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衰退した街を生き返らせ、現代アートの聖地に変えた奇跡の名建築「グッゲンハイム・ビルバオ」を見に行った。

衰退した街を生き返らせ、現代アートの聖地に変えた奇跡の名建築「グッゲンハイム・ビルバオ」を見に行った。

グッゲンハイムビルバオ

たった一つの建築が、寂れかけていた工業都市を瞬時に蘇らせた……。そんな奇跡みたいなことって本当に起こるんだな、というのがこの街のなりたちを知ったときの感想だった。

その奇跡の建築こそ、フランク・ゲーリー設計の「グッゲンハイム・ビルバオ」である。

グッゲンハイムビルバオ
直線がひとつもないという驚異の曲線建築。

■ 世界で最も成功した町おこし、「ビルバオ効果」とは

スペイン北部、バスク自治州最大の都市ビルバオは、かつて鉄鋼業、造船業で栄えた工業都市だったが、1980年代に衰退。そこでこの街に誘致されたのがニューヨークの「グッゲンハイム美術館」の分館だった。

まるで鱗のようにチタニウムが外部を覆い、独特の質感を生み出している。

1997年、もとは倉庫街だったネルビオン川のほとりに、今まで誰も見たことがなかった鈍い光を放つチタニウムに覆われた建築が誕生。たちまち注目の的となり世界中から建築と現代アートを求めて観光客が殺到。寂れかけていたヨーロッパの地方都市に、開館後わずか3年間で計400万人が訪れたという。

この成功は「ビルバオ効果」として注目され、世界で最も成功した都市再開発事例となり、建築での町おこしの世界的ブームを起こす。グッゲンハイム・ビルバオが出来る以前に比べ、この街を訪れる観光客の数は20倍以上にもなった。まさに歴史を変えた建築なのだ。

■ グッゲンハイム・ビルバオを見た感想

絵や彫刻は、展覧会などで日本に来る可能性があるけれど(まあ門外不出の作品も多いのだが)、建築だけはそこにいって見るしかない。それが、旅先で私が絵や彫刻よりも建築を優先する動機である。

私が最初にこの奇跡の建築を見た感想は「存在感…!」というものだった。

巨大な船にも例えられるゲーリーの最高傑作

川側から見たほうがいいという情報が多かったのでネルビオン川をぶらぶらと歩いていったのだが、のどかな遊歩道の景色を一変させる迫力。とにかく大きいのと、チタニウムが放つ光のインパクトがすごい。

ちなみにこの対岸といえば、こんなふうにクラシカルなビルが並んでいたりするのだ。このコントラストのすさまじさと異物感。

イサム・ノグチは、ゲーリーに合ったときに「あなたな彫刻家ですね」と言ったそうだが、まさに巨大な彫刻作品のよう。

決して優しい雰囲気ではない。力強い巨大建築だ。

しかし、中に入るとその印象はがらりと変わる。

たっぷりと自然光が入る巨大な吹き抜け空間。中世の騎士の鎧をまとったかのような外観とは打ってかわって、柔らかく、明るくエレガントな印象だ。

「フラワー」と呼ばれる明るいアトリウム

気が遠くなるようなぐにゃにゃ空間は、当時最先端だったCADシステムを用いることで実現したテクノロジーの産物。このとき、ゲーリー68歳。その心と脳の若さよ…!

■ 体験するアートが楽しい

さて、さんざん建築ばかり語って来たが、ここは現代アートの美術館。この大迫力の建築とアートの競演もたっぷり堪能したい。

特に楽しいのはリチャード・セラの彫刻作品「スネーク」。重さ約180トン、長さ102mという巨大な彫刻作品は、グッゲンハイム・ビルバオの開館記念作品。

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作品に迷い込めば誰かとかちあい、お互いに譲り合い、笑い合う。鑑賞するというよりも体験する、といったほうがいい作品。アート作品の巨大化も、この美術館がリードした潮流の一つだとか。

しかし、今やグッゲンハイム・ビルバオ、というかビルバオのアイコンの一つになっているのは、ジェフ・クーンズ「パピー」かもしれない。このお花でできた犬は、マグネットになって土産物屋に並んでいたりするのだ(権利関係かなり怪しいが…)。

花と子犬、というズルい設定ゆえか、グッゲンハイム・ビルバオの中でも屈指の人気スポット。記念撮影をお忘れなく。

グッゲンハイム美術館がある新市街はモダンな現代建築ウォッチングと歴史ある建物が共存しているのも面白いので、ぜひぶらぶらと散歩してみよう。この街がかつて寂れていたなんて信じられない思いがするはずだ。

ネルビオン川沿いには、サンティアゴ・カラトラパ設計のスピスリ橋や磯崎新設計のツインゲートが。

<グッゲンハイム・ビルバオ> https://www.guggenheim.org/

チケットはオンラインで購入可能。ミュージアムショップにはかわいいお土産も。私はTシャツ買いました。

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