そのルックスをひと目見ただけで、他に何の情報がなくとも「かわいい!行く!」と思えてしまう、アピール力が強すぎるアルベロベッロ。南イタリア、プーリア州にある、人口1万人ほどの小さな町だ。
この町の写真を最初に見たのはもう25年も前になる。その時からずっと、いつかは行くリストに加えていたフェアリーテイルな世界遺産、ついに念願かなったので、一泊二日の旅を詳細にレポート! おすすめのレストラン、宿、バーリからの行き方もシェアしますぞ。
■ アルベロベッロで観光…さて、何をするべきか。
バスか列車でバーリからアルベロベッロ駅に着くと、あなたは一瞬「あれ…トンガリ屋根のかわいいおうちは…?」とがっかりするかもしれない。まず目に飛び込んでくるのは、こんな「普通の風景」だからだ。
実はトンガリ屋根の大集合エリアは、駅から歩いて約10分ほどのところにある。地図でいえば、このあたりを目指すといい。
ここまで来れば、もう期待どおりの風景。
トゥルッリと呼ばれるトンガリ屋根の家が見渡す限り広がり、その愛らしさに悶絶。
トゥルッリ群へと足を踏み入れれば、土産物屋やレストラン、カフェ、雑貨屋などがひしめき、観光客でいっぱいだ。まずはのんびりショッピングを楽しむのもいい。
たとえば、こんなお持ち帰りできるちっちゃなトゥルッリが売られていたり、
素敵なファブリックのお店や、
インテリア雑貨店など、眺めていて飽きない。
■ アルベロベッロで最大の遊びは「奇跡の一枚」を狙う大撮影大会!
買い物に興味がない人は、ひたすら写真を撮るのもおすすめだ。なにせ「フォトジェニックが最大の売り」と言っていい町なのだ。「奇跡の一枚」を狙うチャンス!
迷路のような小道へ迷い込めば、どこだって撮影ポイントなのだが、強いて挙げれば、以下が人気の撮影スポット。地図でいえばこのあたりだ。
ミステリアスな模様が描かれたとんがり屋根が整列する様子は、まさに絵葉書のよう。この模様にはお守りの意味があり、原始宗教や呪術の表象記号だとか。
このフォトスポットの目の前にあるアクセサリー店Ars Creandiには、屋根に描かれた模様や、生年月日別の表象記号を用いたネックレスやリングなどが買えるので記念におすすめ。なんと日本語の説明もあり、店主は日本びいきだ。
そしてこのエリアでもう一つのおすすめ撮影スポットが、町で唯一、日本人が経営している「陽子の店」。店に入ると、陽子さんが笑顔で「屋上へどうぞ!」と案内してくれる。この屋上からの眺めは、ただ歩いているだけではなかなかお目にかかれない絶景。
とんがり屋根が近い!
屋上からよく見ると、屋根の尖塔(ピナクル)がそれぞれちょっとずつ違うことがわかる。これは職人の署名代わりなんだとか。
ちなみに、このトゥルッリ、なぜこんな形になったのかといえば、税金逃れのため。かつてこの地を治めていたナポリ王国が税金を屋根の数に応じてかけたため、さっと解体できる石組みの屋根の家にしたのだとか。
家の間口3間ごとに税金をかけられた京都の町家が、やたら間口の狭い「うなぎの寝床」になった歴史を思わせる。誰だって税金はできるだけ抑えたいのである。
陽子さんの店には、おいしいプーリア名産などが売っている。私は開封しなければ一年持つというプーリア地方の名産、高級リコッタチーズのカチョリコッタを買った。味見させてもらったがとってもクリーミーなヤギのチーズで、パスタやサラダにすりおろして食べるといいとか。
ただ、今まで紹介したエリアは、言ってみれば原宿の竹下通りのようなもの。奇跡の一枚を狙いたくとも、人が写り込まない瞬間を狙うのは、特に日中は難しい。
そんな人におすすめなのが、公園を登った丘の上にある、閑静なエリア。土産物もまったくなく、わずかな宿があるだけの住宅街のような一角だ。地図でいえばこのあたり。
ここまで来れば記念撮影天国。奇跡の一枚を撮るのだ!
■ トゥルッリに泊まろう! 実際にステイしたおすすめホテル。
さて、来てみてわかったのだが、アルベロベッロはわりと日帰り客が多い。日中はあんなに人でごった返していたのに、夕方ともなると皆どこかへ去っていき、ぐっと町は静かになる。
しかし、アルベロベッロはご覧のように時間帯ごとに表情を変える町。せっかくなら朝や夜などさまざまな時間帯の景色を堪能したいもの。しかもあのかわいいトンガリ屋根を利用した宿も結構あるのだ。
私たち女三人が選んだのはこちらのTrulli Quercus 。駅から歩いてすぐだが、上記のフォトジェニックなトゥルッリ大集合エリアではなく、普通の町の中に突如ある、いわば野良トゥルッリである。
Trulli Quercus URL
風情としてはメインエリアのほうがいいかもしれないが、ここはとにかく設備のメンテ状況も、清潔さも、ホストの親切さも素晴らしい。口コミも絶賛の嵐である。
ひろびろとした部屋が3部屋あり(1つは屋根裏部屋、それぞれダブルベッドがある)、さらにリビングに小さなベッドエリアがあり、バスルームも2つあり最大6人まで宿泊できる。
駅とトゥルッリ群のちょうど中間といった立地も意外と便利。一泊200ユーロぐらいなので3人以上で泊まればかなりリーズナブル。
また、トゥルッリ群の中にあるレストランは時に観光客目当てだが、この宿があるあたりは言わば地元民御用達エリア。リーズナブルな店が近くにあるのも便利だ。
アルベロベッロは今では近代的な四角いビルなども増えているが、ところどころに野良トゥルッリが残っている。かつてはこのあたりの建物は全部トゥルッリだったそうで、開発しなければさらに凄まじい景色になっていただろうに、と惜しい気も。
■ 地元民に教わった、アルベロベッロのおすすめレストラン。
さて、とても親切な宿のホストが、おすすめのレストランを教えてくれたのでシェアしたい。ちゃんと地元のシェフが調理している店ばかりだとか。
Ristorante Il Pinnacolo(地図)
Ristorante La Cantina(地図)
上記2つは予約したほうがいい、と言われたが、ダメ元で行ってみたところやっぱり予約で満席だった…。前日までにホストを通じて予約しておくことを強くおすすめ。Pinnacoloはトゥルッリ群の中にあり立地も店の風情もいい感じで旅の思い出になりそうな店。でもメニューをチラ見したら美味しそうだったのはLa Cantinaのほう。Googleの口コミもLa Cantinaのほうが高い。行きたかったなぁ。
あとは、Ristorante “L’Aratro” di Domenico Laera(地図)、Ristorante Casa Nova(地図)、Il Guercio di Puglia(地図)、Trullo Garden(地図)がおすすめということだが、この日は予約無しで入れた、宿のすぐ近くのTrullo Gardenに決定。
店内はご覧のように高級感たっぷり。でも値段は普通なのでご安心を。しかも、外側からじゃわからなかったが、中に入ってみると、かつてのトゥルッリを改装したレストランだった。
ここはシーフードメニューが充実しており、
ふわふわの白身魚のフライやら、
マグロのカルパッチョやらを堪能。
名物のパスタの耳たぶ型のオレキエッテやらいろいろ頼んでお腹いっぱい。
あと、プーリアはロゼワインの名産地ゆえか、ボトル一本15ユーロぐらいだったりと破格。そしてすごく美味しかった。観光地にあるレストランではないので早い時間に行けば予約無しで入れるのもいい。夜遅くなると結構混み合っていたので、19:30の開店と同時ぐらいに行くのを推奨。
あと、レストランではないが、トゥルッリ密集地にあるこちらのワインバー、Trulli e Puglia Wine Bar(地図)も風情があって良かった。
プーリア名物のブッラータやハムなどをつまみにのんびりワインが飲めるお店。
こちらでもロゼワインを。そんなにお腹が空いていないけどさくっと何か食べたい時に立ち寄りたい店。
■ バーリからアルベロベッロへの行き方
最後にアクセス情報を。浮世離れしたルックスゆえ、よほど辺鄙な田舎にあるのだろうと思い込んでいたが、実は都市部からのアクセスは結構至便である。
近くの大都市、バーリ(Bari)まで行けば(イタリアの主要都市から列車もしくは飛行機で行ける)、あとは列車とバスがばんばん走っている。バスはチケットをオンラインで簡単に買えて片道4.4ユーロ。
土曜日の朝は「本当に全員乗れるの!?」と不安になるほどごった返すバーリ行きのバス。ターミナルは駅のにぎやかなほうとは反対側にあるので要注意(バスはこのあたりに来る)。ちなみに絶対全員乗れない!と思っていたが、何台も来るのでご心配なく。ただ最後の数人は席がなくなって床に座らざるを得なかったので、バス停には早めに行くのが吉。30分前には着いていたい。
電車ならバーリからアルベロベッロまでは約1時間40分程度で、1~2時間に1本程度あるとか。ただ日曜日は電車がないのでバス一択。そして、この記事によると利用難易度もかなり高そうである。バスは利用が非常に簡単だったし、バスで行くほうがいいんじゃないかな…。
■アルベロベッロだけじゃもったいないらしい、近隣の美しい村。
なお、今回は週末弾丸旅行だったのでアルベロベッロのみ訪れたが、現地で出会った旅人によれば、実は近隣のロコロトンド(Locorotondo)やマテーラ(Matera)もとても美しいらしい。ここまで来たら行かなきゃもったいないよ!と言われたが、時間切れ。
ロコロトンドは「イタリアの最も美しい村」の一つで、アルベロベッロから列車で40分くらいで行けるので、ちょっとトンガリ屋根に飽きたらさくっと移動できそう。マテーラは世界遺産でもあり、数々の映画のロケ地にもなっており、フォトジェニックだ。
アルベロベッロでレンタカーして近隣の小さな美しい村をめぐる旅なんて、素敵ではないか。次回こそ!
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