その面積の小ささに反してミシュラン星付きレストランが多いことから、世界一の美食の地と呼ばれる、スペイン・バスク地方。特にサン・セバスチャンは美しいビーチと王侯貴族の避暑地だった歴史から香るエレガントな雰囲気もまとうバスク屈指の人気の街。
ミシュランと聞くと「高級レストランしかないのでは…」と不安に思うかもしれないが心配ご無用。日本で言えば居酒屋と言えるバルがひしめく、安い!旨い!のセンベロタウンでもあるのだ。
今回はその安いほうのレポート。
さて、バスクといえば、ピンチョス。総じて薄く切ったバゲットの上に具を載せ爪楊枝(ピンチョ)で指した小皿メニューを指すが、爪楊枝がなくてもピンチョスと呼ばれることがあるので、まぁタパスと同義語であると言っていい。
ひとつ2〜3ユーロ程度の物が多く、見た目よりボリュームもあるので少食な人なら3つも食べれば結構満足してしまうだろう。とはいえ私は3皿でお腹いっぱいになりたくなかったので、地元の人に「パンを残してもいい?」と聞いたら「もちろん!」とのこと。パンで満腹になりそうだったら気兼ねなく残そう。
1つの店で2皿くらいずつつまんだが、何もかも美味しく、世界屈指のグルメシティの実力にうなる。海藻や魚介など、日本人好みの食材も豊富で、洋食なのに胃もたれしない。
さて、ここからは、特に全力でおすすめしたい個人的ベスト3を発表。どこも人気店だが、混雑していても何とか入れるのがバルのいいところ。ひるまずに突進しよう。
■ サン・セバスチャンに行ったら絶対食べてほしい究極の3皿。
第3位 La Vinaのバスクチーズケーキ
突然おやつになってごめんなさい。ここは、サンセバスチャンで一番有名なチーズケーキが味わえるバル。日本でも定番となったバスクチーズケーキの人気店だ。
正直言って、コンビニで売ってるバスクチーズケーキしか食べたことがなかったが、本場のそれは、甘すぎすふんわり軽く、しっとりとろとろ。さっぱりしていて、ワインにも合うおやつという印象。見た目はボリュームたっぷりだが、なぜかするっと胃におさまってしまう。
バル巡りでのシメや、カフェタイムのおやつにおすすめ。もちろんつまみにしても。
第2位 Txepetxa Tabernabaのアンチョアのピンチョス
ここはアンチョア(カタクチイワシ)に特化した老舗バル。日本でもおなじみのアンチョビみたいにしょっぱいやつではなく、さっぱりとした酢漬けをアレンジしたピンチョスが並ぶ。
肉厚でふわふわ、大きくスライスされたイワシの酢漬けは、口に入れた瞬間ハッとするほどの美味しさ。生臭さゼロ、トッピングした野菜とのハーモニーもたまらない。これは初めてのおいしさ…!
このあと数軒のバルでアンチョアのピンチョスを食べたけど、ここより大きいイワシにはついに出会えず、10種類以上のトッピングが楽しめる店なのでもっと色々試したかったと後悔。三世代続く家族経営の有名店で、アンチョアへのこだわりでは唯一無二のお店なので、忘れずに立ち寄りを。
第1位 Bar Sportのフォアグラのピンチョス
ここはサン・セバスチャンの人気バルで、特にフォアグラのピンチョスで有名。
バゲットを覆うのは、塩コショウでさっぱりと味付けされたフォアグラのソテー2枚。写真ではうまく伝えられないのだが、一口ではとても入らない大きさだ。高級食材のフォアグラ、日本では結婚式ぐらいでしか食べたことがなかったが、こんなにカジュアルなお値段でこんなにたっぷり載っけていいんですか…!
口に入れれば、濃厚とろ〜り、罪深さを感じる旨味を残して胃の中へ消えていく。脳の奥に響くような美味しさである。いやあ、絶対また来る!
サン・セバスチャンのバル巡りのいいところは、スダンディングの店が多いせいか、隣り合った客同士ですぐ仲良くなれたりすることだ。仲間だけでテーブルに座り込んでしまうと、他をよせつけないバリアを張ってしまいがちだが、カウンターに並んで立てば、同じ食いしん坊仲間。
世界中からバスクの美味を求めて来た旅行客と軽口を叩きながらピンチョスを頬張ったのはいい思い出。一皿が小さいので、一人旅の女子でも楽しめるアクティビティだろう。治安も悪くないし、小さな街なので基本は徒歩で回れる。
思い出すだけでまた行きたくなるサン・セバスチャン。
毎年9月にはサン・セバスチャン映画祭が開催され街が賑わうが、直前は宿代がおそろしく上がるので、3ヶ月くらい前に予約するのを推奨。私はちょうどこの時期に行ったけど、昼は映画館をはしごして、夜はバル巡りという、天国みたいな日々だった。でも次は、泳げるシーズンに行ってビーチでごろごろしたいな。
<サン・セバスチャンへの行き方>
日本からだとヨーロッパ主要都市で乗り換えてビルバオ空港に行くのが一般的。ビルバオ空港からはサン・セバスチャン行きのバスが出ている。
スペインを拠点とするLCC、ブエリング航空なら価格もリーズナブルなので、どこかヨーロッパの街から移動するなら選択肢の一つにしても。
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。