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アルバニアの首都、ティラナの秘密警察博物館「House of Leaves」が、個人的に最近訪れたミュージアムでNo.1だった話。

更新:2019年07月30日
みきP

前回、共産主義時代のアルバニアについて、ウォーキングツアーの体験をもとにレポートしましたが、今回はそのツアー後に訪れた同じ時代の「負の遺産」をご紹介。歴史ミュージアムでありながら、現代アートのようでもある、ディープな秘密警察博物館に潜入!

アルバニアの首都ティラナの観光ガイドを見ると、一番におすすめされているのが国立歴史博物館である。ローマ、ギリシャ、オスマン・トルコなど時代により支配者が変わった国ならでは、複雑な歴史を学べる良いミュージアムなのだが、個人的にNo.1だと思ったのが、今回ご紹介する「House of Leaves」。
街の中心部にひっそりと佇む地味な建物だが、実はここ、共産主義時代に、秘密警察(シグリミ)の本部だった建物なのだ。



「個人的にティラナでいちばんおすすめのミュージアムはHouse of Leavesね」と、オンライン英会話のアルバニア人の先生から聞いてちょっと気になっていたスポット。その日の午前中に、ウォーキングツアーでアルバニアの現代史に触れていたこともあり、共産主義時代の混乱した歴史への興味も高まっていたタイミングだった。

ティラナ1の観光名所国立歴史博物館のように、古代ローマ時代の彫刻やら、華麗なビザンチン美術、オスマン・トルコ時代の鎧など、歴史的価値の高いものは何も展示されていない。展示されているのは、盗聴、盗撮、諜報、監視に関するデータや、それに使われた機械類だけだ。

たとえばある部屋には、秘密警察が使っていた機器類がただずらりと並べられている。しかも、ソニーのカセットレコーダーやニコンの一番レフカメラなど、一昔前の日本の家庭に普通にあった市販品ばかりである。……しかし、日本の電化製品、スパイ組織で大活躍しすぎ!



そしてある部屋には、街中に設置されていたという監視カメラが捉えた、市民の普通の暮らしがわかるスナップがずらり。しかも、容疑者逮捕の瞬間とか、デモ風景などの「事件」や「ニュース」が捉えられているのではない。お茶を飲んだり、カフェでおしゃべりしたり、ホテルの部屋でくつろいだりしているだけの、なんでもない市民の普通の暮らしが淡々と並べられている。

ごく普通の風景が、ありふれた機械が、なぜこんなに恐ろしいのだろう。展示を眺めているうちに、私はすぐすこにある恐怖に気づいてしまったのかもしれない。気づかないうちに監視されている社会は、共産主義時代のアルバニアだけでなく、今なお続いているのだ。


アナログ機器を使って人の目で監視していた頃のほうが、よっぽど牧歌的だ。監視はより高度化され、より機械化され、よりわかりにくくなり、いまなお続いている。

インターネット上では購買履歴、閲覧履歴、検索履歴がストックされているし、街中にある監視カメラの数はこの時代に比べて飛躍的に増えている。その事実をこのミュージアムは、他人事のように「かつての監視社会」を覗きに来た私に突きつけてきたのだ。

歴史的価値のないものを並べただけでこれほどぞっとする展示に仕上げているのはキュレーションの素晴らしさとしか言いようがなく、ある意味で巨大な現代アート作品のようでもあるミュージアム。

似たようなコンセプトのミュージアム「BunkArt 1,2」が(なんと巨大トーチカを使っているこだわりぶり)も近くにあるが、そちらはややセンセーショナルに展示しすぎ、お化け屋敷のような試みなど、個人的にはちょっと肌にあわなかった。
淡々と事実を並べているだけの「House of  Leaves」のほうが、すぐそこにある恐怖をリアルに実感できたように思う。



庭から見た建物風景。こんな何でもない邸宅が、市民を監視し、時には捉え、拷問していたなんて。それもつい最近のことなのだ。


庭から入ることができる秘密通路。拷問に使われたこともあるという。

アルバニアの負の歴史を学ぶつもりが、自分もまさに監視社会に暮らし、常に見張られ続けているという事実を思い起こさせてくれたミュージアム。ティラナを訪れるならぜひ足を運んで、いろいろ考えてほしいスポットです。(みきP)

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