ウィーンの名物菓子と聞いて真っ先に思い浮かぶのはザッハトルテ、という人も多いのではないだろうか。
これは簡単に言うと、アプリコットジャムを塗ったチョコレートスポンジケーキをチョコレートでコーティングをした菓子。
レシピの考案者であるフランツ・ザッハーの息子が修行した『デメル』やその後開業した『ホテル・ザッハー』の名物菓子だったが、今や似たようなケーキはあちこちの菓子店でも味わえるようになっている。
とはいえ、やはり本家ホテル・ザッハーと、NO.2とも言えるデメルで一度は食べてみたいのが人情と言うもの。というわけでこの2店の前にはいつも長蛇の列ができている。
今回、寒空の中、行列に並び、この2店でザッハトルテを食べ比べ。さらにエリザベートが通ったゲルストナーでもザッハトルテを試して見たので、3つのケーキの個人的感想をシェアしたい。
・ホテル・ザッハーのザッハトルテ
1832 年、オーストリアの首相メッテルニヒが来客用のデザートを用意するよう言いつけておいたシェフが当日体調を崩し、まだ16歳の見習いシェフだった、フランツ・ザッハーが急遽大役を引き受けることになる。そこで彼が考案したのが現在世界で最も有名なケーキの一つとなった、ザッハトルテ。まさに、ケーキ版のシンデレラ・ストーリーだ。
そんな奇跡のオリジナル・ザッハトルテがこちら。
スポンジのケーキはホロリとして、アプリコットの風味も強め。コーティングのチョコレートの層も厚く、甘さもしっかり。添えられた無糖の生クリームで口直ししながらいただくと美味しさもひとしお。
個人的には3店の中で、最もクラシックな味、という印象。きちんと甘くて、どこか素朴さも残り、長い歴史を感じるのだ。
・デメルのザッハトルテ
お次は日本にも上陸しており、王室御用達でもあるデメルのザッハトルテ。
チョコレートのコーティングがホテル・ザッハーより薄めなのにお気づきだろうか。チョコレートのスポンジ部分も、ホテルザッハよりもよりきめ細かく、ホロリというよりしっとりふわふわ。アプリコットジャムの存在感も薄めである。
一言でいえば、ホテル・ザッハーより上品なお菓子、という印象。1786年創業で、ウィーンの宮廷に愛された老舗菓子店ならではの洗練された味。
ホテル・ザッハーは「ザッハトルテ一択!」というイメージの店だったが、こちらは普通にいろんなケーキが並ぶお菓子屋さん、という印象。ザッハトルテも有名だけど、カイザーシュマーレンというぶつ切りにしたパンケーキも名物とのこと。
フランツ・ヨーゼフ皇帝が愛したデザートらしいんだけど、あの皇帝って好きなものが野菜スープとか、何かと地味よね…。
・ゲルストナーのザッハトルテ
そして最後は、ほぼ行列無しで入れる王室御用達、ゲルストナーへ。オペラ座の目の前にあり、ホテル・ザッハーとも至近。
種明かしをすると、実はこの店では、当初ザッハトルテを食べる予定はなかったのだった。
閉店が夜10時と遅いので、ロマンティックな内装を楽しみながら、友人とお酒を嗜んでいたところ、お店のスタッフが「あなたがたスペシャルな御婦人たちにスペシャルなケーキをプレゼントします」とサービスしてくれたのだった。
そんな嬉しいサプライズってある!? もう食べる前からゲルストナーのザッハトルテが優勝!って叫びそう。
とはいえ、そんな贔屓目を差し引いても、正直ここのザッハトルテはすごく美味しかった。ホテルザッハーの強めのアプリコットの風味と、デメルのきめ細かいスポンジが合わさったようなバランスの良さ。添えられた生クリームはこちらの店が一番美味しかった気がする。
ということで、今回の食べ比べでは、個人的にゲルストナーのザッハトルテが一番美味しく感じた。とはいえ、それぞれ特徴があるので、好みも分かれるんだろうなぁという印象。みなさんも自分なりのNO.1をウィーンで見つけてみてね。
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。