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穴場のお屋敷さんぽ、世田谷の小坂順造邸にはコネタがいっぱい!

更新:2016年12月14日
みきP

観光名所になるほどの超有名なお屋敷ではないからこそ、ありのまま残っていて昭和の文化史博物館のようになっている世田谷の隠れスポット、旧小坂邸。写真撮影OKで無料のガイドもしてもらえる、建築好きにもおすすめの穴場をご紹介します。

「深沢よりすごいのは岡本。岡本ってエリアにはいわゆる最寄駅が存在しないわけですけど、岡本に住んでる人たちはそもそも電車になんて乗りませんね。」(『TOmagazine 世田谷区特集号(世田谷感100 上編)』)と、世田谷出身の評論家、坪内祐三さんが対談の中で、「高級住宅街と言われる世田谷の中でも屈指」として語っている岡本。
お屋敷好きがこじれて、高級住宅街ウォッチングが趣味になってしまった私としては、以前から気になっていたエリアのひとつです。

岡本のお屋敷のひとつ、演劇人にとって憧れの「無名塾」。こんなお屋敷がずらりと並ぶ圧巻の高級住宅街です。

二子玉川からも用賀からも歩いて20分以上かかる岡本エリアは、多摩川の流れに削り取られて作られた眺めの良い崖の上にあり、かつては岩崎久彌(三菱財閥3代目総帥)や鮎川義介(日産コンツェルン創始者)、久原房之介(日立製作所創業者)などの財界の大物たちが別荘を構えていたという歴史があるまち。そんな華麗な別荘地だったころの歴史を今に伝えるのが、無料で見学できる「旧小坂家住宅」、正式名称「世田谷区立 瀬田四丁目旧小坂緑地」です。政財界の別邸で現存する唯一のもので、この地区の文化史的にも価値のあるお屋敷です。



小坂順造は衆議院議員や日本発送電総裁などを務めた政治家、実業家(1881年〜1960年)。こちらのお屋敷は昭和12年に別邸として建てられ、当時の流行の古民家風のアレンジを加えていたり、和洋折衷の洋室があったり、さすが電力関係の重鎮とあって、戦前なのにセントラルヒーティングだったりと、日本の建築史的にも価値の高いものになっています。戦争中、横山大観が3ヶ月ほど上野から避難して暮らしていたというエピソードも。

このお屋敷が良いのは、ボランティアガイドさんがいて、声をかければ解説付きで見学ができること。素人が何気なく見ていると気づかないコネタ、というか建築史、文化史に触れられるので絶対にガイドさんに色々教えてもらうのがおすすめです。

玄関を入ってすぐに目に入るのが、日本家屋ならではのさっぱりとした茶の間と居間。


入側で使われている縁桁(えんげた)には、10メートル以上の1本ものの京都北山杉の磨き丸太が使われています。

茶の間と居間の間にある桐の一枚板に描かれているのは「五三の桐」。皇室・朝廷の副紋として五七の桐がよく使われているように、桐はとても格式の高い文様。

玄関脇には茶室も。家の主人が出入りするための「火灯口」(かとうぐち)があります。

こちらは茶室横の書斎。マントルピースの上の丸い金色のくぼみには仏像があったそうで、まさに和洋折衷。

このお屋敷の特徴は「雁行型」(がんこうがた)といって、建物が斜めに並んでいるそうなんですが、その建築様式を確認できるポイントがこの書斎の窓からの眺め。確かに建物がジグザグを描き平行になっているのがわかりますね。

住み込みの女中さんが二人いたという小坂邸。昭和12年なのに各部屋からブザーを鳴らして呼ぶ仕組みになっていたそうで、ハイカラというか最先端の住宅だったのですね。さすが電力界の大物のお屋敷。

そしてこちらは更衣室。いまでいうウォークインクロゼットになっていてすごい、と思いつつも、昔ながらの桐ダンスや鏡台の素朴な佇まいにちょっとホッとします。

と、ほっこりしてたら、この鏡台もわりとお値打ちもので、1934年に日本初のクリスタルガラス専門工場として誕生し皇室御用達でもあったKAGAMIの特注品なんだとか。小坂家の家紋が掘られています。やっぱりいちいち立派ですね……ホッとしている場合か。

そして、一番奥には洋室の寝室とサンルーム。真鍮のシャンデリアに、格子模様のガラスはステンドグラスだそう。

このソファに座ってぼんやりしてると時を忘れますね……。

元は別邸(別荘)だったこのお屋敷は、渋谷の金王町にあった住居が戦争で焼けてからは、小坂家の住居となり、小坂順造死後も奥様が暮らしていたそうで、ステレオなどが残されています。

このステレオは昭和39年に日本橋の高島屋で奥様が購入されたもので、レシートも残っています。昔のお金持ちの家にこういうの、ありましたよね。中にしまわれているLPレコードもなかなかレトロでいい感じでした。

こちらのストーブもアンティークですてき!と思ったのですが、実はこれ小坂家のものではなく、お近くの岩崎邸で使われていたものなんだそう。世田谷区の文化財になってから、捨てるにしのびなくてこのお屋敷に運び込まれ飾られているそうです。

この小坂邸は敷地が2800坪もあり、崖の地形を生かした高低差のあるひろびろとした庭園も見どころ。昭和の暮らしを体感できる建築ウォッチングを楽しんだら、ぜひお庭も散策してみましょう。

坂を下ります。

どんどん下ります。結構な坂道です。



人んちの庭ということを忘れさせる広さ。なんというか、完全に林です。かつてこのあたりはいちめん雑木林だったそうですが、その頃の風景はこんな感じだったのだろうなぁと思いつつ、深呼吸。

立派な竹林もあります。

大充実の無料で楽しめるお屋敷さんぽ、近くにある三菱財閥ゆかりの「静嘉堂文庫美術館」とあわせて歩けば、戦前の世田谷の別邸文化をよりいっそう味わえるはず。休日に混雑を避けてぶらり歩いてみてはいかがでしょうか?(みきP)

・ 旧小坂家住宅

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