タイのコムローイ祭りや、ベトナム・ホイアンのランタン祭りなど、すっかり絶景ファンに有名になった世界のフォトジェニックなお祭り。
それらは今や「世界のインスタ映えなお祭り10選」といった記事の常連なわけだが、どうしてこれが入らないのだろうか、と不思議に思っているのが、マルタ島(マルタ共和国)で毎年10月に行われる「ビルグフェス」のキャンドルライトである。
■中世の街並みをキャンドルが照らす、一夜だけの幻想的なイベント
まずはマルタ島の基本情報から。マルタは淡路島の半分ほどの大きさの小さな島だが、れっきとしたEU加盟国。ヨーロッパでは珍しい英語圏でもあり、留学先としても人気のビーチリゾートである。イタリアのシチリア島のすぐ下に浮かび、歴史好きにはマルタ騎士団ゆかりの地としても知られている。
この国の世界遺産、首都のバレッタより歴史が古い街が、今回紹介するお祭りの舞台、ビルグ(Birgu)である。
石畳の狭い路地と、はちみつ色のマルタストーンの家々。中世そのままのような雰囲気を色濃く残すビルグは、バレッタのすぐ対岸にあり、フェリーで簡単に行けることから人気の観光地でもある。
そして、この街が10月の一夜だけ、こんな幻想的な風景に変わるのが、ビルグフェスのキャンドルライトなのだ。
■ビルグフェスのキャンドルライト、そのなりたちと楽しみ方
もともと、この地区の歴史的建築物を紹介しようという思いから始まったというビルグフェス。地元民によれば、ほんの10年前くらいまでは、マルタ人がメインで楽しむアットホームなお祭りだったのに、ここ数年はこれを目当てに世界中から多くの観光客が押し寄せるようになったとか。
私は2022年の10月に行ったのだが、帰りのタクシーがつかまらないなど、あやうく帰宅難民になりかけたほどの人手だった。
ビルグフェスは、ハンドメイドやクラフトの屋台が並ぶマーケットや、音楽ライブ、フードトラックなども出現するまさに「お祭り」なのだが、ハイライトはもちろんキャンドルライト。
この日、街の街灯はオフとなり、住民たちは家の電気を消し、約2万ものキャンドルだけが街を照らす。はちみつ色の中世の町並みを色とりどりのキャンドルが彩る様子はまさにフェアリーテイル、完全におとぎ話の世界である。
個人的におすすめの楽しみ方は、キャンドルが灯る夕暮れ時にビルグに到着し、刻々と変わる空の色とキャンドルとの競演を堪能すること。
とっぷり日がくれてからだと、せっかくのマルタストーンや石畳の質感も暗さであまりわからなくなるし、何より人が増えすぎる。ゆったり記念撮影するならまだそれほど混んでいない夕方6時半〜7時くらいがベスト。
キャンドルが灯り始めたら、迷路のような小道にあえて迷い込んでみよう。どこに行っても、幻想的な風景が広がっており、ただひたすら美しい。街の大きさは端から端まで歩いても徒歩20分程度といった大きさだが、坂も多いので歩きやすい靴で行くのがおすすめ。
訪れる人への注意事項としては、「ビルグフェスの日程」=「キャンドルライト」ではないこと。街がキャンドルで彩られるのは、お祭り期間中の1日だけなのだ。
たとえば、2023年のビルグフェスの開催日は10月13、14日だが、キャンドルライトが行われるのは14日のみ。行くときは、必ず公式facebookページでキャンドルライトの開催日を確認しておこう。うっかり別日に行って、祭りのハイライトを見逃さないようにしたい。
夜も8時をすぎると、ご覧のように小さな街は人で埋め尽くされる。音楽ライブなども開催されるので、そちらへ流れるのもいいし、帰宅難民になる前に退散するのもいい。
日本ではまだ知名度は低いが、ヨーロッパではそこそこ知られ始めたフォトジェニックなお祭り、ビルグフェス。10月にマルタを旅するなら行かなきゃ損!なイベントですよ。
<ビルグ(Birgu)への行き方>
マルタ共和国の首都バレッタの港からスリーシティーズ行きのフェリーで約10分。あるいはバスで20分程度。ただし、お祭り期間中は、日が暮れてからはフェリーに乗り切れず、かなり待つ可能性が高い。混雑を避けるなら、夕方早い時間にビルグまで行っておくのが吉。
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。