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大熊健郎さん
Vol.8

IDEEからCLASKAまで、ずっと「編集」をしています

CLASKA DO 大熊健郎さん

Profile

CLASKA Gallery & Shop "DO" (ドー)ディレクター。東京生まれ。大学卒業後、「IDEE(イデー)」入社、約14年ほど同社でバイイングやショップディレクション等に関わったのち、2005年に全日空の機内誌『翼の王国』の編集者に転身。2007年より目黒のCLASKAのリニューアルに携わり、2008年、CLASKA Gallery & Shop "DO" (ドー)をプロデュースし、その後も統括責任者を務める。
http://www.claska.com/gallery

——まずは大熊さんのこれまでのキャリアについて簡単に教えていただけますか。

大学卒業後、インテリアショップのIDEEに入社して14年ほど在籍しました。長くいたので、新人の頃の法人営業に始まって、プレス、商品仕入、企画展の運営、ショップのディレクション、お店の運営管理、商品開発など色んな仕事をしました。店舗内で本屋さんをやっていたこともあります。当時の社長はもともと西洋アンティークショップからスタートした人なので古いものも好きで、よく一緒にヨーロッパや北欧に連れて行ってもらってデザイナーのアトリエを訪ねたり、アンティークの買付けをしたりもしていました。

——ずっとインテリア業界にいらっしゃったかと思ったのですが、全日空の機内誌『翼の王国』で編集者をされていたこともあるのですね。

IDEEを退社した直後にたまたま声をかけて頂いて。本当に嬉しかったです。憧れの木村裕治さんがアートディレクションをしている雑誌でもありましたから。
でも編集者になっても、全然違和感はなかったんですよ。もともと雑誌や本が好きでしたし、IDEEにいたときから自分たちのやっていることはある意味、編集作業であるということはすごく意識していましたから。「生活の探究」というのがIDEEのテーマでもあったのですが、単に家具を紹介するだけではなく、本や植物、音楽、アート、食などを含めた暮らし=ライフスタイルを提案するのが仕事だと思っていました。
モノとモノだったり、モノと人だったり、モノと情報だったり、そういった関係性の妙が生む価値や魅力を見つけて提案する作業というのはまさに編集の仕事ですよね。無から有を生み出すというより、すでにあるものを組み合わせてこれまでに無い新鮮な驚きをどう与えるか? だから今でもやっていることは変わっていないと思っています。ずっと同じことをしている。

——確かに、紙か空間かの違いだけなのかもしれませんね。その後、2008年からCLASKA DOの責任者をされていますが、CLASKAは、実はDOの売上がすごく大きいのだと聞いたことがあります。

今はCLASKA DOの売上は全体の4割ぐらいにまで成長しています。DOはこの4年の間に、目黒以外にもいくつか出店しているので当然だとは思いますが。

CLASKA DO
コンテンポラリーな日本の雑貨が揃うDOの店内
——4割! CLASKAはもはや、ホテルの域を超えたライフスタイルブランドと言っても良い数字ですね。

もともとCLASKAは、2003年のオープン当初からホテルではなくライフスタイルブランドを構築していく拠点としてリリースさせたいという思いがあったらしいんです。ただ、ホテルとしての知名度が高くなり、事業そのものに広がりが無くなっていたこともあって当初のコンセプトから徐々に方向性がずれて行ってしまった。

——それはすごく意外でした。CLASKAはリノベーションホテルの代名詞のような存在だし、てっきりホテルを志向しているんだとばかり思っていたので。

ほとんどの方はそんな議論があったことも知らないと思うんですけど。そこで、2008年の春に本来目指していたライフスタイルブランドの方向にもう一度戻そうとリニューアルするんですが、またちょっとしたご縁があってそのプロジェクトの立ち上げの任務をまかされることになったのです。リニューアルする1年前くらいのことですね。

——IDEEでのショップ運営のノウハウを求められて、ということでしょうか?

いえ、お店をやることは初め決まっていなくて、プランニングの流れの中で出て来たアイデアなんです。CLASKAのリニューアルの一つの大きなテーマは「日本」でした。そのころグローバルスタンダードが声高に叫ばれていた一時期の風潮への反動もあってか、もっとドメスティックな、ローカルな価値を見いだそうという動きが世界各地で盛り上がりつつありました。日本でも同じように地方の価値を再発見しようといった動きが各地で起こり始めた頃だと思います。CLASKAは宿泊客も半分くらいが海外の方だし、海外の方もいわゆるエキゾチックなジャパンではなくてコンテンポラリーなジャパンを見たい、知りたいという人が増えているという印象もありました。そこで日本をもう一度新しいかたちで提案することに少しこだわったお店を作ったらどうかと思ったんです。日本をテーマにしつつ、ただ伝統工芸品を無条件に有り難がるような店ではなく、もう少し今の自分たちの普通の暮らし、時代の気分にフィットするような日本を打ち出したお店にしたかった。

——伝統工芸って、どうしても三越や伊勢丹の上のほうの階にある、敷居がものすごく高いもの、というイメージがあります。でも、DOのセンスは絶妙というか、伝統工芸なんだけど、今のインテリアにも馴染むものばかりが手に入るというか……。

それもさっきの編集で、どういう空間にどう並べるかで同じものが違って見えるんです。たとえばDOにある象徴的な商品をひとつ挙げると、大きな赤い山茶花の絵付けがされた九谷焼の鉢があるんですけれど、あれがもし百貨店の九谷焼コーナーに並んでいたらきっと素通りしてしまうと思うんですよね。

山茶花

それをあえてシンプルでナチュラルなトーンの店内と組み合わせたら、意外と映えて新鮮かもしれないなと思って取り寄せてみたらうまくいって、DOではロングセラー商品になっています。見せ方も含めて、僕らが考える今の日本のモノとの付き合い方の提案をしていきたいですね。

——オープンの時は、結構日本各地から商品を集めるのが大変だったんじゃないですか。

各地というほどでもないけどスタッフで分担して色々と回りました。僕はもともと海外志向が強くて、今でも海外のものは大好きですし、IDEE時代はヨーロッパとか北欧ばっかり行っていました。でもその海外のものをいいなぁと思ったときと同じ視線で、日本のものを見直そう、日本の埋もれた価値を再発見しようという気分で探しました。

——郷土玩具のモマ笛まで見つけてくる眼力はすごいな、と思います(笑)。

あれは本当に友人知人のおかげで、僕は『ブルータス』に連載されている川端正吾さんの「みやげもん」が大好きで、何年か前にドーで一緒に展覧会をやらせてもらったときから、いろいろ教えてもらってます。
CLASKA DO
CLASKAで行われたみやげもん展の様子
——そんな日本漬けの大熊さんですが、最近パリに行ってらっしゃったと伺いました。お仕事で行かれたのですか?

今回はまったくの休暇で行って来ました。今のお店を始めてからは仕事で行くのはほとんど国内で、かつ長期休暇を取るほどの余裕も無かったので、もう10年ぶりぐらいのヨーロッパでした。どこの街にもその街の匂いがありますが、その土地に行ってその匂いをかぐと思い出すあの感じがなんともいいんですよね。ああ、またパリに戻ってきたんだな、みたいな……なんともセンチメンタルな話ですが(笑)。

——パリはそういうロマンティックな感傷を誘う場所でもありますよね。私もまた行きたくなってきました。ちなみに、今回の旅のテーマは?

旅の目的のひとつは、DOでも展覧会をしたことがあるイラストレーターのフィリップ・ワイズベッカーに会いに行くことでした。他にも向こうに住んでいる何人かの友人・知人に会ったり、見て、食べて、買い物してとこれまでになくパリを満喫した楽しい時間を過ごすことができました。かつての旅行のようにモノを買い付けて梱包して郵便局で出して、みたいなことから無縁の毎日で(笑)、本当に私的な旅、という感じでしたね。ワイズベッカーと一緒にフリーマーケットに行って、「これいいよね」とか掘り出しものを見つけては「アメイジング!」なんていい合いながら買いものしたり(笑)。
vanves
パリの風景
——楽しそう!

デザイナーのブルレック兄弟の兄、ロナンに再会できたのもいい思い出になりました。
インテリア業界出身の僕のような人間からするとブルレック兄弟って本当にスターデザイナーなんですが、彼が数年前に日本の伝統工芸の産地でものづくりをするというプロジェクトに参加するために来日した時、僕は日本側のモノ作り担当コーディネーターみたいなことをお手伝いさせて頂く機会があったんです。その時は、前述したみやげもん展を開催中だったDOにも来てくれて、彼は大興奮して一人で2時間くらい郷土玩具の撮影大会をしていましたね(笑)。
でも人気デザイナーだし、おそらく忙しいだろうと思って今回はパリに行くことは遠慮して連絡しなかったんです。でも向こうに住んでいる共通の知人がロナンに知らせてくれて、そうしたらすぐに彼から連絡があって「事務所においでよ、その後ランチでもしよう」って誘ってくれたんです。とても暖かく迎えてくれて、お土産までいただいたりして本当に嬉しかったです。

——人とのふれあいって旅の大切な要素ですよね。

やっぱり一番心に残りますね。ワイズベッカーにしてもブルレックにしても、かつての憧れの人が親しい友人のように自分を迎えてくれるという、本当にかけがえのない体験をさせていただきました。

vanves
旅先のスナップ。左から、ワイズベッカーとカフェで、ワイズベッカーの家族と、ロナンとランチ。
——旅行熱にまた火がついた感じですか?

個人的には普段それほど旅行にはいかず、遠出と言えば友人と車に乗って行ける範囲で最近始めたフライフィッシングをするくらいだったのですが、やっぱり海外はいいなぁ、という思いが今回のパリ旅行で再燃しましたね。今後は南仏も行ってみたいですし、韓国に行って現地の工芸的なものを見てみたいとも思っています。

CLASKA DO

大熊健郎さんのマイページ | トリッププランナー

「すでにあるものを組み合わせてこれまでに無い新鮮な驚きをどう与えるか? 」という大熊さんの言葉は、「場所を編む」サービスを提供しているトリッププランナーの運営者として、とても共感できるものだった
ニューオープンとか珍しいとか、場所そのものに「ネタ感」がなくても、どんな切り口でどうまとめるかで、今まで見慣れた風景やよく知っていたエリアがぐんと新鮮になる、そのアイデアをみんなで投稿しあえたら旅のシーンがもっとカラフルに楽しくなるのに、というのがこのサービスをオープンする動機でもあった。
部屋のインテリアに調和させるのが難しいと思っていた日本の伝統工芸や郷土玩具も、DOを訪れるとあまりの素敵さについつい買ってしまうのは、まさに大熊さんの編集力のすばらしさ。個人的に最も頻繁に通うライフスタイルショップであり、いつ行っても日本の良さを再確認できる大好きなDOのように、旅の分野でいつも新しい提案が見つけられる場所にしていかないとなぁ、と改めて思うインタビューだった。 (取材・文 野口美樹 2012年11月)

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