美食の地として世界的に有名な、スペイン北部、バスク自治州。その最大の都市であるビルバオは、現代アート好きの聖地グッゲンハイム・ビルバオで知られるが、バル巡りが楽しい街というイメージは、お隣のサン・セバスチャンにトップを奪われているかもしれない。
でも、もちろん、ビルバオのバルだって無茶苦茶美味しい!
サン・セバスチャンの食べ歩きレポートと同様に、ここでもあれこれ食べた様子をシェアしてみたい。記事の最後に個人的な「ビルバオの美味しいピンチョスベスト3」も発表するのでお楽しみに。
■ ビルバオでバル巡り「旧市街編」
さて、ビルバオは大きく言って新市街と旧市街に別れている。言葉どおりなのだが旧市街はクラシカルな古い建物が並び、いかにもヨーロッパという風情である。
とはいえ、実は旧市街と新市街は川を挟んで向かい合っており徒歩で行き来できる距離。だが、泊まっていたAirbnbのご主人によれば、「旧市街は観光客が多く、新市街は若者に人気」とのこと。距離は近いが文化圏的には異なるのかもしれない。
そんな観光客に人気の旧市街において、バル巡りするなら外せないのがヌエバ広場(Plaza Barria)だ。
この広場にはたくさんのバルがひしめき、一日中何かを食べたり飲んだりする人たちで賑わうまさにバル広場。中でも「Gure-toki(グレ・トキ)」は、ミシュラン掲載の人気店。1982年創業と歴史は長いが、そのピンチョスはどれも独創的なルックスでとてもモダンである。
中でもとびきり美味しかったのが、ご覧のイディアサバルチーズのスープ(Sopa de queso Idiazabal)。一つ2.4ユーロ。
ピンチョスコンクールで優勝したこともあるという看板商品かつ人気の一皿。イディアサバルとは、「バスク州およびナバラ州北西部で生産される、ヒツジの乳を原料としたチーズ」(Wikipediaより)のこと。
花びらが散るルックスも美しく、繊細で濃厚な旨みが沁みる絶品スープ。日本なら高級レストランでしかお目にかかれなそうな一皿だけど、いわゆる安い居酒屋といえるバルでお手頃にいただけるのがビルバオの素晴らしいところ。
続いて、この広場でもう一軒。グレ トキ のすぐ近くにあるLa Olla de la Plaza Nuevaもまたピンチョス賞受賞店。グレトキより店の面積も広く、バルというよりレストランといった風情。
ウニなど濃厚な海産物入りのミニグラタンみたいな一皿や、マグロのステーキみたいなものなど、こちらもグレ トキ同様見た目もモダンで美しいピンチョスが並ぶ……というか、実際はほとんど並んでおらず、メニューを見ながらオーダーする店だ。
お次はヌエバ広場から歩いて数分のバル「BERTON」(地図)へ行ってみよう。ここは、前2つの「おしゃれ系」ピンチョスに比べると、素朴な、というかホッとするメニューが並ぶ。
ここで食べ物以外で印象に残ったのは、赤いロゼワイン。
「こんな色のロゼワイン、珍しいでしょう。このあたりでしか流通していないのよ。この赤い色が見慣れないのか、あんまり人気ないみたい(笑)」と地元民。近隣のナバーラ州のワインだが、さっぱりとして軽く飲みやすく、個人的に大好きな味だった。この色が嫌とか言わず、日本も輸入してほしい。
続いて訪れたのはcon B de bilbao(地図)。「ここは若い人に大人気の店なのよ」と地元民。
おしゃれかどうかはわからないが、確かに明らかに他のバルとは違うノリのインテリア。独創的ではある。
ここはどちらかというとバーという印象。ワインのこだわりもあるみたいなので、リオハなど、世界的に有名な産地のものなどいくつか提案してもらいつつ、貝のコロッケをつまみにゆったり飲む。
これだけ巡っても直線距離にするとせいぜい300mくらい。まだまだ行けるぞ!ということで新市街へゴー!
■ ビルバオでバル巡り「新市街編」
さて、グッゲンハイム・ビルバオなどがある新市街。こちらは旧市街と比べるとぐっとオフィス街っぽさが出てくる。実際バルに集う人たちも、明らかに会社帰り風が多い。
新市街は旧市街のようにいわゆるバル密集地というのはない。強いて挙げるなら人気のバル「La Viña del Ensanche(ラ・ビーニャ・デル・エンサンチェ」があるあたりだ。ここにあるバル2軒は、あまりに美味しすぎて2日連続で通ってしまった。正直、次にビルバオに来てもこの2軒だけであらゆるメニューを試したいと思うほど。
それではまず、1927年創業の老舗、「La Viña del Ensanche(ラ・ビーニャ・デル・エンサンチェ」から行ってみよう。
ここはイベリコ豚の加工で知られるので、生ハムなどはぜひ試したいところ。
イベリコ上ロースにとろけるチーズ、フォアグラをパンに載せたJosellini(ジョセリーニ)。4つで20ユーロ。濃厚…!
これは和食が恋しくなってきた頃に染みた一皿。ツナのマリネを白米に載せた一皿、美味しすぎた。この店、しいたけやら天ぷらメニューもあり、日本リスペクトもある様子。
しかし中でもその場にいた一同が感激したのがこちらの大きなステーキ。カリカリのおこげも美味しく、ボリューム満点。赤身肉は噛めば噛むほど旨みがじゅわっと…!
そして、ビルバオっ子が「ビルバオで一番美味しいチーズケーキよ!」と激推しするのがこちらのアイスクリーム添えの一品。
サン・セバスチャンでも思ったけど、本場のバスクチーズケーキ、それほどおこげが主張していない印象。ふんわり軽く甘さ控えめ。この店は人気店なので大混雑するのだが、なぜか皆、皿とグラスを持って外に出て食べていたりする。店の前にある図書館のあたりまでが店の勢力範囲っぽいので、このチーズケーキも道端で賞味。美味しかった。
さて、続いてはLa Viña del Ensanche(ラ・ビーニャ・デル・エンサンチェ)のすぐ隣りにあるEl Globo taberna(エル グロボ)へ。こちらもかなりの人気店だ。夕方は仕事帰りの会社員たちで混み合うので早めに行くかちょっとずらして夜8時頃に行くのがおすすめ。
この店は接客もフレンドリーで(正直、ビルバオの人たちは観光地のサン・セバスチャンに比べると総じて「東京人」ぽい。都会だしビジネス街だからだろう)、価格も安く、何を食べても美味しかったので、店としてはビルバオNO1。
色々食べたが、特にハッとするほど美味しかったのがこちらの「カラスピオ:海の幸の海藻和え」。
カラスミ? カニ味噌? なんだかわからない魚の旨味がぎゅっと詰まったグラタンとコリコリの海藻がミックスされて帆立貝の上で焼き上げられ…、もう日本酒必須という旨味。和食か!
そして、スペイン風オムレツの概念を覆す、ポテトオムレツ「エル・グロボ」白トリュフ入りグラタン(Tortilla de patata “El Globo”, gratinada con trufa blanca)。
じゃがいもを優しく包み込む濃厚なクリームとトリュフ。トリュフの香りがすべてを優しく包み込み、ただひたすら美味しい。とはいえ、かなり大きくかつ本当に濃厚なので、3人くらいでシェアしないと胃もたれするかも。
新市街では他にもバルをいくつか回ったけど、結局のところこの2軒が圧倒的に美味しく、かつ隣り合っていてハシゴも便利、ということで、2日連続でこの一角に居座ってしまった。
■ ビルバオのバル巡りで美味しかったものベスト3は?
さて、今回食べた中で、絶対にもう一度食べたいと思う個人的ベスト3を発表!
第3位 エル・グロボのポテトオムレツ(一つ7.9ユーロ) ⇒地図
同点3位 ラ・ビーニャ・デル・エンサンチェのステーキ(値段失念したけど20ユーロくらいだったかな…)⇒地図
第2位 グレ・トキ のイディアサバルチーズのスープ(Sopa de queso Idiazabal)(一つ2.4ユーロ)⇒地図
そして、
第1位 エル・グロボの「カラスピオ:海の幸の海藻和え」(一つ3ユーロしなかった気が…)
この一皿は、本当に忘れられない美味しさ。ビルバオに行く全ての海鮮好き日本人にぜひ試してほしい。
全体を通して見ると、ビルバオのバルのピンチョスは、モダンな盛り付けで革新的なメニューが多かった印象。アンダルシアあたりで食べた生ハムやらマッシュルームのアヒージョやらの素朴なタパスに比べると、明らかにおしゃれなのだ。バルというと居酒屋をイメージしていくと、そのメニューのきらびやかさに驚くかもしれない。さすが世界的な美食の地。
現代アートだけではない、ビルバオ旅のお楽しみ。ぜひこの記事を参考に、ちょっとおしゃれなバルめぐりを楽しんでみては?
<スペイン・バスク地方の関連記事>