「暮らすように旅したい」女子のためのフィンランドガイド
ムーミン、マリメッコなどかわいいもの探しだけではない、新しいフィンランドの旅のスタイルとは?フィンランド政府観光局 能登 重好さんに話を聞きました。
——まずは能登さんとフィンランドの関わりから教えて下さい。フィンランドの観光プロモーションに関わるようになってどれくらいが経つのでしょうか。
旅行会社からフィンランド政府観光局に移ってからなので、かれこれ20年くらいですね。
実は転職するまでは北欧ってトランジットでしか降りたことしかなかったんですよ。でも、生まれが北海道のせいか、寒い地域のプロモーションはどうあるべきかが何となく勘でわかるところもあって、すぐにフィンランドに詳しくなりましたね。
毎年6〜8回は北欧を訪れてますし、今では本国の観光局のスタッフより自分のほうがあちこち行っていると自負してます(笑)。
一能登さん(右端)とフィンランド政府観光局のみなさん、そしてサンタクロース!
――わぁ、今日は色々教えていただけるのを楽しみにしています。北欧はデザイン大国というイメージもあって女性に人気があるイメージですが、現在、大体どれくらいの数の日本人女性がフィンランドを訪れているのでしょうか?
概算になってしまうんですが、いまは年間約10万人くらいの日本人がフィンランドを訪れているとされていて、そのうち7割弱が女性です。しかも、他のヨーロッパ諸国への旅行客に比較すると10〜20歳くらい若い印象です。
――なぜ若い女性に支持されているのでしょうか。
旅に出る時にあれを観たい、どこに泊まりたい、何を食べたい、と、まるで白地図を塗りつぶすみたいな過ごし方をされる方も多いのですが、最近の日本の若い女性の過ごし方はちょっと変わってきています。観光地をまわったり、ブランドショッピングをするよりも、自分にとって「気持ちがいい」ことを優先されているように見えますね。
女性に人気のイッタラなど、かわいいものがいっぱいのフィンランド
のんびり暮らすように旅をするには、フィンランドは日本から距離的に近いし、北欧デザインに彩られた街の雰囲気も良く、地元の人たちは旅行客に対してオープンで親しみやすいし、とてもリラックスできる旅先。
ヘルシンキは、2〜3日もいると自然と町の中にとけこめてしまう同化度が高い不思議な街なので、そこが若い女性の今の気分に寄り添っているのではないでしょうか。
――旅行客として疎外されない場所というのはひとり旅の女性にも良いですね。私も最近、あちこち忙しくまわる旅は疲れちゃうなぁ……と思ったりします。
もちろん「デザイン」はフィンランド旅行ではダントツに人気のテーマで、初めて訪れた方は、ヘルシンキの有名なデザイン系のスポットをまわる人が多いのです。
でも、二度目からは、街をぶらぶら散歩してカフェでお茶したり地元の人が行くスーパーマーケットで買い物をしたり、夜は地元の若者が集うクラブに行ってみたり、郊外の森や湖でハイキングしたりといった、現地の人と変わらない過ごし方をしていますね。
リピーターになる人も多いです。 地元の人のお宅を訪ねてお茶を飲んだり、現地のジョギングコースを走ったりするなどユニークなツアーなどもたくさんあって、「暮らすように」旅をしたい女性にも人気です。
一般家庭を訪問する体験メニュー等も最近人気に。
――楽しそう! ちなみに、旅のベストシーズンはやっぱり夏でしょうか?
やっぱり夏は気候的に良いので人気がありますね。ヘルシンキの夏は、毎週末、紹介できないほどのイベントやフリーマーケットが開催されていて非常ににぎやかで楽しいですよ。ヘルシンキから電車で1時間〜2時間も行くと、森と湖が広がり、有名なアーティストビレッジやハイキングコースなどもあり、自然も満喫できます。
ヘルシンキから電車で1時間半くらいのところにあるフィスカルスのアーティストヴィレッジ photo by Visit Finland
とはいえ冬もオーロラシーズンなので人気があります。オーロラについては、実は9月には出ていて観測率も高いので、秋もベストシーズン。シルバーウィークの旅行先にもっと注目されてもいいのになぁ、とは思っています。
――オーロラは私も死ぬまでに一度は見てみたい、と思っていることの一つです。
冬のフィンランドのお楽しみでは、オーロラ以外にはクリスマスマーケットがあります。ヨーロッパでも最大級のクリスマスマーケットが行われているのは実はヘルシンキなんですよ。
セント・トーマス・マーケットが一番有名ですが、出店が300店舗くらいあって、とてもまわりきれないほどの規模。女性向けにはハンドクラフトにこだわるなどテーマ性の高いマーケットもあるので、いろいろまわってみると楽しいと思います。
――――冬のフィンランドも素敵そうですね。他に冬ならではのトピックスと言えば?
やっぱりサウナでしょうか。こちらは一年を通して楽しめますが、やっぱり寒い時のサウナは格別です。ヘルシンキのホテルには必ず付いているので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。
映画『かもめ食堂』のロケ地の一つでもある「Yrjonkatu Swimming Hall(ウルヨンカツのスイミングホール)」は、サウナとプールが一緒になっている施設で、全裸で泳ぐ人ばかりなのでヘルシンキならではのユニークな体験ができます。映画では小林聡美さんがちゃんと水着を着てますが、入場は性別ごとに分かれていて、実際はみなさんほとんど全裸で泳いでいます。
――こんなに広いプールを全裸で泳ぐなんて、確かに貴重な経験かもしれませんね。お風呂好きの日本人とフィンランド人、何だか通じ合うところがありそうです。
ヘルシンキの人は、大体一家に一台サウナを持って、週に2、3回入るのが普通なので、日本人と似てキレイ好きです。そんな清潔感も、きっと日本の女性に支持されるんでしょうね。
――――冬のヘルシンキでオーロラとサウナ、クリスマスマーケットを満喫するのも楽しそうな旅のプランですね。その他のおすすめはぜひトリッププランで詳しく教えてください。本日はお忙しい中ありがとうございました。(2013年11月)
Profile
大学卒業後、大手旅行会社JTBに入社、1993年にフィンランド政府観光局に転じる。以来、20年以上にわたりフィンランドのプロモーションに携わり、5年前に自らの会社、フォーサイトマーケティング設立。独立後も継続してフィンランド政府観光局代表の仕事に従事する傍ら、北ヨーロッパの国々のプロモーションも手がけている。
※各種情報は取材時(2013年11月)のものです。
インタビューに登場したスポット
1.フィスカルス/ fiskars
かつては村の名前にもなった鉄工所があり、はさみなどで有名なブランドの工場で栄えた小さな村。一度は廃村になりかけた場所の歴史ある建物にアーティストが移り住み、今では世界が注目するアーティスト・ヴィレッジになっています。家具の工房や手仕事のアトリエなども多く、女性にもとてもおすすめです。ヘルシンキからナーンタリに行くならぜひ途中で立ち寄って頂きたい場所です。
⇒ web
2.ウルヨンカツのスイミングホール/ Yrjönkatu Indoor Swimming Pool
ヘルシンキ市内にあるフィンランド最古の市民プールで、サウナも併設。映画『かもめ食堂』のロケ地でもあります。男女別で入り、プールは全裸で泳いでもOKというユニークなスポットなので、一風変わったサウナ体験がしたいなら訪れてみるといいと思います。
⇒Web