近代建築三大巨匠のひとり、ル・コルビジェ。2016年には、世界7カ国にある17作品が「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として世界遺産に登録されている。
その17作品の一つ、マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」はコルビジェの代表作と言われることも多い名作中の名作。建築好きなら一度は見てみたいと思う場所のひとつだ。
ロンシャン礼拝堂やサヴォア邸など、行くのがちょっと面倒な場所に多いのも巨匠作品の難点の一つだが、ここは大都市マルセイユにあり、交通アクセスも比較的簡単なので、初心者が訪れるのにはうってつけ。
マルセイユ中心部から地下鉄とバスを乗り継ぎ、目にしたそれは、遠くからでも「キター!」と声が出るほどの存在感。1952年竣工ながら、幼稚園やスーパーなどを備え、まさに日本の団地を先取りしている小さな町とも言える集合住宅。
世界遺産に登録されているとあって、思いのほか見学者も多数。ガイドツアーに参加しなくてもショップやレストラン、ホテルのフロントエリア、屋上の見学は可能なので、今回私は気軽にそちらで建物を堪能してみた。住居エリアなどをしっかり見たい人は、事前予約でツアーに参加してみるといいだろう。
■3階&4階 ホテルロビー、カフェ、ギャラリー、ショップエリア
こちらはホテルのフロント脇にある、カフェ・バーエリア。カフェと言ってもフードはなく、お酒やコーヒーなどのドリンク、マフィンなどの焼き菓子があるのみ。
訪れたのは夏なので、人気はやはりテラス席。周囲には山々の緑が広がり、眺めも良くてのんびりできる。このためだけに来ても楽しいかもしれない。マルセイユの地ビールなんかもあり、今回は疲れもあってかけつけ一杯。
ランチを食べることができず、仕方なくブルーベリー・マフィン。レストランなどが近くにないので、食事難民になりやすいのが玉にキズ?
カフェ内のインテリアもいちいちかわいい。
同じフロアには、南仏の光がたっぷり差し込む廊下があり、コルビジェグッズが買えるお土産屋さんやアートギャラリーなんかもある。
黄色い郵便ポストが印象的な廊下。
■ 屋上庭園
それでは、大型船のデッキに喩えられる有名な屋上庭園へ行ってみよう。
個性的すぎる煙突が何かのオブジェのよう。こういう遊び心が、日本の団地にはあまりないかも。
住民用の体育館だった建物は、今はギャラリーに。私が訪れた時はアパレルショップのインスタレーションを開催中だった。
その他何やら作品が展示されている屋上。これだけ広ければ走り回ることもできるので、住民の運動不足解消に良いのかもしれない。
それでは、あらためて一階に降り、エントランス部分や外観を眺めてみよう。
■ エントランス、ピロティ、モデュロール…
エレベーターからロビーを眺めたところと、レトロなかわいい郵便ポスト。
エントランスにあるベンチエリアは、小さな窓から赤や青、黄色い光が漏れ、教会のステンドグラスのような荘厳ささえ感じられる。
コルビジェといえば、のピロティ。1本あたり2000トンを支えている巨大なもの。こちらもどこか神殿ぽい。
建物全面にある彫刻は、モデュロールを表したもの。モデュロールとは、コルビジェが定めた尺度システムで、建築の基礎となるもの。この前に立って記念撮影するのが訪問者お決まりのコースらしく、インスタ映えスポットでもある。
ともすれば殺風景になりがちな四角い箱のような建築が、色使いや細部の遊び心でここまで楽しくなるのか、というしみじみ感動。何より写真で見るよりも実物はずっと巨大なので、ぜひ、実際に訪れてその迫力と存在感を味わってほしい。
■ マルセイユ中心部からのアクセス
最寄りのバス停の名前はなんと「ル・コルビジェ」。
マルセイユの玄関とも言えるサン・シャルル駅( Gare de Marseille-Saint-Charles)などから、地下鉄でRond-Point du Prado駅まで行き、そこからバス22番で「ル・コルビジェ駅」下車。または、Google mapアプリでHotel Le Corbusierを行き先に指定すれば、最短のルートを教えてくれます。町の中心部から片道30〜40分と行ったところ。
マルセイユ観光の拠点にできなくもない距離なので、空きがあればホテルに宿泊するのもおすすめ。探せばシングル一泊70ユーロくらいからあります!
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。