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]]>ナンシー派とはエミール・ガレが中心となり結成された、この地を拠点に活動する芸術家たちが作ったグループのこと。そのナンシー派のコレクターだったウジェーヌ・コルバンの邸宅跡を利用し、家具やガラスなど多くの工芸作品を展示しているのがこの美術館だ。

こぢんまりとしたお屋敷だが、一歩中に入ると、濃密なアール・ヌーヴォー空間が広がっている。

ぐにゃぐにゃ、曲線、装飾過多…これぞアール・ヌーヴォー!な空間にどっぷり浸れ、特に日本人にはエミール・ガレの作品が多いのも嬉しいポイントだろう。
面白いのは、ショールーム的にいろんなアール・ヌーヴォーな小部屋があること。将来インテリアに取り入れたい人には家具の配置や小物のあしらいなど参考になりそうなポイントがいっぱい。


ふつうの美術館だと、陶器やガラス製品などが単品でぽんぽんと展示されているケースが多いが、この美術館では、邸宅の室内空間がまるごと当時の雰囲気に再現され、家具やアート、工芸品とともにコーディネイトされているのが本当に素敵。まるでベル・エポックのフランスにタイムスリップしたよう。

とはいえ、もちろん、日本でも人気のエミール・ガレの作品などはひとつずつじっくり鑑賞できるようにガラスケースの中に」陳列されている。

わかりやすく美しいガラス製品も多いが、中にはおどろおどろしいものや、日本リスペクトすぎてちょっとおもしろくなってしまっている作品も。

彼がどれほどジャポニスムに影響を受け、日本の美に惹かれていたがわかり、日本人として誇らしい気持ちにも。


すっきりシンプルな北欧家具に目が慣らされてしまっている私にとってはひとつひとつの家具が、美しいだけでなく興味深い。こんなん、大量生産絶対ムリよね…という現代ではとても手に入らなそうな貴重な展示品の数々。日本人にもとても人気のあるミュージアムなんだとか。
なお、この美術館の庭は、誰にでも無料で開放されており、近所の人たちの憩いの場にもなっている。

私が行った7月には簡易なバーもオープンしていて快適度もアップ。


観光客で賑わうユネスコ世界遺産・スタニスラス広場があるナンシーの旧市街に比べ、このあたりは歩いている人もまばらなほどの静かな住宅街。近くには大きな公園もあるので、ここでゆっくり休憩したあとは、ぶらぶらと散策してみるのも楽しい。そこかしこで「小さなアール・ヌーヴォー」を見つけることもできますよ。
・Musée de l’Ecole de Nancy Google Map
公式サイト ※マジョレル邸とセット券を買うのが圧倒的にお得です。
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1902年築。まるごとアール・ヌーヴォーな邸宅は、ナンシーではこのマジョレル邸が初だったという。2020年に修復を終えたばかりなので、家の中も外観もまだとてもきれい。

建築、インテリア、内装、家具までナンシー派の芸術家たちが手掛けたという、いわば大規模なコラボ作品とも言えるお屋敷まるごとミュージアム。

入口入ってすぐに現れるのは優雅ならせん階段。奥に見えるステンドグラスはジャック・グリュベールによるもの。シャンデリアはマジョレルがグリュベールとドームの協力を得てデザインしたもの。

家の中央にあるのは喫煙室を兼ねたダイニングルーム。部屋の中央にある個性的なデザインの暖炉は、アレクサンドル・ビゴがデザイン。



「これは機械ではとても作れないよなぁ…」としみじみ思う繊細な手仕事で埋め尽くされたナンシーでしか見られない貴重な建築遺産。
デリケートな空間を傷つけないよう、見学時には用意された靴カバーを装着する必要あり。高いヒールなどで行くと嫌がられると思うのでぜひぺたんこ靴で。
近くにはエミール・ガレなどの豊富なコレクションで知られるナンシー派美術館もあり、このマジョレル邸とのお得なチケットもスタンバイ。絶対両方見るのを強くおすすめします。
Villa Majorelle Google Map
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]]>今回はたまたま土日に行っていろいろ得した私が、土日にナンシーを訪れるべき理由を紹介しよう。
なんとナンシーは土日ならバスが無料。小さい町なので旧市街など人気エリアは徒歩で回れるが、次に紹介するジャン・プルーヴェ邸などは結構駅から離れているのでバス利用が必須。

ナンシー派の工芸家を父に持ち、この地で家具の製造を行うなど、ナンシーとゆかりの深いジャン・プルーヴェ。 2022年には「東京都現代美術館」で『ジャン・プルーヴェ展』が行われるなど、日本でも人気のデザイナーであり建築家である。
1954年に彼が建てた丘の上の自邸は、いまなお建築ファンに人気のスポット。1年のうち6月から9月までの土曜日のみ公開されている。家の中は現オーナーの私物などがあり建設当初の面影は薄いのが残念だが、丸窓の金属パネルなど、プルーヴェらしいデザインが残る外観などは貴重。


なお、プルーヴェファンなら、世界遺産のスタニスラス広場に面するナンシー美術館に行くのもお忘れなく。美術館の一角には、プルーヴェコーナーがあり、彼が手掛けた家具などが展示されている。もちろんこの記事で紹介したドームのガラスコレクションなど他にも見るべき展示もいっぱいだ。
・ナンシー美術館(公式)
日曜日となると、レストランや店などが開いておらず、退屈しがちなフランスの町だが、それはナンシーも同じ。それなら日曜日でもオープンしている美術館を目指して、隣町のメス(Metz)まで電車に乗っておでかけしてみよう。駅前にどーんとそびえるポンピドゥ・センター・メスは、パリのポンピドゥ・センターの分館で、その建築は我らが坂茂が手掛けている。

メスはナンシーから電車でわずか40分程度しか離れていないのに、モダン建築に彩られた現代的な景観がナンシーとは対極。建築もさることながら、モダンアートの展示も素晴らしいので、ナンシーまで来たならぜひ一緒に巡ってほしいアートスポットだ。
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今回、この街を訪れた目的は、ずばりアール・ヌーヴォー建築めぐり。直線的で、機械的で、ちょっとつまらない、昨今の建築とは著しく違う、有機的で曲線的、草花のモチーフが絡み合う、ロマンティックな建築を本場で見てみたい!
ということで、今回は私が足を棒にして歩いて見たアール・ヌーヴォーな建築・インテリア・アートをGoogle Map付きでご紹介!完全保存版です!
まずはユネスコ世界遺産・スタニスラス広場があるナンシーの旧市街から攻めていこう。狭いエリアにぎゅぎゅっと名所が詰まっているので簡単に見て回ることができ、足もそれほど疲れない。
以下に挙げた有名スポット以外にも、そこかしこに、アール・ヌーヴォーなデザインを発見できるので、ぜひドアノブや手すりなどに目を凝らしながら街歩きを楽しんで。
さて、もしあなたが、ランチタイムやカフェタイムにナンシー駅に降り立ったなら、まず足を向けてほしいのが、ブラッセリー・エクセルシオールだ。

1911年にナンシーの工芸家たちが参加して作られたアール・ヌーヴォーなインテリアが見事な老舗ブラッスリー。ルイ・マジョレルによる家具やシャンデリア、ドームによるランプ、そして階段の手すりはジャン・プルーヴェが手掛けるなど、参加アーティストもため息が出るほど豪華。



こんな豪華なレストラン、さぞかしお高いんでしょ? と心配になるが、それが思ったほどでもなかった。私はランチタイムに、せっかくだからとこの地方の名物、キッシュロレーヌを注文したが、10.5ユーロとわりと普通。

バターや生クリームたっぷりのキッシュにサラダとパンがついてくるので、女の腹ならこれで十分。

ベル・エポックのナンシーに迷い込んだような体験ができてこの値段なら文句なし。ナンシーに来たならぜひ一度は行ってほしいブラッセリーだ。
Brasserie L’Excelsior https://www.excelsior-nancy.fr/
Google Mapはこちら

エクセルシオールからも歩いてすぐの有名アール・ヌーヴォースポット。1900年から1901年にかけて作られた歴史的建造物で、設計はアンリ・ギュットン、ステンドグラスはナンシー派(エコール・ド・ナンシー)の巨匠、ガラス工芸家のジャック・グリューベルが手掛けたもの。
Commanditaire Jules Génin Goole Map

1912年築のアール・ヌーヴォー様式の建物内にあるスタバ。もとは新聞「L’Est Républicain」の本社があった場所だとか。建築はアールヌーヴォーだが内部は普通なので、外観だけ眺めるのでOK。
Starbucks Nancy Est Republicain Google Map

1899年から1901年にかけて、建築家シャルル・アンドレと息子のエミールによって建てられた百貨店跡。
l’ancien magasin Vaxelaire Google Map

1901年に完成した建物で、ジャック・グリュベールによる長さ23m、幅8mの天井のステンドグラスが見どころ。今も普通に銀行として営業しているので、内部を見たいなら平日の営業時間内に。

LCL Banque et assurance Google Map

アール・ヌーヴォーの工芸家のグループ「エコール・ド・ナンシー」の芸術家たちが参加して作られたアール・ヌーヴォー建築。特にその優美なファサードが見学ポイント。
Chambre de Commerce et Société industrielle de l’Est Google Map

世界遺産、スタニスラス広場に面する美術館。中世から現代まで豊富な絵画のコレクションを展示しているが、アール・ヌーヴォー的見どころは、地下のドーム兄弟による圧巻のガラス工芸品コレクション。フランス最大の(ということはつまり世界最大)の900点ものドーム コレクションを誇り、展示総数は約300点!


薄暗い照明のもとで美しい光を放つガラスの数々は、ひたすら美しく、ため息の連続。なにか一つでも買って帰りたいな、と美術館の帰りにアンティークショップに立ち寄ってみたけれど、思い出のために買うには高価すぎて断念。この美術館の空間を脳裏にやきつけておこう…。
旧市街からは少し離れているけれど、ナンシーでアール・ヌーヴォーを堪能したいなら絶対に外せないのがナンシー派美術館。そこまで足を運ぶなら頑張って一緒にめぐってほしい2つの名所とは? 結構歩くけど、歩けないほどじゃない距離なので頑張ってめぐってみて!

ナンシー駅から旧市街と反対側に、線路を超えて歩いて約20分で到着するのがこちらの優美な邸宅。アンリ・ソヴァージュによる設計で1902年築、ナンシー派の家具デザイナー、ルイ・マジョレルの自宅兼アトリエだった建物で、現在はミュージアムとして一般公開されている。内部等の詳細レポートはこちらから!
Villa Majorelle Google Map

マジョレル邸から歩いて約10分、ナンシー派美術館はアール・ヌーヴォーに特化した世界でも稀なミュージアム。ナンシー派の美術館としては世界唯一。
ナンシー派のコレクターだったウジェーヌ・コルバンの邸宅跡を利用し、エミール・ガレを筆頭に、家具やガラスなど多くの工芸作品を展示している。内部等の詳細なレポートはこちらから!
・Musée de l’Ecole de Nancy Google Map
ナンシー派美術館から徒歩20分ほど頑張って歩くと、なぜかアール・ヌーヴォー様式の豪邸が密集しているコロネル・ルナール通りにたどり着く。今も現役で使われているお屋敷なので内部見学はできないが、外壁などに建築家の名前や建築年が記されているので、外から鑑賞するのは観光局的にOKということなんだろう。





とまぁこんな感じで、いわば1900年代初頭生まれのお屋敷街。
1871年、普仏戦争でプロイセンに敗れたフランスは、アルザス・ロレーヌ地方をドイツに割譲。フランス領として残ったナンシーには、ドイツに併合されるのを嫌った人々(主に多くの資産家)がそれらの地方から大挙して移り住み、ナンシーの人口は急速に膨れ上がったとか。
1900年はじめに花開いたナンシーのアール・ヌーヴォーは、そうした彼らの資金力も大いに貢献したはずだ。おそらく当時の資産家たちが暮らしたでろう優雅な住宅街を歩いていると、戦争の副産物として花開いたナンシーの黄金時代のきらびやかさを肌で感じることができるのだ。
Rue Colonel Renard Google Map ※Villa Lang(ラング邸)を目指していくとわかりやすい。
…と、ものすごく長い記事になってしまったが、基本的に上記すべてを徒歩で巡っても1日あればOK。旧市街はカフェや店がたくさんあるが、ナンシー派美術館付近はわりとガチな住宅街で、店も少なめ。水分補給など困るケースもあると思うので、駅前等で入手していくのがいいですよ。
<ナンシーへのアクセス>
・パリからTGVで約1時間半
・隣国ルクセンブルクから普通列車で約1時間半
飛行機の場合、ルクセンブルク空港か、メス・ナンシー・ロレーヌ地方空港が最寄りとなる。ルクセンブルク空港のほうがヨーロッパ各都市からのアクセス至便。さらに詳しく。
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・チェコ、プラハのキュビズム建築めぐり
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]]>The post 南仏のモンペリエ郊外、ペロル村の村祭りでフランス式闘牛を見た appeared first on トリッププランナー.
]]>それは本当に、今どき珍しい言葉どおりの、のどかな「村祭り」であり、(おそらく)近隣住民以外はほぼ誰もいないローカル感満載のイベントだった。
これからそこへ旅したい人がどれくらいいるかは不明だが、ぜひその貴重な体験談をシェアしたい。

モンペリエは、フランス南部、地中海沿岸地域にある人口およそ25万人の都市。フランスのエリート医学部として知られるモンペリエ大学医学部などがあり、学生の多い街として知られている。

そんな街からトラムに揺られること約30分、約8kmの位置にあるのが今回紹介するペロル村である。地中海と広大な沼のすぐ近くであり、その豊かな水資源ゆえに9世紀ごろから村があったという記録が残る。17世紀頃にはもう闘牛が始まったらしく、今では珍しい闘牛学校があるなど、闘牛の伝統が長く息づく村だ。
というと、古めかしい村をイメージしてしまうが、今ではこのあたりは南仏風のお屋敷が並ぶ広がる優雅な住宅街だ。一年中気候が温暖でビーチもすぐそばなので、雰囲気としては完全にリゾート。実際、私の友人宅もプール付きだったし。

そんなペロル村の夏祭り(Fête de la St-Sixte )は、毎年8月初旬に開催される。お祭り初日の夜に教会のあるエリアまで行くと、すでに白馬やら神輿やらが登場し、夕方にはもう賑わい始めていた。

教会から出発した守護聖人の像は、村を練り歩きながら、全2200席、1960年オープンの闘牛場へと入っていく。


その後は、派手な衣装のお姉さんたちが踊ったり歌ったり、花火が上がったりと大騒ぎ。そして、この夜のハイライトとも言えるのが、村の少年青年たちが楽しむ闘牛もどきのショーである。

一匹の子牛が彼らが待つ闘牛場に放たれる。逃げ惑う彼らを必死に追う子牛。

小さいとはいえやはり立派な角がある水牛なのでそれなりに迫力があるが、眺めているとのどかな追いかけっこという気がしないでもない。フランスの闘牛は牛を殺さず、牛の頭に付いている飾りを取る、というものだが、彼らはただひたすら逃げ惑うばかりで、じゃれあっているようでもあった。
「今日のはまぁオープニングデーのお遊びだから、明日、闘牛士による闘牛を見に来よう」と友人。そして、我々はふたたび闘牛場にやってきたのだった。

今度は大人の水牛であり相手はプロの闘牛士である。面白いのは、フランスの闘牛は牛と闘牛士の一対一ではなく、複数人で牛を追うところ。


この水牛がすごい暴れ方で、興奮極まると、闘牛士ではなく客席めがけて突進してくる。笑いながら鑑賞していると、柵を角で破壊し客席に飛び乗ろうとしてくるので客たちが慌てて逃げ出したりする。

心臓の弱いご婦人は悲鳴を上げ、子どもたちは大はしゃぎ。いやぁ、私の知らない村祭りの世界…!
そして、他に大してすることもない私達は、数日後再びこの闘牛場にやってきた。お祭りもクライマックスに近づくと、馬や牛が勢揃いするショーが行われるのだ。



そして、白馬に乗った男性による牛追いショーも披露される。追われているのがまだ小さな子牛なのがちょっと気の毒…。

3日通って堪能したペロル村の村祭り。そして友人の言う通り、おそらく観客のほとんどは、村人か、モンペリエ近郊に住む地元民か、その友人、知人であろう。飾らない普段のフランスを覗き見できた貴重な体験だった。
ペロル村のすぐ下には、地中海との間に橋のように細い陸地を挟んで広大な池があり(本当にユニークな地形だ…)、そこにはフラミンゴも飛来する。

白馬、闘牛、フラミンゴは、近郊のカマルグの名物として有名だが、ここモンペリエも似たような文化圏なのでもちろんそれらを見ることができる。村祭りを通じて、特に白馬と水牛がどれほどこの地域の誇りでありアイデンティティーであるかも実感することができた。
この村祭りは毎年8月に行われるので、機会があればこの時期にモンペリエを旅してみてはどうだろうか? 「おしゃれ」ではない酪農国としてのフランスの一面にも触れられるはずだ。
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]]>The post 心震える美しい祈りの空間。驚きに満ちたル・コルビュジエ設計のラ・トゥーレット修道院に宿泊してきた。 appeared first on トリッププランナー.
]]>彼が切り開いたであろう四角い箱のような、直線的で機能的な建築は、現代の我々にとってはいわばスタンダード。
ゆえに彼の作品の中では、造形的に特徴のあるパリ郊外のサヴォア邸とかロンシャン礼拝堂などのほうに、個人的には興味が傾いていた。だって、私たちの住む街には、四角く直線的な建物ばかりが溢れているではありませんか?

ロンシャン礼拝堂については別の原稿でたっぷり語っています。
などという思い込みゆえ、巨匠の代表作の一つだとか、傑作!などと言われても、ご覧のように一見するとシンプルな箱型(に見える)外観のラ・トゥーレット修道院については、「何かのついでがあったら行くかな……」ぐらいのテンションだった。

そして、そのついでは2022年にやってきた。意を決してずっと憧れていたロンシャン礼拝堂に行くと決めたのだ。
同じフランスにあるとはいえ、この2箇所間は電車で5時間以上かかる距離であり、後から思えば全く「ついで」ではないのだが、北海道で札幌と釧路を周遊しようとするアホな東京人のように、無邪気な旅程を組んでしまったのである(⇒詳細な経緯はこちらでどうぞ)。
この名建築のいいところは、なんといっても宿泊できること。日本で言えば宿坊みたいなもので、簡素だが個室に泊まれ2食付きで54ユーロ(2023年1月時点)と、お高いおフランスのホテル事情を考えればわりとリーズナブルなのだ。
オンラインブッキングのような手頃な予約方法はないが、メールや電話で問い合わせるなど手間を惜しまなければ泊まることが可能。見たところ冷房も暖房もなさそうだったので、春や秋など良い季節を選んだほうがいいかもしれない。
私が行ったのは2022年の7月中旬。正直もう暑くなるはずの時期だが、運良く夜はそれほど蒸さず、冷房なしでも快適に過ごすことができた。
ラ・トゥーレット修道院の最寄りの都市は、フランス中部の都市、リヨン。今回は目的地へ急いでいたのでランチしかしなかったが、素通りするには惜しいくらい綺麗な街だった。

そこから約30分ほど列車に乗りラルブレル (L’Arbresle)駅下車後、徒歩30分。フランスで列車に乗るのは難しそうな印象があるが、最近はSNCFが作ったスマホアプリ(SNCF Connectで検索してダウンロード)があるのでとても便利である(このあたりは別の記事『死ぬまでに見たい名建築、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」に行ってきた』を参照)。

結構な坂道なのであまりに重い荷物やスーツケースで行くのはおすすめしない。駅前にタクシーなんか止まっていないのでなるべく歩きやすい服装で行こう。
えっちらおっちらと小高い丘を登れば、見逃しようがない異様なフォルムの修道院が見えてくる。

そして、これほど巨大な修道院なのに、なんと入り口が……。

鳥居…?
建築のサイズ感に比すると簡素すぎる門。コルビュジエ、もしかして日本の神社リスペクトか?
早くもこの建築の不思議ちゃんぶりに心を掴まれつつ受付へ。


意外なのが、ロンシャン礼拝堂よりもずっと、この修道院のほうが「建築を学ぶ人達の聖地」感があったことだ。私がロンシャンを訪れたときは、見学している人は3−4人といったところで、かつ、カップルとか家族連れとか、一見すると建築マニアではなさそうな客層だったが、こっちはガチで建築学科の学生っぽい人たちで賑わっていた。宿も満室である。
もしかしてロンシャン礼拝堂よりもこっちのほうが世界的には人気なのか? 日本人にはロンシャンのほうが有名なイメージがあったのでちょっと意外だった。
この日はチェックイン後すぐに建築ツアーが始まったので(有料)、荷物を部屋にぶち込んですぐさま見学へ。





コルビュジエらしい、シンプルで直線的で、すっきりとした空間がひたすら続く。とにかく広い。最近ではカンファレンスセンターとして利用されているのも納得の公共建築感。
だが、この「すっきり機能的」という印象は、礼拝堂へ足を踏み入れた瞬間がらがらと崩される。

この空間に足を踏み入れたときの驚きは、写真ではうまく伝えられないかもしれない。赤や黄色、青のわずかな光のみが簡素なコンクリートの空間を優しく照らし出す静謐な祈りの空間。光以外に派手な装飾は一切ないが、その光が心震えるほど美しいのだ。まるで光のアーティスト、ジェームズ・タレルの作品のよう。

祭壇から「光の大砲」と呼ばれる丸い天窓が見えるや、見学ツアーの参加者たちがため息を漏らす。簡素で無駄のない空間をえんえんと歩いてきた先に現れるこの色彩の洪水。もはやこれはショーですね。見せ場がちゃんと作られている!

さて、「光の大砲」がある地下礼拝堂も見学させてもらおう。


シンプルな素材、シンプルなデザインと完璧に調和するカラフル。美しいというよりかっこいい。
この空間に少しでも長くいたくて、キリスト教徒でもないのにミサにも参加させてもらった(誰でも参加可能なのだ)が、それがまた忘れがたい体験になった。この修道院の設計には、現代音楽作曲家であり建築家のヤニス・クセナキスがコルビュジエの弟子として関わっているが、そのせいか音響が素晴らしいのである。
修道士たちが読み上げる聖書の声や賛美歌は神秘的な響きをたたえ、美しい建築空間にこだまする。その震えるような音は言葉がわからない私の心の奥に力強く響く。正直言って、ちょっと泣いた。
さて、見学ツアーが終わったあとは、夕食までは自由時間だ。自分の部屋に戻り、一息つくとしよう。

ベッドとデスク、小さなベランダがある簡素な部屋だが、色使いが楽しいので侘しさはない。

入り口近くには洗面台とロッカーがある。新しいシーツとタオル、紙コップが備え付けられているのみなので、歯ブラシなどは持参していこう。私は念の為、飲み水とおやつも持っていった。トイレとシャワーは共同で、各フロアにある。
ゲストハウスのドミトリーなどで過ごすのに比べればプライバシーは確保されているし個人的にはこれで十分だと感じた。
この修道院は建築だけでなく大自然の景観もまた素晴らしく周囲は公園でもある。日が暮れる時間帯を狙って夕日を見に外に出た。

カメラを抱えて丘から修道院を撮影していたら、同じ目的の仲間たちがやってきて、「この角度からのほうがいい」とか「あっちも眺めがいい」など色々教えてくれる。そう、基本的に彼らはコルビュジエのファンなのだ。我々はいわば推し活仲間なのだ。仲良くならないはずがない。
7時半からはお楽しみのディナータイムである。食堂に集まり、1テーブル4,5人ずつ着席する。
私のテーブルには、アメリカから来てコルビュジエ建築巡りの旅をしているという老夫婦と(マルセイユのユニテ・ダビタシオンとカップ・マルタンに行ってきたとか)フィレンツェから一人で来たという女性が座っていた。
女性は子育てを終え、今は趣味の絵を描くのが楽しいという。「ここに3日ほど滞在して、昼は絵を描くのよ」と笑う。
会話が弾んでいたので、食事を細かく撮影するタイミングを逸してしまったが、唯一の写真がこれ。

食事にはしぼりたてみたいにフレッシュな赤ワインが添えられるのだが、これがすごく美味しかった。いまそこで絞ってきました!みたいな爽やかさで、何杯でも飲める。そんなに飲まなかったけど。
野菜を中心に全部で4皿ぐらいあっただろうか。コース料理のようにひとつずつ運ばれて来て、食べ尽くすと、おかわりいる? と聞いてくれる。どれも丁寧に作られていて美味しく、お腹もいっぱいになった。
この修道院の設計をコルビュジエに依頼したのは、ロンシャン礼拝堂も依頼したというクチュリエ神父である。彼は南仏にあるマティスが内装をすべて手掛けたことで有名なロザリオ礼拝堂にも関わっているという謎の仕掛け人なのだ。
おそらく芸術への思い溢れる神父だったに違いになく、この修道院が「ほとんどアート」といっていい空間になったのは彼の存在も小さくないのだろう。

ロンシャン礼拝堂の「ついで」に来たラ・トゥーレット修道院だが、そのスケールの大きさ、外観と内部のコントラストの激しさ、音と色の素晴らしさに圧倒され、個人的にはロンシャン礼拝堂よりも好きになってしまった。
翌日は列車で5時間もかかるロンシャンへの移動のために早朝に出発しなければならず、思いの外素敵だったリヨンも、この修道院の美しい朝もゆっくり楽しめなかった。次は絶対3泊はしよう、と心に決めている。
<ラ・トゥーレット修道院 Couvent de la Tourette> 基本情報
BP105 Eveux, 69591 L’Arbresle cedex 公式サイト
1960年竣工のカトリック ドミニコ会の修道院。2016年、ル・コルビュジエの建築群としてユネスコの世界遺産に登録。
アクセス: L’Arbresle駅下車徒歩30分。Lyon-Gorge de Loup駅からは平日は15分〜3o分間隔 、日曜は1時間に1本の便あり。Lyon-Part Dieu 駅だと2時間に一本となる。
宿泊料金:シングルルームのみ 1泊(夕食+宿泊+朝食): 54ユーロ
※18時にフロントが閉まるので到着は17:30までに。ホテルは8月とクリスマス休暇の間は閉鎖。
修道院の内部ガイドツアー:日曜の午後のみ開催。[email protected] へメールするか、電話で問い合わせる。 +33 4 72 19 10 90
※上記情報は2023年1月に公式サイトにて確認したものです。
<コルビュジエ関連記事>
・死ぬまでに見たい名建築、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」に行ってきた。
・泊まれる世界遺産、ル・コルビジェによるマルセイユの名作「ユニテ・ダビタシオン」訪問レポート
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]]>The post 死ぬまでに見たい名建築、ル・コルビュジエの「ロンシャン礼拝堂」に行ってきた。 appeared first on トリッププランナー.
]]>というわけで、今回は正真正銘のワンテーマ(しかない)なスポット、フランスのロンシャンに行って参りました!
建築好きの人なら、ロンシャンと聞けば、すぐこの不思議な形の建築が思い浮かぶはず。

これはスイスで生まれ、主にフランスで活躍した建築家、ル・コルビュジェ(1887-1965)が設計したロンシャン礼拝堂。フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエとともに「近代建築の三大巨匠」の一人に数えられる彼の晩年の傑作だ。
コルビュジェといえば、アール・ヌーヴォーやらアール・デコやら、やたら装飾的だった建築が主流だった時代に、直線的で機能的な、むしろ今の我々が慣れ親しんだスタイルの建築を確立させた、モダニズム建築の父、というイメージが強い。
たとえばこの、ユニテ・ダビタシオンなんかが典型だ。

それが、どうした? コルビュジェ…?
かっちりきっかり、機械のような直線が好きじゃなかったのか?

……と建築雑誌でひと目見たときから心つかまれ、以来、死ぬまでには絶対に見に行こう、と決めていた場所、それがこのロンシャン礼拝堂なのだ。
で、このロンシャン礼拝堂だが、地図で見るとこんな場所にある。
緑一色の地図から、このあたりが完璧な田園地帯であることがわかる。かんたんにいうとド田舎なのである。
一番近い大きめの都市をGoogle Mapで探してみれば、なんとスイスのバーゼルになってしまうではないか。そう、ここはフランスとはいえ、ほとんどスイスといったエリアなのだ。
バーゼルは建築好きの聖地と言われる「ヴィトラ・キャンパス」の拠点となる街だし、ついでに一緒に回るのも悪くないかもしれない。フランスのド田舎つながりで、ロンシャン礼拝堂と同じクチュリエ神父が依頼した「ラ・トゥーレット修道院」まで思い切って足を伸ばしてしまおうか……。
などと考えた私が作った旅程はこちら。
<1日目> リヨンに入り、「ラ・トゥーレット修道院」宿泊。※なんとここは泊まれる世界遺産。詳細はこちら。
<2日目> 「ラ・トゥーレット修道院」から列車で約5時間ちょっとかけて「ロンシャン礼拝堂」へ。見学後、列車で約2時間のバーゼル泊。
<3日目> バーゼルからバスでヴィトラ・キャンパスへ。バーゼル泊。訪問レポートはこちら
<4日目> バーゼルからチューリッヒに移動して飛行機で出国
えーと…、これは建築学科の学生の就学旅行ですか?
という3泊4日の旅プラン。詰め込みすぎや!
忙しい旅に疲れたって冒頭で言ってなかったっけ?
話をロンシャン礼拝堂に戻そう。
この礼拝堂への最寄り駅はRomchamp。ここがまた、急行が止まらない無人駅で、しかも電車の本数もごくごく少なく、事前に相当な準備をしないと時間のロスが激しく、下手をすればたどり着かない…という声がネットで多数の、行き方の難易度の高い駅なのだ。
でも、心配ご無用!
フランスの国鉄SNCFが作ったスマホアプリがあれば、自分が乗る駅と降りる駅で検索すれば、一番乗り継ぎがいい便を一発検索。日本でよくある乗り換え案内アプリとほぼ同じ使い勝手で英語OK。良いルートが見つかったら同じ画面で切符をかんたんに買えてクレジットカード決済、発券もスマホで完結する。
フランス語がわからないのに窓口で切符を買わなければならなかった頃はえらい大変だった鉄道の旅が、こんなに簡単になるとは……ありがとうテクノロジー!

このアプリがあれば、自分が今どのあたりを走っているのかもわかるし、乗るべきプラットフォームの番号も、乗り継ぎ時間も教えてくれ、列車に遅れが出れば最新の時間で表示してくれる。日本の新幹線の予約サイト等の使いにくさを知っている身からすると、神レベルの使い勝手。IT後進国の日本、もっと頑張れ……。
というわけで、わりと難なくロンシャン駅に到着。しかし、実はここからが予想外に難易度が高かったのだ。
覚悟していたが、駅は緑生い茂る小山の上にあり、周囲には何もない。私が行ったのは2022年の7月下旬。もうバリバリに暑い時期である。

この日、駅を降りたのは私一人。建築ファンの聖地だからもっと巡礼者がいるかと思ったのに…心細すぎる。

駅の前の風景はこんな感じでただの自然。「Chapelle Notre Dame du Haut」の看板があるのは、おそらくこの駅で降りる人の大半がここを目指しているからなのだろう。通称ロンシャンの礼拝堂の正式名称は「ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂」なのだ。

ロンシャン礼拝堂に向けて駅から少し歩くとこんな風景に変わるので、一瞬、「おお、街だ!」と喜ぶものの、残念ながら店らしい店はほぼゼロ。小さなスーパーぐらいはあるだろう、とタカをくくっていたがものの見事に何もない。そして私は、このクソ暑いのに水を持参していなかったのだ。
やっと一軒の薬局を見つけ、水を求めて入店してみたら、すでに先客のカップルがいて私と同じく水を所望していた。店主の答えはノーである。……マジか……。
駅からロンシャンの礼拝堂までは徒歩約30分ほど。もちろんタクシーもバスも見当たらないので歩くしかない。

灼熱の中、熱中症の恐怖と戦いながら山道をひたすら歩く。これはなかなかドキドキした。もしここで倒れても、こんな辺鄙な山道では誰も見つけてくれなそうである。
これからロンシャン礼拝堂に行く人は、絶対に軽いスナックと水はどこかの街で買っておくことを強くおすすめする。
山道をひたすら歩き続け、ついに目の前に近代的な建物が!
そう、ここはロンシャン礼拝堂の正門であり案内所。や、やっと着いたぞ〜助かった……。

ここで入場料を払えば、いよいよあのコルビュジェ晩年の傑作を目にすることができるのだ。ちなみに水も売っている(到着後すぐ買ってがぶ飲みした)。
しかし。胸を踊らせ、礼拝堂のある丘へ向かって歩き出した私の視界に飛び込んできたのは……。

えええーーーー工事中!(号泣)
みなさん、どこかに行くときは必ず公式サイトをすみずみまでチェックするようにしましょう。2024年まで修復工事中のアナウンス、完全に見落としていた……。
気を取り直して、工事していない部分の外観をとりあえず見学。
この角度からの礼拝堂も悪くない



外観をあらゆる角度から鑑賞し、満喫したあとは、いよいよ礼拝堂の中へ。

いっそ「かわいらしい」とさえ言ってしまいたくなる、マッシュルームみたいな外観からは想像できないほど、おごそかで神秘的な空間が現れる。

色とりどりの光に満ちた空間を生み出しているのは、壁一面に穿たれた様々な大きさの窓。カラフルなステンドグラスが埋め込まれており、祈りの空間を美しく照らしている。
受付でもらったリーフレットによれば、壁には、第二次世界大戦で破壊された旧礼拝堂の石が使用されているとか。
この礼拝堂は、ローマ時代の1世紀頃にすでに聖域があったと言われるスピリチュアルな場所に建つ。1092年にはすでに教会があったとされ、その後荒れ果てるも1843年に再建。しかし、第二次大戦中の1944年、ドイツ占領からのフランス開放時に破壊されてしまったのだ。
そんな歴史もこの礼拝堂は各所で継承している。

たとえば、写真右のマリア像は、18世紀の旧礼拝堂にあったものだ。

また、内部にある3つの小礼拝堂の一つの壁は赤く塗られ、キリストの磔刑と1944年に亡くなった兵士の両方を表しているとか。

ベンチや祭壇、十字架や燭台など、ほぼすべてをルコルビュジェがデザインした幻想的な祈りの空間。四角い箱のような建築を数多く手掛けてきた彼が、60代も終わりになって、絵を描くように、彫刻を彫るように作ったアートのような作品。私にはそう思えてならなかった。
さて、コルビュジェによる礼拝堂を出て、広大な敷地を歩いてみよう。ちらほらと有名建築家やデザイナーの作品があるのでお見逃しなく。

たとえばこちらの鐘楼は、2022年夏に日本の東京都現代美術館で行われた展覧会も記憶に新しいジャン・プルーヴェによるもの。ここでも1944年の爆撃を生き延びた鐘が使われている。

丘を下ったところには、コルビュジェ設計の「巡礼者の家」もある。


建物の前にはベンチがあり、そこから見下ろすロンシャンの風景もまた素晴らしい。

さらに丘を下ると、レンゾ・ピアノ設計の「聖クララ修道院と礼拝堂」(2011年)がある。日本だと関空や銀座のメゾン・エルメスを設計したことで知られ、世界ではポンピドゥー・センターなど超有名作品を多数手掛ける現代イタリアを代表する建築家だ。


一部工事中なのが残念ではあったが、十分に楽しめたロンシャン礼拝堂。晩年になり、自らが打ち立てた「近代建築の五原則」とは全く異なるものを作った彼の、複雑な心の内側に分け入ったような気持ちになれた訪問だった。
<ロンシャン礼拝堂:正式名称 ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂>
Chapelle Notre-Dame du Haut
13 Rue de la Chapelle, 70250 Ronchamp
公式サイト(日本語)※サイトには事前予約が必要そうなことが書いてありますが必要ないです。
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]]>その17作品の一つ、マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」はコルビジェの代表作と言われることも多い名作中の名作。建築好きなら一度は見てみたいと思う場所のひとつだ。

ロンシャン礼拝堂やサヴォア邸など、行くのがちょっと面倒な場所に多いのも巨匠作品の難点の一つだが、ここは大都市マルセイユにあり、交通アクセスも比較的簡単なので、初心者が訪れるのにはうってつけ。
マルセイユ中心部から地下鉄とバスを乗り継ぎ、目にしたそれは、遠くからでも「キター!」と声が出るほどの存在感。1952年竣工ながら、幼稚園やスーパーなどを備え、まさに日本の団地を先取りしている小さな町とも言える集合住宅。

世界遺産に登録されているとあって、思いのほか見学者も多数。ガイドツアーに参加しなくてもショップやレストラン、ホテルのフロントエリア、屋上の見学は可能なので、今回私は気軽にそちらで建物を堪能してみた。住居エリアなどをしっかり見たい人は、事前予約でツアーに参加してみるといいだろう。

こちらはホテルのフロント脇にある、カフェ・バーエリア。カフェと言ってもフードはなく、お酒やコーヒーなどのドリンク、マフィンなどの焼き菓子があるのみ。

訪れたのは夏なので、人気はやはりテラス席。周囲には山々の緑が広がり、眺めも良くてのんびりできる。このためだけに来ても楽しいかもしれない。マルセイユの地ビールなんかもあり、今回は疲れもあってかけつけ一杯。

ランチを食べることができず、仕方なくブルーベリー・マフィン。レストランなどが近くにないので、食事難民になりやすいのが玉にキズ?
カフェ内のインテリアもいちいちかわいい。

同じフロアには、南仏の光がたっぷり差し込む廊下があり、コルビジェグッズが買えるお土産屋さんやアートギャラリーなんかもある。

黄色い郵便ポストが印象的な廊下。

それでは、大型船のデッキに喩えられる有名な屋上庭園へ行ってみよう。

個性的すぎる煙突が何かのオブジェのよう。こういう遊び心が、日本の団地にはあまりないかも。

住民用の体育館だった建物は、今はギャラリーに。私が訪れた時はアパレルショップのインスタレーションを開催中だった。

その他何やら作品が展示されている屋上。これだけ広ければ走り回ることもできるので、住民の運動不足解消に良いのかもしれない。
それでは、あらためて一階に降り、エントランス部分や外観を眺めてみよう。

エレベーターからロビーを眺めたところと、レトロなかわいい郵便ポスト。


エントランスにあるベンチエリアは、小さな窓から赤や青、黄色い光が漏れ、教会のステンドグラスのような荘厳ささえ感じられる。

コルビジェといえば、のピロティ。1本あたり2000トンを支えている巨大なもの。こちらもどこか神殿ぽい。

建物全面にある彫刻は、モデュロールを表したもの。モデュロールとは、コルビジェが定めた尺度システムで、建築の基礎となるもの。この前に立って記念撮影するのが訪問者お決まりのコースらしく、インスタ映えスポットでもある。

ともすれば殺風景になりがちな四角い箱のような建築が、色使いや細部の遊び心でここまで楽しくなるのか、というしみじみ感動。何より写真で見るよりも実物はずっと巨大なので、ぜひ、実際に訪れてその迫力と存在感を味わってほしい。

最寄りのバス停の名前はなんと「ル・コルビジェ」。
マルセイユの玄関とも言えるサン・シャルル駅( Gare de Marseille-Saint-Charles)などから、地下鉄でRond-Point du Prado駅まで行き、そこからバス22番で「ル・コルビジェ駅」下車。または、Google mapアプリでHotel Le Corbusierを行き先に指定すれば、最短のルートを教えてくれます。町の中心部から片道30〜40分と行ったところ。
マルセイユ観光の拠点にできなくもない距離なので、空きがあればホテルに宿泊するのもおすすめ。探せばシングル一泊70ユーロくらいからあります!
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]]>Wikipediaの説明文にも冒頭に「花や植物などの有機的なモチーフ」などと書かれていますしね。

実際、パリに行けばご覧のような、想像していたとおりのアール・ヌーヴォー空間が今もカフェやレストランとして現役で活躍しています。

こちらは、パリの地下鉄のエントランスなどで知られるエクトール・ギマールによる「カステル・ベランジェ」。パリで最初のアール・ヌーヴォー建築と言われているとか。ロマンティックな佇まいで今見てもすてきですねぇ……(※建築当初はものすごく批判されたみたいですけど)。
でも。
何度かヨーロッパに足を運ぶうちに、少女の頃の夢みたいな華麗な空間だけがアール・ヌーヴォーではないのだ、と気づき始めます。
たとえば、パリのアール・ヌーヴォーにだって、こんな変化球が。


取っ手がトカゲという、子どもが泣きそうなドアの真上に女の生首! 趣味が悪い…とさえ感じてしまいますが、これ、実はパリの名建築のひとつ。ギマールと並び、アール・ヌーヴォー建築家として著名なジュール・ラヴィロットによる1901年の代表作「ラップ通りの集合住宅」の入り口なんです。
でもまぁ、ちょっとズレてはいるものの、まだ私の中の「アール・ヌーヴォー」観を覆すほどではありません。
それが、ウィーンに来るとこうなります。

植物のような、曲線で有機的な……みたいな概念からずいぶん離れてきました。こちらも建築的には名作中の名作、ウィーンを代表する建築家オットー・ワーグナーによるアム・シュタインホーフ教会。ちなみにドイツ圏では、「アール・ヌーヴォー」ではなく「ユーゲント・シュティール」といいます。
さぁ、どんどん行きましょう。次はベルリン。

もう植物のような曲線美とかほとんどなくなってますね。むしろ四角い。ええと、アール・ヌーヴォーとは……。
お次はフィンランドの首都、ヘルシンキ。

こちらも名建築、フィンランドの国民的建築家エリエル・サーリネンによる「ヘルシンキ中央駅」。特にちょうちょやお花などは舞っていませんが、立派なアール・ヌーヴォー建築です。
ヘルシンキにはこのほか、(たぶん)無名の建築家によるアール・ヌーヴォー建築がたくさん残っていて、個人的には結構ファン。北欧雑貨を思わせる、かわいいものが多いんですよねぇ(萌え♡)。


「フィンランドのアール・ヌーヴォー」という本が出たら絶対買うのに、といつも思っているのですが、全然出ないみたいで、アール・ヌーヴォー界では、フィンランドの知名度はいまひとつなのかもしれません。
最後に、私がヨーロッパで一番驚いたアール・ヌーヴォー建築をご紹介します。それはバルト三国、ラトビアの首都、リガにある「アール・ヌーヴォー建築群」です。
どーん!

え? 怖い!?
いえいえ、こちらも名作中の名作で、設計を手がけたのは世界的に有名な……映画監督のお父さんです!
『戦艦ポチョムキン』などで知られ、モンタージュ理論を確立したことで映画史にその名を残すセルゲイ・エイゼンシュテインの父は建築家のミハイル・エイゼンシュテイン。世界的な映画監督の父親の感性も、やっぱり半端なかったのですね。

そんな彼の一風変わった建物を含む、リガ独特のアール・ヌーヴォー建築が街の一角を埋め尽くすという空前絶後の不思議スポット。もう冒頭でご紹介したパリのアール・ヌーヴォーが思い出せなくなるほど、私達は遠くへ来てしまったようです。
知れば知るほど、アール・ヌーヴォーがよくわからなくなりますが、言葉の意味としては、フランス語で「新しい芸術」ぐらいなんですよね。ヨーロッパ各地で好き放題(?)やって全然足並み揃ってなくても、これでいいのかも
しれません。
ヨーロッパで楽しむ、国ごとに特色のあるアール・ヌーヴォー建築ウォッチング。個人的にはとってもおすすめなアクティビティの一つですよ。
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