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奈良、飛鳥時代から続く薬草の里・宇陀の古民家で癒やしのヘルシーランチ&薬草散歩

奈良、飛鳥時代から続く薬草の里・宇陀の古民家で癒やしのヘルシーランチ&薬草散歩

奈良を旅行するなら、やはり神社仏閣、そして鹿よね……などと考えがちな皆さん。今回は、そんな紋切り型のイメージとはちょっと違う、知られざる奈良の旅をお届けしたい。

ここは奈良の東側、宇陀市榛原八滝。山と、ぽつりぽつりと点在する古民家が見えるのみの、時が止まったかのような深山の里だ。

田舎らしい田舎を持たない私は、ドライブなどでこういった古民家の脇を通り過ぎる度に、「こんな家がうちのおばあちゃんちなら良かったのに」と憧れたものだ。いくら素敵でも、車を降りて家の周りをうろつこうものなら、完全に不審者になってしまう山奥の集落は、遠くからそっと眺めるしかない「手の届かない場所」だった。

しかし、今回は、この古民家の周りを徹底的に歩き回ることができた。なぜならここは、創作イタリアンのレストランでもあり、古民家オーベルジュでもある『うだ薬湯の宿 やたきや』だからである。

うだ薬湯の宿 やたきや
『うだ薬湯の宿 やたきや』は2022年5月に開業。元は庄屋だったという築300年にもなる古民家は、一時とある大学教授の別荘となっていたものを、宇陀市内にある畳店3代目が取得し、宿として再生させたという。立派な門に期待が膨らむ。
今では貴重となった茅葺き屋根が見事な母屋。
玄関前の絶景。

■ 飛鳥時代からの薬草の里ならでは、体の中から癒される珠玉のランチコース

さっそく『うだ薬湯の宿 やたきや』の母屋へ足を踏み入れてみよう。古民家ならではの建具や欄間の美しさ、額縁のような窓越しに広がる美しい庭などに思わずため息が漏れる。

交通アクセスは悪いけれど、わざわざ来る価値がある素敵すぎる空間。着いたばかりだけど、「絶対また来る!」と早くも再訪を決意したほどだ。

やたきやは「宿」と謳っているものの、ランチやディナーなど食事だけの利用も可能。今回は、宇陀牛メインの「たまひコース」をいただいた(税込6,600円程度)。パスタがメインの「やをらコース」なら税込3,850円〜とさらにお手頃。この空間で食事ができるという体験も含めるとかなりリーズナブルな印象である。

古民家ランチなら日本のあちこちにあるだろう、という声もあるだろうが、「やたきや」が特別なのが、ここが飛鳥時代から続く薬草の里にあるということ。宇陀は推古天皇が日本で最初の薬草狩り(611年!)を始めた地として知られ、ツムラ、ロート製薬、アステラス製薬など、日本を代表する製薬メーカーの創始者もこの地の出身。こういうところに「日本建国の地」と言われる奈良の底力を感じる。

特に「やたきや」が力を入れているのが自家栽培をしているという奈良の伝統的な薬草である大和当帰血行促進や女性特有の不調を整える効果があるとされ、漢方薬などにも使われてきた薬草である。

この大和当帰を使ったクラフトコーラでまずは乾杯!

大和当帰に加え、シナモン、クローブ、カルダモン、コリアンダー、黒胡椒なども入ったスパイシーなドリンク。
採れたて野菜のミックスサラダ。
前菜の盛り合わせ。右上から、豆腐のスモーク粒マスタードのせ、ズッキーニのグリル、セミドライミニトマト、椎茸のマリネ。
本日のスープ、グリーンカリフラワーのポタージュ。
わらびとそら豆とフレッシュトマトのパスタ

と、ここまでは完全にベジタリアンメニュー。ひとつひとつ、野菜の個性を引き出すよう調理されている。何もかも美味しい!

そしていよいよ、メインの宇陀牛。

脂身が少なく、しっとりやわらかい宇陀牛。美味!
本日のデザート。ナッツとさつもいものケーキにいちごを添えて。散らされている茶色い粒はカカオニブ、白い粒は麻の実だ。

しみじみ美味しく、体の中が浄化される気分になれたほぼ野菜づくしのランチ。何度も言うけど、絶対また来ます…!

■ 薬草ウォッチングも楽しい、宿のまわりの散歩コース

さて、食事の後は腹ごなしに宿の周りを歩いてみることに。今回は取材ということで、特別に地元の薬草に精通したスタッフの方に、この地の薬草について教わりながら歩いてみた。こうしたアクティビティは本来は宿泊客向けに提供しているとういう。

まずは宿から少し山を登ったところにある「めぐみの庭」「まなびの森」と名付けられたエリアへ。このあたりの散策の醍醐味はとにかくその絶景で、宇陀の里山を見下ろしながらのんびり過ごす宿泊客が多いとか。

小高い場所から見下ろすと、「やたきや」の端正な建築がまるまる拝めてなかなか良い。

周囲は完全な里山なので、ここに泊まって何をするのだ? と最初は思ったが、こうして自然の中に足を踏み入れ、歩いたり、森林浴をしたりするのも立派なアクティビティと気付いた。旅先で「何もしない」が苦手な人は(日本人に多い)、一度修行だと思ってここに数日滞在してみてはいかがだろうか。多忙な日々から逃れてきたはずなのに、なぜ旅先に来てまで、私はあくせくしているのだろうか? と目が覚めるかもしれない。

次に向かったのは宿の前に広がる薬草園。無農薬で大和当帰を栽培しているところは非常に珍しいのだそう。

「ここが畑ですよ」
「大和当帰はこちら」

畑を見学したあとは、徒歩10分程度の神社までぶらぶらとお散歩。歩きながら、ガイドさんが道端に生えている薬草を見つけては色々教えてくれる。これはよもぎ、これはセリ、カキドオシは糖尿病に効能が……などなど。さすがは古来から続く薬草の里、本当にそこらじゅうに薬草が生えていた。

そして目的地の神社に到着。

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宿の近所にある五社神社。

こんなにこぢんまりした神社なのに、なんと20年に一度社殿を建て替えているそうで、歴史があるのに真新しい印象だ。式年遷宮は、伊勢神宮とか春日大社クラスの神社が行うものとばかり思っていたので、このこぢんまりとした神社で続けられてきた事実にびっくり。

さらに、この神社の隠れた見どころとして、幕末、孝明天皇から「日本一」と称賛されたという逸話が残る、当時一流の石工、通称「丹波の佐吉」(1816年生まれ)による狛犬が残っていること。

丹波の佐吉作の狛犬。わざわざこの狛犬だけ見に神社を訪れるファンもいるそうだ。

「なぜ巨匠の作品がこんなところに…?」と言っては失礼なのだが、大阪を中心に活動していた佐吉がこの地に狛犬を残しているのには理由がある。この神社のすぐ近くに住む裕福な旧家が、家の裏山に「四国八十八ヶ所」の石仏群を制作してほしいと佐吉に依頼したため、しばらく彼はこの地に滞在していたのである。その仕事の合間に、近隣の神社仏閣向けに狛犬や石仏なども制作したというわけだ(詳細はこのサイトに詳しい)。

里山の美味しい空気、心癒される風景の中で、歴史秘話や、道端の薬草について話を聞きながら散歩するのはとても楽しかった。自然の美しさだけでなく、歴史まで楽しめるのが奈良の山歩きの醍醐味である。

ということで、さらにディープな奈良の里山歴史探訪を楽しむべく、今夜は「フェアフィールド・バイ・マリオット・奈良天理山の辺の道」に宿泊し、隣接する日本最古の道「山の辺の道」を歩いてみることにしよう。

続きは次の原稿で!

「なら歴史芸術文化村」に隣接している歴史ファンに嬉しいホテル。
すっきりと機能的な客室。
奈良のご当地ビールなど奈良グルメも買えるロビーラウンジ。

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