長年、機会があれば一度は行きたいと思っていた、ヴィトラ・キャンパス(Vitra Campus)。スター建築家の作品が他に類を見ないレベルで集まっているだけでなく、世界屈指のデザイン博物館もあるデザイン&建築好きの聖地だ。
場所は、スイスのバーゼル郊外、ドイツ側に少し入ったヴァイル・アム・ライン(ドイツ語: Weil am Rhein)というエリア。こんな場所に行く機会などあるだろうか、いやない……ということで、このためだけにスイスに行ってきました!!
バーゼルのクララプラッツ(クララ広場)から出発する55番のバスに揺られること約20分、ヴィトラキャンパスの入り口にあるバス停に到着。
シンプル&クールなバス停のデザインを手がけたのはジャスパー・モリソン。どんな細部も抜かりなく美しくしたいヴィトラの偏執的とも言える美意識の高さに触れるファーストステップである。
ヴィトラキャンパスは、無料で鑑賞できるエリアと、建築ツアーなどに参加しないと鑑賞できないエリアに別れているのだが、まず無料エリアで訪れる人を迎えてくれるのは、フランク・ゲーリーのヨーロッパ初となる建築、「ヴィトラ・デザイン・ミュージアム」。ヴィトラキャンパスのアイコンとも言える、世界屈指の名建築だ。
まだコンピュータによる高度な設計ができなかった時代に、こんなめんどくさそうな造形を実現してしまうのがすごい。
さて、まだまだ無料エリアのお楽しみは続く。お次は、バーゼル出身のヘルツォーク&ド・ムーロンが設計したヴィトラの旗艦店「ヴィトラ・ハウス」だ。
ここは私の経験上では、間違いなく世界で一番美しいインテリアショップ。建築、インテリア、並んでいる商品、そして窓の外の眺めまで、もうパーフェクトな美。
窓の外に広がるいかにもヨーロッパの田舎町といった緑豊かな丘とモダンデザインの競演。素敵すぎる……。
別の方向を目を向ければ、眼科に広がるのはオランダが誇る世界的ガーデンデザイナー、ピート・アウドルフが手掛けたお花畑。
美意識のシャワーを浴びすぎて恍惚となった状態で、この花畑に足を踏み入れると…。
ここはもしかして天国……? みたいな、ちょっとおかしいテンションになってくる。何もかもがきれいすぎて、意識が軽く飛んでいるのだ。
と、無料エリアだけでうっかり大満足して帰りそうになるが、こんな辺鄙な所まで来て(失礼!)有名な建築ツアーに参加しないなんてありえない!ウェブやアプリで簡単にチケットが買えるガイド付き建築ツアー参加はマストですぞ!
ツアーのスタート地点は、ヴィトラハウスと同様、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計したショウデポだ。
チャールズ& レイ・イームズなど有名デザイナーによる数々の名作家具が、色別に展示されていたりして素晴らしい。建築ツアーに参加すると言ったら、「中をご自由にどうぞ」とのこと。こんないいもの、無料で見学させてくれるなんて太っ腹すぎるぅ……。
さて、いよいよ建築ツアーがスタート。 これでもか!とヴィトラが集めに集めた世界のスター建築家の作品が、ぐるりと見学できるその筋の人にはたまらない内容だ。
外観よりも中が印象的だったのは、 バックミンスター・フラー設計のこちらのドーム。外はとてもシンプルだけど、中に入るとご覧の通り、「はぁ…」と声が出る美しさ。
簡単に組み立てられて取り壊しも可能なドームは、元は避難民などに向けて設計されたとか。その思想も含めて感銘を受けた作品のひとつ。
さて、続いて我らが安藤忠雄によるカンファレンスパビリオン。なんと安藤忠雄の海外初作品なんだとか。
実は目玉のひとつに、ザハ・ハディドによるファイヤーステーションがあるのだが、残念ながら私が行ったときは修復中だった。見たかったなぁ。
それにしても、スター建築家の作品がこれほど一堂に集まっているなんて、本当にすごい。この原稿、「すごい」か「美しい」しか言ってないような気がするが、端的に言うと「すごく美しい場所」なんだから仕方がない。美意識の塊ってこういう場所のことを言うのだろうな…いや、恐れ入りました。
建築好きのためのアミューズメントパーク、そして世界で一番美しいインテリアショップ。ここを訪れるためだけにスイスのバーゼルまで行くの、大いにアリです!
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。