東京、それは究極の麺とスープを武器とする頂上決戦が日々繰り広げられているラーメン激戦区。その最新トレンドやいかに? 今こそチェックしたい注目店は? 『石神秀幸ラーメンSELECTION』など数々の麺著…いや名著を世に送り出してきたラーメンエディター・佐々木正孝さんが、イチオシの5店を教えてくれました!
――佐々木さん、
高校生まで過ごした秋田でもラーメン好きではありましたが、食べ歩くほどの文化資本がなく、大学進学と共に上京。東京でラーメン専門店に本格的に出合ってからはラーメンのまち荻窪に移り住み、ラーメン三昧の日々をおくりました。
ちょうど90年代中盤で、『中華そば青葉』『麺屋武蔵』『らーめんくじら軒』(1996年に創業し、96年組と定義されるレジェンド店)をはじめ、新たなトレンド、注目店がボコボコ出てくる、まさに「毎年がヴィンテージイヤー」でした。
この黄金時代、現代ラーメンがブレイクするプロセスを目の当たりにしたのが原点ですね。
――毎年がヴィンテージイヤー! そんな豊漁を体感してきた佐々木さんが今思う「ラーメン」の魅力とは?
主要なスープタイプだけでも醤油、塩、味噌、豚骨、鶏白湯、煮干し、豚骨魚介など幅広く、さらに麺のタイプや具材の合わせ、香味油やスパイスの使い方で無限のバリエーションがあります。
歩くほどに新たな一杯に出会える、まさに味の無限遊園地や~! といった趣。新店は続々登場するし、名店も味をリニューアルし続け、地方の強豪も刃を研ぐ。必食! とリストアップしている全国、世界のラーメン店はおそらく生涯のうちに食べ切れることはないでしょう。
スープがないラーメン(まぜそば)や、そば粉入りの麺使いがあれば、麺なしラーメンなんてのもあり、「ノールールがルール」なのもラーメン。「こんなのラーメンじゃない!」と言う瞬間が来たら自分は終わりだと思ってます。
――海のような深さのラーメン愛。佐々木さんの“終わり”を見る日はきっと来ない…そんな気がしております。最近のトレンドの傾向もぜひ!
大きく5つのトレンドがあります。詳しくご紹介しましょう。
●トレンド1 「和ハーブ」
生姜や山椒などの和ハーブを取り入れるラーメンが増えています。近年はスパイスを前面に押し出したラーメンが人気ですし、唐辛子・山椒で辛味・シビれを演出する汁なし担担麺も増えてますが、そこまで刺激が強くなく、生姜のじんわり滋味、山椒の爽やかさを感じさせるラーメンは女性にもおすすめですね。
●トレンド2 「洋風スープ」
生ハムで出汁をとる洋風アプローチ、アニマルオフ/フィッシュオフ(豚骨や鶏ガラなどの動物系、煮干しやカツオ節などの魚介系を使わずに野菜で出汁をとったりする)などが登場。トンコツや魚介系といった、これまでのラーメンスープの香り、味わいとはまったく違うファーストインパクトに驚かされます。
●トレンド3 「純手打ち麺」
むっちりとした太麺は従来からありますが、これはうどんか! と思うほどの極太で歯ごたえのある麺を手打ちで提供する店が今シーズンは注目です。
●トレンド4 「ミニ丼」
ラーメンライス、カレーといったワイルドなサイドメニューも今や昔。ラムコンフィごはん、ペコリーノごはん、よだれ鶏ご飯、ハマグリ丼など、かわいいミニ丼を出すお店が増えてます。
●トレンド5 「吊るし焼きチャーシュー」
ラーメンのチャーシューというと脂身が多かったり、やたらボリューミーだったりしましたが、去年ぐらいから「吊るし焼き」製法で仕上げたチャーシューが台頭。旨味充溢でちょっぴりスモーキーな味わいがハマります。
■ラーメンエディターが選ぶ、いま注目の5つのラーメンin東京。(写真・文:佐々木 正孝さん)
王子 キング製麺
品の良い白だしラーメンがメインですが、おすすめは「山椒ラーメン」。ふるふるとランダムに縮れた麺をすすると、華やかな山椒の香りが鼻にスーッと抜け、爽やかなあと口。和ハーブ系ラーメンの注目株です。
⇒ キング製麺
恵比寿 SAMAR(サマル)
人気店『サカナバル』がランチタイム限定で提供するラーメンブランド。生ハムベースにポルチーニ茸や香味野菜、ハーブをきかせた塩スープが絶品! 別添えのタプナード(南仏料理のペースト)で味変化も楽しんで。
⇒ SAMAR
人形町 駄目な隣人
ユニークな店名が目を引きますが、ラーメンはブイヨン・ド・レギューム(野菜のダシ)のスープに本醸造醤油のタレをきかせた意欲作です。しょうがコンフィの香味油を加えていて、食べたら思わず笑みがこぼれる後くち。
⇒ 駄目な隣人
浜松町 MENクライ
国産小麦100%の純手打ち麺は見てビックリ! ほうとう並みの太さでムッチリワシワシ歯ごたえのユニーク麺。ダシ感のきいたスープに合います。おまかせ丼、玉子かけご飯、漬け卵黄丼といったミニ丼もおすすめ。
⇒ MENクライ
巣鴨 惠中華そば(まるえ中華そば)
気持ちよさそうにちぢれ麺が泳ぐのは、透明度の高いクリアなスープ。塩味がビシッときいて旨みしっかりの塩ラーメンが楽しめます。味がしみて香ばしく、スモーキーな香りの吊るし焼きチャーシューも大満足。
⇒ 惠中華そば
<取材協力>
佐々木正孝:ラーメンエディター
ラーメン、フードに関わる幅広いコンテンツを制作。『石神秀幸ラーメンSELECTION』(双葉社)など多くのラーメン本を編集。SankeiBizでコラム「ラーメンとニッポン経済」を連載中。