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『物語で知る日本酒と酒蔵』著者の友清 哲さんが選ぶ、今オススメの5つの蔵元。

更新:2021年04月13日
矢口あやは

グルメ大国フランスをはじめ、いまや世界中で愛されている日本酒。その一滴には、造り手である蔵元の歴史とロマン、ときには不思議なミステリーも秘められているようで…!? 日本酒が生まれる源を訪ね歩いた『物語で知る日本酒と酒蔵』著者、ライターの友清 哲さんが、いまイチオシの蔵元5つをピックアップ。いざ、ストーリーごと味わう美酒の旅へ!

――友清さん、5つの蔵元のお話の前に、まずは「日本酒」に惹かれたきっかけから教えてください。

日本酒にはっきりと関心を寄せるようになったのは、およそ20年前くらいでしょうか。

当時はまだ“第三次焼酎ブーム”の気配が残っており、日本酒が少し元気を失っている時期でしたが、やがてブームが盛り上がり始めたことから、旅のプランに酒蔵見学を盛り込むようになりました。

もともと「お酒は造り手や背景を知ると何倍も美味くなる」が持論なので、酒蔵見学という文化の定着が、日本酒への興味をいっそう後押ししたように感じます。

――20年の変遷をご覧になった身として、改めて「日本酒」の魅力をふりかえるなら? 

お米由来の甘みやふくよかな旨味など味についてももちろんですが、ここ10~15年ほどは各蔵で代替わりが進み、新しい蔵元が新しい発想で酒造りを始め、新鮮な驚きに出会えるのがいいですね。

――日本酒界に新しい風が! うーん、訪ねてみたい。蔵元めぐりのお作法はあるのでしょうか?

見学の際は、「当日は発酵食品を食べないように」など、よく言われる最低限のルールさえ守れば、あまり堅苦しく考え過ぎず、各蔵の案内に従って気ままに愉しめばいいのではないでしょうか。

日本酒の製造過程だけでなく、酒蔵は100年、200年と長い歴史を持っているところが多いので、建物や機材といった細かい部分までぜひ観察してほしいです。

ちなみに、それが泊りがけの旅なのであれば、蔵元さんに“その地域のおすすめの酒場”は絶対に聞いておくべき。ガイドブックに載らないツウ好みの店を教えてもらえることが多く、たいていその蔵の商品を多数取り揃えています。醸造の現場を見た上で飲む酒は、いっそう美味しく感じるはずです。

■『物語で知る日本酒と酒蔵』著者が選ぶ、今オススメの5つの蔵元。(写真・文:友清 哲さん)

長崎県佐世保市 梅ヶ枝酒造

酒造りについては基本的に機械に頼りすぎず、人力の繊細な感覚を大切にしながら仕込むのが梅ヶ枝酒造のモットー。

安政7年(1860)に建てられた建物をそのまま現在も使用し、蔵そのものが国の有形文化財に登録されています。江戸時代の部材をできるかぎり再利用し、たとえば屋根は古い瓦の一部を残し、野地に竹を使う江戸時代の技術を用いて修復。柱や梁の傷んだ箇所は、「根継ぎ」と呼ばれる工法で強度を確保。

レンガ造りの麹室は昔のまま手付かずで、保温と保湿のために、レンガと内壁の間には籾殻がたっぷり仕込まれているなど、大変興味深い建物です。

なお、蔵のすぐそばに「無窮洞」(むきゅうどう)という戦時中に掘られた洞窟が保存されています。こちらは単なる防空壕ではなく、かつてその場所に建っていた宮村国民学校の教師と小学生たちによって掘られた大規模な空間。教壇や炊事場、書棚などが手掘りされた見事な造り。酒蔵とセットでぜひチェックしてください。
⇒ 梅ヶ枝酒造

栃木県さくら市 せんきん

文化3年(1806)創業の老舗ながら、11代目となる現蔵元は元ソムリエという異色の経歴の持ち主。そのため日本酒らしからぬ甘酸っぱさを備えた造りが特徴で、急速にフリークを増やしている酒蔵です。建物自体は伝統を感じさせるものの、原材料の産地を統一する“ドメーヌ化”に取り組み、地域の味を表現しています。
⇒ せんきん

千葉県勝浦市 吉野酒造

千葉県は日本酒のイメージがあまり湧かない地域かもしれませんが、実は県内におよそ30の酒蔵が存在しています。なかでも個人的に注目しているのが「腰古井」の吉野酒造。精米から自社で行なう蔵は比較的珍しく、敷地内の天然水で仕込まれた酒は、実に淡麗で味わい深いです。

なお、「腰古井」は数々の賞を受賞するなど高い評価を得るお酒ですが、吟醸酒で仕込んだ梅酒もまた最高。さらには夏季限定でリリースされる、やはり吟醸酒で仕込んだ夏みかん酒も絶品です。
⇒ 吉野酒造

佐賀県伊万里市 松浦一酒造

焼き物で有名な佐賀県伊万里市で、正徳6年(1716年)から続く老舗の酒蔵です。吟醸酒から普通酒まで各種取り揃えたラインナップには、「レイホウ」や「さがの華」といった九州産の酒米を用いた酒も多く、地酒の楽しさをしっかり堪能させてくれます。

一方、この蔵はカッパのミイラが祀られていることでも有名。およそ70年前、母屋の改修工事中に発見されたというこのミイラは、おそらくかつて大陸から渡ってきたもので、今では蔵の大切な守り神になっています。

“観光酒蔵”を標榜する松浦一酒造ではこのほか、古い酒造道具や農機具類など、貴重な民族資料を200点ほど展示しているので、合わせてお楽しみいただければ。

⇒ 松浦一酒造 

沖縄県うるま市 泰石酒造

実は沖縄にも酒蔵は存在しています。もともとは戦後、サトウキビを原料に焼酎を造り始めたのが泰石酒造のスタート地点で、その後、ウイスキーやリキュールなどに手を広げる中、空調や冷却設備を駆使して日本酒造りに着手。九州で精米された酒米を仕入れる形で売り出されたのが『黎明』でした。今では地酒ブームに乗り、本土からの観光客も多く訪れるそうです。

建物の様子も他の酒蔵とは異なり、コンクリート製の沖縄仕様。なお、蔵から立ち上る蒸気を火事と勘違いし、近隣住民が通報するトラブルが過去に何度かあったというのも、日本酒文化に不慣れな沖縄らしいエピソードです。

⇒ 泰石酒造

<取材協力>

友清哲(ともきよ さとし):フリーライター&編集者。旅・酒・遺跡をメインにルポルタージュを展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『怪しい噂 体験ルポ』『R25 カラダの都市伝説』(ともに宝島SUGOI文庫)ほか。

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