地中海、イタリアの南に浮かぶ小さな島、マルタ共和国。
淡路島の半分ほどの大きさながられっきとした国であり、ヨーロッパの人たちが夏のバカンスを過ごしに来るビーチリゾートとしても有名。
最近では、大ヒット映画『コンフィデンスマンJP英雄編』の舞台になったりもしている。
夏の旅先というイメージが強いが、夏はカラカラに乾いて茶色の荒野が広がるこの島も、冬から春先にかけては雨も多いため緑に覆われる。まださほど暑くならない2月〜4月頃は、絶好のハイキングシーズンでもあるのだ。
今回はそんな春のハイキングで出会った絶景をご紹介。
世の中にあふれる、「死ぬまでに見たい絶景」系の記事にも見つかっていない秘境であり、地元民ですら知らない人も多い隠れた名所。グランドキャニオンやセドナなどに行った私からしても、それらに引けを取らないスケール感だったので、ぜひ紹介したい。
ここは月面…? という奇景に出会えるのは、マルタ語で、Il-Blata tal-Melh(塩の岩)と呼ばれるスポット。
写真ではその大きさが伝えきれないのだが、地殻変動等で隆起した崖が果てしなく高くそびえ、地震などでくずれおちた岩が転がり、どこか違う惑星に来たかのような風景が広がっている。
何層にも重なる地層には、この土地で起きたさまざまなカタストロフィーが刻まれている。一体何が起きてこうなったのか、とても神秘的である。
ここは「塩の岩」という名前どおり、近くには500年以上前のものだという塩田の跡も。
塩田の近くには、かつて塩を運ぶために作った階段も残されている。写真のスキルがあれば、この塩田に映り込む姿を写し込んだ、ウユニ塩湖的なインスタ映え写真も撮れそうである。
夏は恐れ知らずの若者がここから海に飛び込み、この階段を使って上がってくるんだとか。
月面を思わせる白い大地の横には、目の覚めるようなブルーの海!
ちょっと小高い丘に登れる階段もあるので、登ってみればこんな風景も楽しめる。
「塩の岩」に行くまでの道中も、なかなかフォトジェニックで楽しい。
訪れた3月中旬はまさに春らんまん。日本では見たことのないようなワイルドフラワーが咲き誇り天国のような雰囲気に。
途中には高さ6メートル以上はあるかと思われる巨岩もちらほら。日本人なら、絶対しめ縄巻いて拝んでしまうに違いない神々しさ。
と、いいことばかり書いて来たが、塩の岩に行くまでは、最寄りの駐車場からは徒歩で40分ほど断崖絶壁に沿った道を歩いてこなければならない。
ちょっとよろけると転落の危険もある崖すれすれのスリリングな場所もちらほらあり、安全なルートとはとても言いがたい。
ふと横を見るとすぐ崖なので、高所恐怖症の人も避けたほうがいいだろう。よろけるときは必ず陸側に倒れること、とは案内してくれた地元民のアドバイス。乾いた砂は滑りやすいため、歩きやすい靴で行き、危険な場所は下をしっかり見ながらゆっくり進むなども必要だ。
5月を過ぎると、マルタは暑すぎてハイキングはまず無理なので(その代わりに泳ぎに来る猛者が増える)、涼しい春の日に訪れたい場所である。
Il-Blata tal-Melh
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トリッププランナー編集長。 これまで行った旅先は世界40カ国、うち半分くらいはヨーロッパ。興味関心のあるテーマは歴史と建築、自然。一眼レフ好きだったが重くて無理になりつつある今日このごろ。