日本語)※サイトには事前予約が必要そうなことが書いてありますが必要ないです。

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スイスのバーゼルに行くなら…。
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