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ウィーンのワイン居酒屋、ホイリゲってどんなところ? 料理や楽しみ方をたっぷりレポート。

ウィーンのワイン居酒屋、ホイリゲってどんなところ? 料理や楽しみ方をたっぷりレポート。

ワイン醸造家が営むワイン居酒屋「ホイリゲ」は、ウィーン観光の人気アクティビティのひとつ。どんな場所? どんなワイン? お料理は? など写真たっぷりでリポートします。
正直言って、最高です!

旅には、大まかに言って二つの目的がある。

一つは、知的好奇心を満たしたいなどの「刺激」、もう一つは日頃の疲れを癒したいという「休息」だ。 他にもあるかもしれないが、ここは強引にこのまま押し切って話を進める。

さて、ウィーンを旅する目的を考えれば、普通は前者の「刺激」だと思うだろう。何しろ、かの有名なハプスブルク家が君臨した史跡だらけの帝都であり、クラシック音楽の聖地であり、クリムトやシーレを生んだ芸術の都。どう考えても、ハワイのビーチのように「休息」めあてに行くような場所じゃない。

……と思うでしょ?

それがそうでもないんだなぁ、と気づかせてくれたのが、そう、今回熱く語るホイリゲなのだ。

オーストリア名物ワイン居酒屋で癒しのひととき

ホイリゲとは、1年未満のワインの新酒を意味し、転じて自家製の新酒のワインを出す居酒屋も指すようになった言葉。簡単に言うとワイン醸造所が営むワイン酒場のことで、郊外の丘陵地帯にある田舎町に多く、ぶどう畑に隣接していたり、古い館を利用していたりする。美しい田園を望むテラス席で、楽団が奏でる音楽を聴きながら、おいしいワインやお料理を楽しむホイリゲは、ウィーン観光の人気アクティビティの一つだ。

ということで、見どころが多すぎてともすれば過労に陥りやすいという罠を抱えた恐るべき観光地ウイーン旧市街から電車とバスで約1時間で行ける、ワイン産地、ノイシュティフトにあるフーアガスル・フーバーというホイリゲで、その魅力を堪能してみたい。

ここは高品質なプロダクトに与えられる称号「ウィーンプロダクツ」認定の「ウィーン・ワイン」のメンバーでもあるワイン醸造家が営むホイリゲなので、ワインのクォリティだってお墨付きなんである。

白亜の宮殿だのゴシック様式の教会だのが立ち並ぶウィーン旧市街からちょっと足を伸ばせば、こんなのどかな風景が広がっているのもウィーンの奥深さ。
門口に吊るされた松の枝の束は「営業中」を意味しているのだそう。

フーアガスル・フーバーがあるのは、絵に描いたようなヨーロッパの田舎町。まさに安野光雅の絵本の世界で、早くもこの風景だけで心が癒される。

 

一歩中に入ると目の前に広がるのは広大なぶどう畑。
ああ、アルプスだ、ここはやはりアルプスのはじっこなのだ。

気持ちのよいテラス席や、民族衣装のディアンドルを着たスタッフなど、何かのテーマパークのように出来すぎているフォトジェニックなホイリゲ。

さて、ウィーンのホイリゲを訪れたなら、何はともあれ「ゲミシュター・サッツ」を注文しよう。これは、複数の品種のぶどうを混植混醸するウィーン名物のワインで、かつては安酒の代名詞だったが、最近は醸造家たちの努力により高品質化が進んでいてとても美味しい。

このホイリゲで覚えたウィーンらしい素敵なワインの飲み方が、ゲミシュターサッツを炭酸水で割るゲシュプリッツター。アルコール度数も低くなるし、飲み口も軽く、炭酸水の喉ごしの良さも加わってさわやか。

ワインというと、あのチューリップみたいなきゃしゃな形のグラスを傾けていただくイメージを抱きがちだけど、ホイリゲではどーんとジョッキで登場するのも気取らなくていい。もうビール並みにぐびぐび飲んでしまう。

出てくるお料理も、ワインのアテというよりビールのアテっぽいラインナップ。
ハム、ソーセージ、ベーコンなどの盛り合わせに、どーんとたっぷりの揚げ物、どどーんとたっぷりのじゃがいもなど。これはゲシュプリッツターがばかみたいに進んでしまうではないか!

個人的には、上の左下の写真の豚肉と小麦粉を練ったものを煮込んだようなメニューが、ちょっと日本のちくわぶを思い出させる食感で素朴に美味しかった。ちくわぶ好きなら見かけたら頼んでみては。

お世辞に抜きに食べ物がどれも美味しい。揚げ物は野菜なんかもあるので思ったほどくどくなく、衣もサックサク。

夜7時を過ぎる頃にはテーブルもほぼ埋まりかけ、音楽担当の楽士もスタンバイ。絶対座りたいなら夕方くらいに行くといいかもしれない。

ホイリゲ名物、オーストリアの民俗音楽「シュランメル」を演奏する楽士は、各テーブルを回っていて、頼めば演奏してくれる(要チップ)。さすが音楽の都、演奏のクォリティもむちゃくちゃ高い。

癒しだ、これは完璧な休暇だ。ハワイのビーチとはちょっと趣が違うけれど、ただのんびりしに来くるのも全然アリな、リゾートのように過ごすウィーンの旅のあり方を発見!

9月から11月にかけてのホイリゲもおすすめ

ウィーンに関する複数の本が、口を揃えて、ウィーンっ子は歴史的にも「陽気で楽しいことが大好き」であり「美食、ワイン、恋」に生きると書いていたのも、ホイリゲを訪れてみて大いに納得。音楽の都は一日にしてならず。こういう享楽的なウィーン気質が独自の文化を育んできたのだなぁ。ドイツ系だからといって真面目で固いと思い込んではいけないのだ。

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ドナウ川に続くゆるやかな丘陵地帯がワインの栽培にぴったりなことから、三世紀ごろからローマ皇帝によりワインの醸造が奨励されていたという長い歴史を持つ産地でもあるウィーン。ローマ軍の言葉で「美味しいワイン」を意味する「Vindobonna」が、ウィーンの地名の由来ともいわれる。

大都市圏に広大なワイン生産地があるのは世界でもここウィーンだけで、約700ヘクタールものぶどう畑が市内にあるので、ホイリゲめぐりで一週間なんていう旅もじゅうぶん可能だ。

ここ、ノイシュティフトの他に、地下鉄とトラムで手軽に行けるグリンツィンクも、ホイリゲがたくさんあることで知られるワイン産地。近くのハイリゲンシュタットはベートーベンがかつて暮らしたゆかりの地で、交響曲『田園』の構想を練ったという散歩道があり、ホイリゲを訪れるなら一緒に観光するのがおすすめ。

ワイン産地ウィーンでは、ホイリゲよりももっと料理が簡素なブッシェンシャンクもヌスベルクなどのぶどう畑にある。

ヴィーニンガーが所有するブッシェンシャンク。ぶどう畑からは絶景!

ちなみに、ウィーンのホイリゲでは、9月〜10月頃になると、発酵しはじめたばかりのぶどうジュース「モスト」と、さらに発酵が進んだ「シュトルム」が登場し、期間限定ドリンクとして人気。

11月になればいよいよ新酒の季節なので、夏のビアガーデンみたいに明るく楽しいホイリゲもいいけれど、秋もまたお酒好きなら最高のホイリゲシーズンといえる。

グループでわいわいとワインを楽しむ人々。夜9時頃でもこの明るさ。ウィーンの夏の夜は長い。

個人的には一人旅が好きだけど、ホイリゲに来るためだけに次回は友だちと来よう、と思ったほど感激したフーアガスル・フーバーでのひととき。頭とお腹をからっぽにしてぜひ訪れてみて。

フーアガスル・フーバー  公式サイト
Neustift am Walde 68, 1190 Wien, オーストリア

 

<取材協力>
オーストリア大使館商務部
・ウィーン商工会議所(ウィーンプロダクツ

 

 

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