岩手県二戸市にある金田一温泉郷。
はじめて名前を聞いたときは、「金田一少年に関係あるのか?」程度しか印象が思い浮かばないほど、イメージゼロ。先入観もゼロ。(二戸の皆さん、ごめんなさい!)
でも、まっさらな気持ちで訪れた知らない土地は、おいしいものがいっぱい! 一泊二日ですっかりファンになってしまうほどでした。今回は実際に訪れたスポットをご紹介します。
■新幹線から直行! 地元食「そばかっけ」に舌鼓
朝、東京から新幹線で2時間半強。ちょうどお昼どきに新幹線を降りたら、駅前にあるお食事処の「きんじ」へ直行。ここでいただいたのは、二戸の郷土料理「そばかっけ」です。
二戸在来種「岩手中生(いわてなかて)」を使用したシート状の蕎麦を、野菜や豆腐などの具材と一緒に鍋へ。食べるときは、にんにく味噌をつけながらいただきます。味噌をたっぷりつけると、日本酒が欲しくなってくる一品です。(要予約/2名~)
こちらのおみせでは、二戸産の玄そばと県産小麦「ゆきちから」を使った打ち立ての二八そばが人気。玄そばも「岩手中生(なかて)」を使用しており、現在はここでしか味わうことができないそうです。
軽く腹ごしらえをしたら、「そばかっけ」を食べながら欲しくなった日本酒を求めて酒蔵へGO!
■「南部美人」でふくよかな酒の香りにうっとり
二戸の酒と言えば、創業は明治35年(1902年)という有名な日本酒「南部美人」は外せない!? 東京に戻ってからも、二戸を思い出して、何度も飲んでしまいました。こちらでは酒蔵見学に参加。
ふくよかな酒の香りだけで「早く飲みたい…!」欲があふれてしまいます。こちらの酒造さんは二戸市内をはじめとする岩手県内の農家さんたちとの強い協力関係を持ち、酒米と地域の風土があらわれる酒造りにこだわっているとのこと。水は折爪岳の伏流水を仕込み水に使用しています。中には、全量地元の酒米「ぎんおとめ」使用の特別純米酒もありましたよ。
こちらではお酒の購入ができます。種類も豊富で、どれにしようか迷うほど。THE日本酒が苦手な方には、果実×日本酒のリキュールなんていかがでしょうか? 南部美人さんでは配送もしているそうですよ。
さらに! こちらにはお酒だけでなく、かわいらしいマッチもありました。もう胸キュン! このデザインは、日本酒好きにも和もの好きにも喜ばれそうです。
ちなみに酒蔵見学は11月~3月の期間限定ですよ。(要予約)
■手作りの南部せんべいに魅了される
見た目も味も素朴な南部せんべい。どうやらこの地方では「家にあって当たり前の品」とのことで、人によって「マイお気に入り南部せんべい」があるのだそう。知られざる二戸文化!
私の人生初の南部せんべいは、藤原せんべい店。そう、この日ここで出会ったせんべいが、初めて見て食べた南部せんべいなのです。まず困ったのが、メニューをみても何のことかわからない…。
「ハジキせんべい」というのは、規格外のせんべい(だからリーズナブルなのですね)。「せんべいの耳」は、丸い南部せんべいの端っこにある固い部分だけを集めたもの。「白せんべい」はごまがついていないプレーンせんべい。「耳なしせんべい」は、南部せんべいの端っこにある固い部分をはずしたせんべい。「耳付きせんべい」は、その固い耳部分がついているもの…とのことです。
ちなみに長距離持ち歩くなら、耳付きのほうが割れにくいらしいですよ。お土産の参考に。
さらに南部せんべいは、ただ食べるだけでなく、花見などの宴会で小皿としても活躍するそうです。いろんなお惣菜の味がしみこんだところで、最後に食べるのが美味しいとのこと。使い捨て小皿の代わりになるなんて、環境に優しいアイテムなんですね。東京暮らしでも、使い捨て皿の代わりにコレを使いたい!
この地域は稲作よりも小麦の生産が昔から盛ん。南部せんべいは、小麦粉、重曹、ゴマというシンプルな材料で作られているそうです。昭和37年、先代から続くこちらのお店では、昔ながらのレンガの窯を使って、ひとつひとつ手焼きをしていました。
炭火でじっくり焼き上げられるせんべいは、味わい深く、どれだけ食べても飽きません。
窯の下にある窓部分がちょうどご主人の膝あたりと言うことで、エプロンは同じ場所だけ焦げて破れている状態。いくつも当て布をして補強しています。熱い中でも、コツコツと人の手で作られている。そんな当たり前のことが、胸に響きました。
次は絶対、たくさん買って帰りたいと思います。
■かわいいお母さんたちと「てんぽ焼き」体験
藤原せんべい店のはす向かいにある「よりゃんせ金田一」は、地元のお母さんたちも参加する地域グループの拠点です。こちらでは、とってもかわいい地元のお母さんから二戸ならではの食べ物「てんぽ焼き」を教えてもらいました。
※普段はてんぽ焼き単体での体験は行っていないそうです。
てんぽ焼きとは、熱湯と小麦粉を混ぜて焼いたもの。天保の飢饉のとき、おなかを満たすために生まれたと言うこともあり、食べてみるともちもちしておりボリューム感満点です。
材料は小麦粉+熱々のお湯。想像以上の湯気にびっくり! こんな熱いものを手で混ぜるなんて、お母さんたちすごい…。
できた生地をまるめて、クルミやごまをつけます。
てんぽ焼き用の道具は鉄製。見た目よりも重い…! 絵柄もついていてオシャレです。これに挟んで、焼きます。
てんぽ焼きを焼いてるお母さん、逆光に映えて素敵でした。お母さんたちのほっこりとした雰囲気に、とっても癒やされましたよ~。
最後に、生地の両面が焼けたら完成です!
そのまま食べてもおいしいのですが、ハチミツをトッピングするとおやつ感がでます。余ったものはレンチンして食べられるとのことで、旅から帰った翌日の朝ご飯になりました!
■金田一温泉郷で隠れ座敷わらしを発見!
宿泊先は金田一温泉郷。ここは、山に囲まれた小さな集落にある温泉です。寛永3年(1626年)に田んぼの中から突然発見されたと伝えられています。江戸時代は南部藩の指定湯治場だったとのことで「侍の湯」とも呼ばれていたようです。今は宿泊のほか、4つの源泉から展開される複数の宿の湯を日帰り入浴で楽しむことができます。
山手にある金田一温泉神社へ登ると集落が一望できます。静かで、のどか~。水が豊富な場所で、蛍も見られるとか! 温泉水を利用した鮎養殖などもされているそうです。
散策中に出会える温泉らしい建造物にも、撮影欲もそそられます。塔×電線好き。
また、この金田一温泉郷は座敷わらしでも有名です。町を歩くと愛らしい座敷わらしキャラクターたちと会えます。
キョロキョロしながら歩いていると、隠れ座敷わらしも発見! カーブミラーの中をよく見てみてください。遊んでる子どもたちのシルエットが映っています。
この座敷わらしたち、カーブミラーの前から後ろ振り向いても見つかりません。さてどこにいるのか…ぜひ、現地でこのカーブミラー&座敷わらしキャラクターを探してみてくださいね。
■座敷わらしが出る宿「緑風荘」
宿泊したのは、座敷わらしがでると有名な宿「緑風荘」。著名人たちも、この宿で座敷わらしを見たとか。実在感のないものが苦手な筆者はドキドキ…。
源泉掛け流しとのことで、宿の外でもお湯に触れることができます。冬はぬくぬく~!
火事にあって建て直したとのことで、建物は新しくきれい。でも、かつて座敷わらしが出ていた部屋は再現されています。
ここに登場するという座敷わらしは亀麿くんという名前で、昔このおうちに生まれた子どもだったそうです。宿のご主人が、臨場感たっぷりにどうやって座敷わらしが出るか説明してくれたのですが、怖がり筆者。耳を塞いで一切聞いていませんでした(笑)。
ぜひ、直接現地でお話を聞いてください!
夕飯は、昼間に立ち寄った南部美人の酒とともに。地元の食材たっぷりのディナー。やはり地元の酒と食材の相性は抜群! 話も弾んで楽しい夜に。
面白かったのが、酒×酒のミックス技。日本酒=そのまま飲むものだと思っていたのですが、掛け合わせると味変が楽しめるものもあると初めて知りました! いろいろ掛け合わせて「これはいける」「これはいまいち」と試すのも楽しかったです。
宿の裏には神社もあります。
ひとつはおいなりさん。もうひとつは、座敷わらしの亀麿くんをまつった神社です。亀麿くんの恩恵を受けた方が、狛犬や鳥居を寄贈して、どんどん立派になっていったとか。ちなみに、亀麿神社のご神体は水晶とのことで、宿では水晶アイテムもたくさん売られていました。
お湯もよかったし、次は1泊と言わず、数日ゆったりすごしてみたい宿でした。
■二戸に来たなら見逃せない至極のフルーツたち
二戸では、フルーツ狩りも人気です。りんごやブルーベリーなどを育てている金田一温泉郷内の農園「権七園」では、リンゴの食べ比べを体験させてもらいました。
いただいたのは、はるか、ふじ、シナノゴールド、ぐんま名月、雪いわての5種。どれもリンゴであることには変わりないのに、それぞれ味の個性が全然違うんです! しかも「雪いわて」は、まだ市場に出回っていないものとのこと。レアアイテムだったとは! 出回るまであと5年ほどかかるそうですが、権七園の収穫体験では食べることができます。気になる方はぜひ市場に出回る前にりんご目的で訪れてみてください。
さらに、緑風荘の近くにある農家では、雪景色の中で、いちごが栽培されていました。
しんしんと雪が降り積もる中、ビニールハウスの中に入ると…
いちごの株がズラリ! 金田一温泉郷に湧く温泉の熱を使って、ちょうどよい温度に温めているのだそうです。今はまだ試験運用中とのことですが、いつかここのいちごも観光と一緒に楽しめるようになるかも? 将来が楽しみですね。
■「滴生舎」で国産漆の器にうっとり
現在、漆の市場は、外国産が97%、国産が3%。このわずかな国産漆の中で約70%のシェアを誇るのが二戸市浄法寺町産の漆です。「滴生舎」はそんな貴重な国産漆を使った漆器を作る工房兼ショップ。
同じように見えて、それぞれ作家の個性やこだわりを感じられる器たち。運命のアイテムに出会える予感。普段使いだけでなく、贈り物にもぴったりのアイテムばかりです。
さらにどのような道具で漆を採っているか、知ることが出来る展示も。
道具を使って、木に傷をつけて採っているのだそうです。想像するだけで、地道&大変そう!
そんな手間暇かけて作られた器は、長く使うことができるのが魅力。次、訪れるときは、マイおちょこを購入したいともくろんでいます!
お味噌汁好きとしては、お椀もすてがたいんですけどね…。楽しい悩みです♪
■幻の短角牛がこんな価格で!?「短角亭」で焼き肉三昧
二戸市ツアー、最後の食事は「短角亭」。和牛の中でも希少性が高い短角牛が、リーズナブルな価格でいただける貴重なお店です。ここは、秘密にしたかった…!
短角牛は和牛の一種で、昔からこの地方で飼育されてきました。お肉としては、良質な赤身肉で脂肪が少なく、旨味が凝縮されているのが特徴。全然しつこくないので、ペロリといけます。どれだけでも食べられます。こんな高品質なお肉をリーズナブルに楽しめちゃうのが、こちらのお店の魅力なのです。
一緒に旅行したメンバーの目が、完全に肉食獣になった瞬間。
あっという間に、肉が胃袋へと消えていきました(笑)。会計の横では、お土産も売っています。
肉好きには喜ばれること間違いなし!な、お土産候補です。ここでこれでもかっというほど、お肉が食べるのが最近の夢です。
■お土産を買うなら「ふれあい二戸」&「なにゃーと」へ
お土産にお野菜などの食材が欲しいと思うなら、イチオシが「ふれあい二戸」です。地元農家が手塩にかけてつくったお野菜や味噌、漬物や甘味などを毎日納品しています。飾らない場でありながら、地域が誇る地元ブランドまでもが、地元ならではの鮮度と旬でずらりと揃います。しかもリーズナブル。私もいくつか買って配送してもらったのですが、もっともっともっと買えばよかった…と帰ってから思ったほど。とにかく味が濃くて美味しいお野菜ばかりなのです。
買ってよかった! リピートしたい! と思ったのが、このホワイトアスパラ。
軽くフライパンで火を通して、塩こしょうでいただいたのですが、いくらでも食べられる絶品野菜。こんな美味しい食材たちがあるから、どのお店でも美味しいご飯が出てくるのですね。納得…!
南部せんべいや特産品、日本酒などを買うなら、駅直結のなにゃーと物産センターが便利です。二戸駅を中心とした青森県南、秋田県北東、岩手県北の北東北3県の交流・連携のシンボルとして誕生したとのこと。
個人的には、ずらりと並んだ南部せんべいにときめきました。色々試してみたくなる魅惑のせんべいですよ! 甘い系から辛い系まで、いろいろな味がそろっているので、送り相手にあわせて選べるのもうれしいポイントでした。
長い歴史と文化が根付いている二戸市。都会の喧噪を忘れさせる静かな空間と、手間暇かけて育まれてきた美味しい食材たちに、心と胃をがっつりとつかまれました。絶対また行くので、予約困難という噂の緑風荘、取れますように!!