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南仏マルセイユで現代建築散歩なら訪れたい名所5つ

フランス第2の都市、南仏の港町マルセイユ。名物料理のブイヤベースなどグルメも楽しみな街ですが、実は建築好きの聖地でもあります。一番有名で世界遺産でもあるル・コルビジェが手がけた集合住宅と、見逃せない建築を紹介します。 ユニテ・ダビタシオン ル・コルビジュが設計した住宅、ホテル、レストランや幼稚園まであるマルセイユの集合住宅。豪華な屋上庭園や共有エリアなどショップやバー、カフェエリアなどが見学可能で、「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」の17件ある構成資産の一つ。建築ツアーも随時行っており、そちらだと見学できる範囲も広がります。 マルセイユの中心部からは地下鉄とバスを乗り継いで行くほど多少距離がありますが、思いの外観光客でいっぱい。ホテルに宿泊してのんびり過ごすのもよし。建築好きはわざわざマルセイユにこれを見るために訪れたりします。 L’Ombrière de Norman Foster 世界的建築家ノーマン・フォスターが設計した、観光客で賑わうマルセイユの旧港にある22メートル×48メートルの巨大な鏡の天井。建築というより巨大なアートといった存在で、下を歩く人はみな天井を見上げ、写真を撮る人も多数。何の役に立つのかわかりませんが、人々を楽しませていることだけは伝わる、港のランドマークです。 ヨーロッパ・地中海文明博物館(MuCEM) フランスの建築家リュディ・リコリが設計した、マルセイユの港にあるヨーロッパと地中海の文化テーマにした唯一の博物館。その独特の建築で、マルセイユ屈指の人気スポットになっています。博物館エリアは有料ですが、建築内には無料で入れて、屋上には眺めとインテリアの素晴らしいレストランも。地元民にもそこでの食事を強くおすすめされました。歴史的建造物とコンクリートの長い橋で結ばれていて、そちらも無料で楽しめるので、絶景と現代建築、歴史のコラボを楽しみにぜひ足を運びたい名所です。 マルセイユ現代美術センター / FRAC Fonds Regional d’Art Contemporain マルセイユのウォーターフロント地区にある建築家、隈研吾設計の美術館。角度の異なるエナメルガラスのパネルが南仏ならではの強い光を分散させ、独特の外観を生み出しています。このエリアは大きなショッピングモールも多く、買い物を楽しむのにもぴったり。ぜひ散策を。 Les Docks Village マルセイユの現代的なビジネス・ショッピングエリアにある19世紀半ばの歴史的建造物で、現在はオフィスやレストラン、ショップが集まる複合ビルに。現在は回収され、モダンと歴史が融合する独特の空間になっています。

泊まれる世界遺産、ル・コルビジェによるマルセイユの名作「ユニテ・ダビタシオン」訪問レポー

近代建築三大巨匠のひとり、ル・コルビジェ。2016年には、世界7カ国にある17作品が「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」として世界遺産に登録されている。 その17作品の一つ、マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」はコルビジェの代表作と言われることも多い名作中の名作。建築好きなら一度は見てみたいと思う場所のひとつだ。 ロンシャン礼拝堂やサヴォア邸など、行くのがちょっと面倒な場所に多いのも巨匠作品の難点の一つだが、ここは大都市マルセイユにあり、交通アクセスも比較的簡単なので、初心者が訪れるのにはうってつけ。 マルセイユ中心部から地下鉄とバスを乗り継ぎ、目にしたそれは、遠くからでも「キター!」と声が出るほどの存在感。1952年竣工ながら、幼稚園やスーパーなどを備え、まさに日本の団地を先取りしている小さな町とも言える集合住宅。 世界遺産に登録されているとあって、思いのほか見学者も多数。ガイドツアーに参加しなくてもショップやレストラン、ホテルのフロントエリア、屋上の見学は可能なので、今回私は気軽にそちらで建物を堪能してみた。住居エリアなどをしっかり見たい人は、事前予約でツアーに参加してみるといいだろう。 ■3階&4階 ホテルロビー、カフェ、ギャラリー、ショップエリア こちらはホテルのフロント脇にある、カフェ・バーエリア。カフェと言ってもフードはなく、お酒やコーヒーなどのドリンク、マフィンなどの焼き菓子があるのみ。 訪れたのは夏なので、人気はやはりテラス席。周囲には山々の緑が広がり、眺めも良くてのんびりできる。このためだけに来ても楽しいかもしれない。マルセイユの地ビールなんかもあり、今回は疲れもあってかけつけ一杯。 ランチを食べることができず、仕方なくブルーベリー・マフィン。レストランなどが近くにないので、食事難民になりやすいのが玉にキズ? カフェ内のインテリアもいちいちかわいい。 同じフロアには、南仏の光がたっぷり差し込む廊下があり、コルビジェグッズが買えるお土産屋さんやアートギャラリーなんかもある。 黄色い郵便ポストが印象的な廊下。   ■ 屋上庭園 それでは、大型船のデッキに喩えられる有名な屋上庭園へ行ってみよう。 個性的すぎる煙突が何かのオブジェのよう。こういう遊び心が、日本の団地にはあまりないかも。 住民用の体育館だった建物は、今はギャラリーに。私が訪れた時はアパレルショップのインスタレーションを開催中だった。 その他何やら作品が展示されている屋上。これだけ広ければ走り回ることもできるので、住民の運動不足解消に良いのかもしれない。 それでは、あらためて一階に降り、エントランス部分や外観を眺めてみよう。 ■ エントランス、ピロティ、モデュロール… エレベーターからロビーを眺めたところと、レトロなかわいい郵便ポスト。 エントランスにあるベンチエリアは、小さな窓から赤や青、黄色い光が漏れ、教会のステンドグラスのような荘厳ささえ感じられる。 コルビジェといえば、のピロティ。1本あたり2000トンを支えている巨大なもの。こちらもどこか神殿ぽい。 建物全面にある彫刻は、モデュロールを表したもの。モデュロールとは、コルビジェが定めた尺度システムで、建築の基礎となるもの。この前に立って記念撮影するのが訪問者お決まりのコースらしく、インスタ映えスポットでもある。 ともすれば殺風景になりがちな四角い箱のような建築が、色使いや細部の遊び心でここまで楽しくなるのか、というしみじみ感動。何より写真で見るよりも実物はずっと巨大なので、ぜひ、実際に訪れてその迫力と存在感を味わってほしい。 ■ マルセイユ中心部からのアクセス 最寄りのバス停の名前はなんと「ル・コルビジェ」。 マルセイユの玄関とも言えるサン・シャルル駅( Gare de Marseille-Saint-Charles)などから、地下鉄でRond-Point du…

路面電車でトコトコ、史跡と文化系スポットを巡るノスタルジック熊本まち歩き

ノスタルジックな路面電車が走る城下町、熊本。 歴史ある神社や庭園、カフェに本屋さんをめぐる、ちょっと文化系な熊本さんぽのご案内。 ガイドブックにあまり載っていない場所も多いけれど、フォトジェニックな風景がきっと見つかる一日観光コースで女子旅や一人旅におすすめ。 まずは熊本藩主ゆかりの名庭園からスタート。市電の1日乗車券を使えば、主要な見どころが回れてしまいますよ♪ 1 水前寺公園(水前寺成趣園) 水の都、熊本ならでは、湧水の絶えることのない池や、東海道五十三次を描いた庭園など見どころいっぱいの観光名所。熊本の伝統野菜「水前寺菜」のモデル圃場も。⇒ 地図 2. 出水神社(いずみじんじゃ) 水前寺公園の中にある、熊本藩歴代藩主を祀る神社。朱色の鳥居が連なる向こうに、東海道五十三次を模した庭園が見える眺めの良いカメラポイントでもあります。境内には神水「長寿の水」もあるので、ぜひ喉をうるおしてみて。御朱印もいただけます。 ⇒ 地図 3. 古今伝授の間 清らかな湧き水の池を抱く桃山式庭園を眺めながら抹茶とお菓子がいただける、水前寺公園内の建物。熊本県指定重要文化財にも指定されている茅葺きの屋敷は、約400年前に京都御苑の八条宮家の御学問所だったもので、明治になってから細川家に下賜されたものだそう。 そんな雅な建物のなかで、富士山を模した山を眺めながらのお茶は格別な体験なので、ぜひ水前寺公園を訪れたらこちらで休憩を。⇒ 公式サイト 4. 味噌天神(本村神社) 熊本の路面電車の駅名にもなっている、1300年の歴史を持つ古社。日本で唯一、味噌のご利益があるそうです。 5. インド食堂 熊本市内を走る路面電車の「味噌天神」駅から徒歩10分くらいの本格的なインド家庭料理の店。ビーガン向け料理、ハラール料理なども揃え、美味しいカレーを求めてランチタイムは若い人たちでいっぱい。店内のインテリアもとってもおしゃれです。お持ち帰りできる瓶詰めのアチャールもおいてあるので、通な熊本土産にも良いかも。⇒ 公式サイト 6. 熊本県立劇場 JR水前寺駅から徒歩約10分、路面電車の味噌天神電停から徒歩約15分のところにあるコンサートホール&演劇ホール。1982年竣工、晩年の前川國男が手がけたモダニズム建築がすてきです。熊本には他に前川が手がけた熊本県立美術館もあり、こちらも名建築として有名。 7. 健軍神社 熊本市で最古社で、阿蘇神社の末社の一つだそう。 境内は広く立派で、参道は1200mもあり、加藤清正が植えたと伝わる杉並木の一部も残ります。 御祭神には、健軍大神(けんぐんおおかみ)、健盤龍命(けんばんたつのみこと)、阿蘇都媛命(あそつひめのみこと)、神渟名川耳命(かんぬながわのみこと)、国造速瓶玉命(くにつくりはやみかたまのみこと)、草部吉見神(くさべよしみのかみ)、ヒメミコガミ、彦御子神(ひこみこがみ)、ワカヒメノカミ、新彦神(しんひこがみ)、シンヒメカミ、若彦神(わかひこかみ)、ヤヒメカミなど、神話に詳しい人でも知らないかもしれない名前がずらり。御朱印もいただけます。⇒ 地図 8. 長崎次郎書店 明治22年創立の県内最古の書店。長崎次郎書店は、文豪・森鷗外が『小倉日記』のなかで「書肆の主人長崎次郎を訪ふ」と記した場所。大正13年に建てられた現在の建物は『国登録有形文化財』に指定されている。書店員さんのおすすめは必見。⇒ 地図…

ネクラノヴァ通りの集合住宅

チェコ、プラハのキュビズム建築めぐり

20世紀初頭に、ピカソやブラックが主導した切子を思わせる幾何学的なデザインが印象的なキュビズム運動が建築に適用されたのはチェコだけ。 現実とはほんの少しルールが違う異界に放り込まれた不思議の国のアリスのような気分になれる、ギザギザな世界を味わってみましょう。 キュビズム博物館 観光名所が多くにぎやかなプラハの中心地にある「ブラック・マドンナ」(黒い聖母の家)内にある美術館。 家具、絵、インテリア雑貨、照明や建築模型など、あらゆるキュビズムを堪能できます。 ここは建築も、最も多くのキュビズム建築を残したというヨゼフ・ゴチャールが手がけ、中にあるカフェまでキュビズムです。 グランド・カフェ・オリエント(Grand Café Orient) キュビズム美術館がある「ブラック・マドンナ」にあるカフェ。照明からコートハンガー、カップ&ソーサーまでギザギザや多面体! ⇒ 公式サイト ブラック・マドンナ(黒い聖母の家) 観光名所が多くにぎやかなプラハの中心地にあり、キュビズム美術館やカフェを併設する「ブラック・マドンナ」(黒い聖母の家)(1912)。手がけたのは最も多くのキュビズム建築を残したというヨゼフ・ゴチャール(1880-1945)。 外見もさることながら、中の階段のあしらいがすばらしい。 フラッチャニの二世帯住宅 最も多くのキュビズム建築を残したというヨゼフ・ゴチャール(1880-1945)が手がけた住宅。プラハ城の裏手の閑静な住宅街にあり、観光名所ストラホフ修道院へ向かうトラムで途中下車すると簡単に行くことができる。 あまりギザギザが強調されていない控えめなキュビズム。それもそのはず、この邸宅は、アール・ヌーヴォー様式で進んでいたものに、途中からキュビズムを足していったのだそうだ。⇒ 地図 ネクラノヴァ通りの集合住宅 チェコのキュビズム建築を代表する建築家のひとり、ヨゼフ・ホホルの代表作と言われている「ネクラノヴァ通りの集合住宅」(1913-1914)。宝石を思わせるプリズム型のモチーフが、殺風景になりがちな白い壁面を立体的に彩っている。白い箱のような建築に見慣れない斜めの直線が加わっただけで、こんなに前衛的に思えるなんて。すごく変わっているものよりも、錯覚かもしれないと思う程度に変わったもののほうが、より深い印象を残すものなんだなぁ、と、この建築をみてしみじみ思う。 キュビズム建築が多数残るヴィシェフラト地区にある。 ⇒ 地図 コヴァチョヴィチ邸 チェコのキュビズム建築を代表する建築家のひとり、ヨゼフ・ホホルによる「コヴァチョヴィチ邸」(1912-1913)。一見シンプルで機能的な現代の建築のようだが、よく見ると、ギザギザの柵、カクカクとしたパターンが連続する壁面などが普通とは違うことに気づく。鋭利なナイフで慎重に削ぎ落としたような壁面に入る陰影が印象的な邸宅だ。 キュビズム建築が密集するプラハのヴィシェフラト地区にある。⇒ 地図 ヴィシェフラトの三世代住宅 チェコのキュビズム建築を代表する建築家のひとり、ヨゼフ・ホホルが最初に手がけたキュビズム建築「ヴィシェフラトの三世代住宅」(1912-1913)。 門扉や窓枠がギザギザしているが、屋根の形などは昔風でかわいらしい印象。キュビズム建築が密集するプラハのヴィシェフラト地区にある。⇒ 地図 チェコスロヴァキア・レジオン銀行 最も多くのキュビズム建築を残したというヨゼフ・ゴチャールが手がけた銀行。「あれ、キュビズムなのにギザギザじゃない?」というのが第一印象。この果てしなく○が連なる不思議なスタイルは、後に「ロンド・キュビズム」と呼ばれるようになる建築様式。 銀行内部。ガラスの天井からは明るい光が射しこみ、実際にたたずんでみると、その豪華さに圧倒されてしまう。世界の美しすぎる銀行ランキングというのがあったとしたら間違いなく上位に入りそう。 この建築の成功により、ゴチャールはチェコを代表する建築家として不動の地位を得たのだそう。⇒ 地図 アドリア宮…

丹波篠山、民藝の名所めぐりの旅

日本六古窯のひとつ、丹波焼で有名な丹波篠山。レトロな城下町として観光客に人気ですが、バーナード・リーチや河井寛次郎に技術を学んだ窯元が今も残る民藝の聖地でもあります。 ぜひ素敵なうつわを探す旅を楽しんでみて。 丹波古陶館 日本六古窯のひとつ、丹波焼の歴史と作品に触れられる、民藝ファンはもちろん、うつわ好き、歴史好きならマストゴーのギャラリー。ショップでは丹波焼の器も買えます。 丹波焼立杭登窯 丹波篠山市、多くの窯元が集まる今田町に現存する日本最古の登窯で、築窯は明治28年(1895年)。兵庫県の有形民俗文化財でもあり、今も年1回焼成を行っているそう。 丹波焼について学ぶなら外せない名所のひとつです。 俊彦窯 丹波篠山にある、河井寛次郎の孫弟子にあたる清水俊彦さんの窯。シンプルで日々の暮らしに重宝するうつわが並びます。 丹窓窯 丹波立杭 (たちくい) 焼の窯元のひとつ。7代目の市野茂良さんはイギリスのバーナード・リーチの工房でスリップウェアの技術を学んだ経験のある貴重な日本人の一人で、今も店舗にはスリップウェアの器が並んでいます。風情ある建物も素敵なショップ。窯元が多く集まる今田地区にあります。民藝の歴史に触れられる貴重な場所のひとつ。 岩茶房丹波ことり スリップウェアを多く手掛ける丹波の陶工、柴田雅章さんの器で食事ができる古民家カフェ。堀端の旧武家屋敷を改装した店内にはショップスペースも有り、うつわを買うこともできます。 Taos ゲストハウス 丹波篠山にあるおしゃれな古民家宿。日本の伝統美を活かしつつも、モダンに整えられたインテリア、使い放題の民藝のうつわなど、美意識に溢れている宿です。 キッチンや洗濯機も完備で長期滞在にもぴったり。一日一組限定で6名まで泊まれますが、2名で泊まっても一人あたりの宿泊費はとてもリーズナブル。せっかく城下町に泊まるならこんな宿にステイしたいものです。

『縄文神社』著者・武藤郁子さんに聞いた、縄文時代×神社=縄文神社の魅力 とは?

――武藤さんが縄文に代表される古代史に惹かれるようになった原体験はありますか?  私の家は埼玉県にあるのですが、ちょっと土を掘ると土器の欠片が出てくるような地域で。子どもの頃から、よくかっこいい土器の欠片を探して遊んでいたんです。 ――今回「縄文神社」というテーマで神社巡りをはじめたきっかけは何ですか? 実は7・8年くらい前から、縄文遺跡と神社が重なる場所をリストアップしていました。2020年3月からコロナ禍で、いくつかのお仕事が延期になったことをきっかけに、本気でリサーチを始めたんです。 遺跡×神社でざっくり調べただけでも思った以上に数があったので、これはただごとではないぞ……と感じました。 出典:『縄文神社 首都圏編』(武藤郁子著、飛鳥新社 2021年) ――「縄文神社」という名前も素敵ですよね。 そう呼んでみたらイメージが定まって、「強くていいな」と感じたんです。そこからさらにリサーチを重ねていたら、周りの人たちに「本にした方がいい」と言われるようになって、2020年5月に書籍化が決まりました。 今年6月に出版してみたら、歴史に興味なさそうな方にも反応してもらえたのが意外でしたが、嬉しかったですね。 ――ちょうど縄文遺跡群が世界遺産登録、というニュースがありましたが今、縄文が注目される理由は何だと思いますか? まずは、縄文と言われる時期を見てみると、長い! 1万3000年もの間を縄文時代と呼んでいて、弥生時代から現代の長さの何倍もあるんです。 また、縄文時代というのは、世界史的に見ると非常識な時代なんですよね。どう非常識かというと、狩猟採集でありながら定住という、世界的に見ても特殊な文明が発達していたこと。どんどん世界の常識は変わっているので、この縄文へのイメージも、また発見によって変わってくるとは思いますが……。 縄文時代は理想化されやすいのですが、私の中では「私たちと同じだな」と感じる部分があります。 例えば、今の時代は問題を抱えながらも、法治国家で福祉も充実しています。縄文時代も戦いが少なく、資源を分け合いながら比較的穏やかな時代と考えられています。 そう考えると、今とそう変わらないのかもしれません。 ――ほかにも現代と縄文時代で似ているものはありますか? 縄文と現代では動物に対する思いも似ていて、たとえば食料にするために育てていたはずのイノシシが丁寧に埋葬されていたりするんですね。私の勝手な想像だと、たぶん子供の頃から育てていたイノシシを、結局食べられなかったんじゃないかと。そして、そのことを社会も許してくれていた。このような動物への意識は、弥生時代くらいから変わってくるんですよね。 ――今との共通性を感じられるからこそ、縄文時代が人気なのかも知れませんね。今回の書籍のテーマである「縄文神社」ならではの魅力についても教えてください。 縄文神社は、どこも朗らかで清々しい雰囲気だったことが印象に残っています。「怖いな」と感じる場所はなかったですね。空気が循環していて、滞りがない、バランスのいい場所という感覚でした。 ただ、何度も参拝している神社でも、感じ方が以前とちょっと変わった気がします。”縄文マインド”を植え付けた状態だったからこそ、そう感じたのかも知れません(笑)。思いを持ってその場に立つことで、見えるものも感じることも変わってくるのですね。 ――確かに。意識しないと目に入らないこと、感じられないことってありますよね。 また、巨石信仰は縄文からだとされる方がいるのですが、巨石は弥生時代以降の新しい信仰のようなんです。縄文時代は、加工した石を信仰していました。きっと、その当時は加工した石が貴重だったからだと思います。 今回取材させていただいた七社神社では、縄文時代の遺跡から出土した石棒をモデルにお守りを作られたそうです。再現するのは今の技術でもかなり難しかったそうですよ。高い技術力もある時代だったこともわかります。 ――最後に『縄文神社』を手にした人へ、メッセージをお願いします。 『縄文神社首都圏編』 ぜひ、本に載っている神社を訪ねてみて欲しいです。いくつか肌で感じて「なるほど」と思うようになれば、自分でも探せるようになります。ぜひ数千年の時を超えて存在する祈りの場所を体感してみてください。 ――ありがとうございました! ■『縄文神社』著者・武藤郁子さんに聞いた、縄文神社的視点で楽しむ大山信仰 (写真・文:武藤郁子さん) 神奈川県が誇る霊山・大山に対する信仰は、縄文時代から始まっていました。大山山頂からは縄文の遺物、山麓にはたくさんの遺跡が発見されています。代表的な縄文神社2社にお詣りして、元気をいただきましょう!…